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もりとき怪談 第一集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


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8/11

08 Aさんの白い箱


 前に俺が勤めていた職場の話。


 俺、あんまり仕事が長く続かない方で、でも何でもそつなくこなせるタイプだったからさ、いろんな職場を転々としてたんだよね。

 もう辞めちゃった会社だけど、何かそこで気持ちの悪いものを見たんだ。

 今でも見間違いだったんじゃないかなーって思う。


 その会社はサプリとかの健康食品の販売をしててさ、俺はそこの営業だったんだ。

 で、事務の女の子ともけっこう仲良くしてて、会社に戻るとお茶とか出してくれてさ。けっこう可愛い子が多かったから、俺も仕事してて張り合いがあったんだよ。

 そんな中で、控えめな感じの子がひとりいてさ、仮にその子をAさんとするよ。

 自分で言うのもなんだけど俺って社交的なタイプだから、事務の女の子たちからもモテてたんだよね。でもAさんは黙々と仕事してるタイプで、あんまり話す機会がなかった。だから何となく、もっとAさんと仲良くなりたいなって思ってたの。


 Aさんも控えめだけど顔は可愛くて、俺の好みだったんだよ。華やかな感じじゃないけど、となりにいるとほっとするようなタイプ? ときどき話したりもしたけど、話し方もちょっと間延びしてるような、おっとりした感じで、そこも可愛かった。

 仲良くなりたいなって思うと、その人のこと目で追っちゃうじゃん?

 俺もそんな感じでさ、気が付いたらAさんのことを目で追ってたのね。


 それで、ある日気付いたんだ。

 Aさんのデスクの上に、古ぼけた白い箱があったのね。10センチ角くらいの。

 事務の女の子たちは自分のデスクに小さなフィギュアとか、好きなアイドルのアクスタとか飾ってる子が多かったからデスクの上に私物があるのは別に変じゃないけどさ、Aさんはときどきその白い箱を撫でては、なんかうっとりしたように微笑んでたんだよ。


 俺、その箱の中身が気になっちゃってさ。Aさんに箱のこと聞いてみたんだよね。

 そしたらAさん、照れたみたいに笑ってさ「昔の彼氏からもらった物が入ってるの」って言ったんだ。Aさんが照れてる顔がすごい可愛かったんだけど、俺、内心ちょっと複雑。

 昔の彼氏からのプレゼントを今でも大事にしてて、仕事の合間にその箱を撫でてるって全然元カレのこと忘れられてないじゃん? 何なら今でも好きじゃん?

 だから俺、ちょっと意地悪したくなって、中身が何か聞いてみたんだよね。「俺がもっといいもんプレゼントしてあげるよ」って。

 でもAさんは「中身は秘密だよ」って言って教えてくれなかった。


 でさ、Aさんの白い箱の中身は気になったんだけど、俺、本当にAさんのこといいなって思ってたから、それをきっかけにAさんとけっこう話すようになったんだ。

 Aさんは少女趣味? っていうの? そういうとこがあってさ、今日の星占いがこうだったとか、運命の赤い糸がそうだとか、花言葉がああだったとか、そういう話をしたんだよね。

 正直、俺はそういうのよく分からなかったけど、話してるAさんが楽しそうだったから全部どうでも良かったんだよね。

 俺と話すようになってからもAさんは相変わらず白い箱を撫でることが多くてさ、俺はだんだん白い箱に嫉妬するようになっちゃったんだよ。


 でさ、営業先のお客さんと飲み会の後、翌日の朝一で会議があるからその資料をどうしても確認しておきたくてさ、深夜に会社に戻ったことがあったのね。

 その職場、勤務員証があれば裏口から入れるようになってて、ときどき深夜まで仕事してる人とかいるんだけど、その日は誰もいなかった。

 さっさと資料を確認して帰るかーってなったんだけど、そのとき、Aさんのデスク見たらさ、あの白い箱があったんだよ。


 あんだけ大事にしてたのに持って帰るの忘れちゃったのかなって思った。

 でも絶好のチャンスじゃん? 俺、こっそり中を見てやろうって思ってたのね。どうせ指輪とかネックレスみたいなアクセサリーが入ってるだろうから、ブランドとか調べてもっと高いやつプレゼントしてやろうかなーって思ってたの。


 箱を開けたらさ、なんか短い木の枝みたいなのが入ってた。

 おんなじようなのが何本か入ってて、何だか分からなかったからよくよく見てみたんだよ。

 骨付きソーセージのさ、骨のところまで膜だか皮だかで覆われてるのあるじゃん? 何か、あんな感じ。

 ちょっと箱を振ってみたらその木の枝みたいなのが動いて、爪がついてた。


 指だったんだ。


 ミイラみたいになった指。長さからしてたぶん小指。それが5本くらいあったと思う。

 気が付いた瞬間、背筋に鳥肌がぶわわってなって、箱を戻して走って帰ったよ。

 その後、Aさんに箱の中身を見たことがバレた……なんてことはなくて、Aさんは今まで通りだったけど、俺はもうAさんと話せなくなっちゃってさ。Aさん見るとドキドキしすぎて気持ち悪くなるくらい。

 仕事もすぐに辞めたから、Aさんとあの箱がどうなったかは知らない。

 俺、思うんだけど、あれってAさんの歴代の彼氏の小指だったんじゃないかな。Aさんは少女趣味って言ったじゃん? 歴代の彼氏から、赤い糸を結ぶための小指をもらってたんじゃないかなって。もちろんムリヤリ切断したんだろうけど。

 でも小指なんておとなしく切られるようなもんじゃないしさ。あの控えめで可愛いAさんが、どうやって彼氏たちから小指をもらったんだろうって考えると、けっこう怖い。



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