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もりとき怪談 第一集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


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同じ登山者


 俺は大学の頃に登山サークルに入っていて、社会人になってからも趣味で登山を続けてた。

 結婚して子どももできたから頻度は落ちたけど、最近は挑戦としてより趣味としての登山を楽しんでいる感じ。

 SNSなんかで登山仲間もできて、そういう人たちと集まって登山することもあったのね。

 これはそのときに経験した不思議な話。


 その日は車で県境まで行って、登山者用駐車場に車を止めたんだ。

 登山者用駐車場にはすでに何台か車があったけど、空きは全然ある。この感じなら途中で登山者には会わないかもなーってぼんやり考えてた。俺は自分たち以外の登山者がいると気になっちゃうから、人が少なくてラッキーくらいに思ってたよ。天気も良くて、絶好の登山日和だった。

 俺は登山仲間ふたりと連れ立って、三人で入山したんだ。

 その日は日帰り登山で、到着してから山頂に着くまでは2時間くらいを予定してた。昼過ぎくらいに頂上に着くから、その辺りで昼飯を食って下山して、家につく頃には夕方過ぎくらいを想定してた。


 で、自然の景観を楽しんだり、ちょっとした岩場に冒険心をくすぐられたりしながら順調に登っていった。

 登り始めて1時間半くらい経った頃、急に天気が曇り始めたんだ。辺りには霧が出てきて視界が悪くなる。天気予報はずっと晴れの予定だったけど、山の天気は変わりやすい。俺達はちょっと慎重に歩を進めたよ。

 霧の中をしばらく進むと、少し先に登山客の後ろ姿が見えたんだ。

 人数は俺達と同じ三人。年齢とか体格とかも俺たちと近そうな感じだった。

 前に登山客がいるとペースが乱れるんだよなー、この視界の悪さだしなんか嫌だなーって思いながら進んでた。でも向こうのグループのペースがちょうど俺達と同じくらいで、思ったよりスイスイ進んだんだ。


 そうやって5分くらい進んだ頃かな。仲間のひとりが、こんなことを言い出した。

「なぁ、前のグループ、なんか俺達に似てね?」

 何を言ってるんだと思ったけど、よく見てみたら確かに似てるんだよ。

 ウェアの色とかデザインとかそのまんまだし、背負ってるザックや髪型もよくよく見れば自分達と同じ感じ。

 なんか気持ち悪いなと思った。あんまり気味の悪いことを考えたくなくて、俺は「たまたまだろ」って返した。

 一度気になってしまうと前を歩いてるグループがどんどん自分たちみたいに思えてきて、居心地の悪さみたいなものを感じ始めた。

 それは仲間も同じだったみたいで「なんか気持ち悪い、俺こういうの駄目だわ」って言った。その直後、そいつは止める間もなくそのグループに「すみませーん!」って声をかけたんだよ。


 その瞬間、金縛り。

 えっ? って思ったけど、仲間も固まってた。あとから確認したら、俺と同じで金縛りになってたらしい。

 で、前を歩くグループも立ち止まっている。前のグループの人がゆっくりと振り返る動作をした。

 と、同時に、俺たちの体が勝手にぐぐっと動いて、やっぱり後ろを振り返るような動作をしたんだ。

 完全に後ろを振り向いた感じになったんだけど、当然後ろには誰もいない。霧が広がってるだけだ。

 急に金縛りが解けて、慌てて前を向いたら、前のグループの背中が霧の中に消えていくところだった。しばらくは視認できてたんだけど、やがてすっかり霧に隠れて見えなくなっちゃった。

 俺達は顔を見合わせて、黙ってた。俺が我慢できなくなって「今日はもう帰ろう」って言ったら、ふたりも頷いた。

 下山するにつれて霧は晴れて、天気も曇っていたのが嘘みたいな快晴になった。でも俺達はさっき見たものについて話し合う気分にもなれなくって、無言で歩き続けた。


 この体験、ここで話が終わると思うだろ? もうちょっとだけ続くんだ。

 登山者用駐車場で見た光景に、俺達は本当に戦慄したよ。

 俺達の車の隣に、車が止まってたんだ。黒のミニバン。俺達の車とまったく同じものだった。

 さすがにナンバープレートまでは同じじゃなかったけど、本当に怖くてさ。

 だって、駐車場には全然空きがあったんだ。そんな状態で、わざわざ隣に止めるか?

 このまま駐車場に留まってたら、前を歩いていたグループも戻ってくるんじゃないかと思って、俺はさっさと車に乗り込んだよ。

 運転は俺だったんだけど、俺の頭の中にはドッペルゲンガーなんて言葉が渦巻いてさ。ドッペルゲンガーって見たら死ぬって言うじゃん? だからめっちゃ怖かった。事故でも起こすんじゃないかと思って。いつもより慎重に運転して、何事もなく家まで帰れたんだけどさ。


 前のグループに声をかけたとき、もし金縛りにならなくて前のグループの顔を見ちゃってたらどうなってたんだろうなって、今でもときどき思うよ。

 子どもがもうちょっと大きくなったら一緒に登山したかったんだけど、またアレに出会うかもって思って、ちょっと悩んでる。



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