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もりとき怪談 第一集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


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鏡に映ってるはずの俺


 ついこの間、体験した話。

 洗面台の鏡。洗面台に立ったら、当然俺の顔が映るはずだよな?

 確かに俺が映ってたんだよ。なんだけど、ちょっと違和感があるっていうか。俺の目って、こんな感じだったかな、みたいな。

 いつもよりちょっとぽってりして見えたんだ。そのときは寝不足で少し腫れてるのかなと思ってスルーしたんだ。


 そんで次の日、今度は鼻の頭がすこしボコボコして、横に広がってるような気がしたんだ。

 何だこれ乾燥か? と思って、その日は入念にスキンケアをしたよ。

 その甲斐もあってか、大学のトイレに入ったときに鏡を確認してみたら、いつも通りきれいになってて、ちょっとホッとした。


 そんな感じのことが続いてたんだよ。

 朝起きて顔を洗ったときとかにふと鏡を見ると、間違いなく俺の顔なんだけどちょっと違和感がある。目の大きさだったり、皮膚の感じだったり、眉毛の生え方だったり、そんな感じの些細な違い。

 ぱっと見たときは違和感があっても、まじまじ見てると徐々に「いや、やっぱり俺の顔ってこんな感じだったよな」ってなるんだ。

 そういうのが毎日続いて、モヤモヤはするんだけどそこまでは気にならない程度だったんだ。


 数日前にさ、大学から帰ってきて手を洗ってたときだよ。

 ふと顔を上げたら、鏡に映った俺の唇の右上。ほくろがあったんだ。

 全体的に俺に似てるんだけど、これまでとは確実に違う。明らかに俺が認識している、俺の顔じゃなかったんだ。

 思わず「え?」って声が出たよ。

 そう、声が出たんだ。声が出たなら、表情は変わるよな。少なくとも口は開くだろ。

 でも鏡に映った顔は、笑うように口の端をちょっと吊り上げてるんだ。

 俺が食い入るように鏡を見てると、鏡の中の俺じゃない俺は「あっ」と何かに気づいた表情になって、口をぱくぱくさせたんだ。


 俺にはその口の動きが「気がついた」って言ってるみたいに見えたよ。


 次の瞬間には、鏡の中の俺は、ちゃんと俺の顔に戻ってた。表情も、何が起きたのか分かんねぇって顔してて、確実に俺の表情を映してるんだろうなって分かった。

 それでさ、俺、鏡の中に映ってた俺じゃない顔に、見覚えがあったんだよ。

 俺の叔父さん。

 父親の弟なんだけど、俺の父親にかなり似てるのな。そんで俺も父親に似てるから、けっこう叔父さんとも似てるんだよ。

 叔父さんは唇の右上にほくろもあってさ。もし叔父さんが若かったら、鏡に映ったような顔になるんじゃないかと思ったんだよ。


 で、父親に言って、若い頃の叔父さんの写真があるか聞いたんだ。

 そしたらドンピシャ。まさに鏡に映ってた顔だった。母親も写真の叔父さんと俺を見比べて「似てるわね〜」なんて呑気に言ってた。いや、俺の鼻はあんなにボコボコじゃないだろ。

 それはさておき、叔父さんに話したいことがあるからって言って、父親に電話かけてもらったんだ。時間帯的に仕事からは帰ってきてるだろって時間だったし、親は何かあったのかと訝しんでたけど、電話してくれたんだ。

 

 父親は叔父さんとちょっと世間話をしたあとに、俺に電話を渡してくれてさ。

 俺、電話させろって言った割に、叔父さんに何を言うかまったく考えてなかったのね。電話を耳に押し当てたところで、そもそも俺が体験したことを叔父さんに話すの、何か変じゃね? って思ったんだよ。

 そんな感じで、俺、電話を持ってもしどろもどろ。

 叔父さんはそんな俺に言ったんだ。


「気がついた?」


 いやいや、気がついたじゃねーだろ。

 叔父さんに話を聞いてみたら、どうも叔父さんは若い頃からそういう不思議な経験ってのが多かったらしい。

 最近、鏡を見ているとどことなく自分じゃない誰かが映っているような気持ちになって、数日前に鏡に映ってるのが俺だって気がついてたみたいなんだよ。

 それで、鏡越しに俺が「あれ?」って顔しながらもスルーするのも見えてたんだって。で、ついさっき、鏡の中の俺が気がついたって顔をしたから、電話がかかってくるんじゃないかって思ってたそうだ。

 叔父さんが言うには、俺と叔父さんの波長が合ってこんなことが起こったんだって。今度叔父さんに会ったら、いろいろと話を聞いてみようと思う。



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