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もりとき怪談 第一集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


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04 すみません


 大学を卒業した頃がちょうど就職氷河期で、就職に失敗した私は家の近くにある本屋さんでバイトしてたんだ。

 個人経営なんだけどけっこう広さのあるお店で、本だけじゃなくて文房具とかも置いてた。

 そこそこお客さんも来る本屋だったけど、お客さんが少ない時間帯ってのもあるのね。14時頃なんかがそう。


 店長の趣味でアメリカ雑貨とかがディスプレイされてるし、CDプレイヤーで洋楽とか流してて店内は明るい雰囲気だったんだけど、何か変なことが多くてさ。

 店内に子どもがいるわけでもないのに、奥の方で小さい子がパタパタ走るような足音がしたりするのね。

 自称霊感持ちのおばさんパートが「このお店、幽霊いるよ。でも悪いことはしないから」とか言ってた。

 私は霊感ないけど、パタパタ走る足音は何度も聞いてた。

 でもさっきも言ったように店内の雰囲気は明るいし、嫌な感じもなかったから全然気にしてなかったんだ。


 ちょっと気になったのは、仕事してるときに「すみません」って声が聞こえること。

 女の人の控えめな感じの小さな声で、本当にお客さんが何かを聞こうとして店員に声をかけるって感じなんだよね。

 で、顔を上げて店内を見回すけど、近くにそんな女の人はいないのね。聞こえる声は若い女性なんだけど、近くには女性のお客さんがいなかったとか、おばあちゃんとおばちゃんしかいなくて、別にこっちに声をかけてきた様子はなかったとか。

 私はこれ、何度もあって、声の主は毎回同じ若い女の人なの。でも他のパートさんに聞くのもさ、自称霊感持ちみたいで痛いなと思って黙ってたんだ。なんせ自称霊感持ちのおばさんパートもけっこう痛くて他のパートさんから嫌われてたし。


 それで、最古参のベテランパートさんと一緒にシフトに入ったとき。

 ちょうど14時過ぎくらいで、二人で黙々とシュリンクしてたのね。あ、シュリンクってコミックスとかビニールに入ってるでしょ、あれのこと。

 あれ、やってると意外と集中しちゃうのよ。

 そしたら


「すみません」


 って聞こえてきた。

 私とベテランパートさんが同時に「はーい」って答えて顔を上げた。


 でも、近くに誰もいないの。

 ベテランパートさんと顔を見合わせて、「今、すみませんって聞こえましたよね?」って確認してさ、私が店内を見たんだけど、そのとき、店内には一人もお客さんがいなかったんだよね。

 私、「誰もいませんでした」って報告してさ。「えー、でも聞こえたよね?」なんて言って。

 考えてみたら、あの「すみません」って声、いつも聞こえるのと同じ声だったんだよね。だから私、「あぁ、いつものいない人の声だったんだ」って納得しちゃった。まぁ納得するって言い方も変なんだけど、私にしてみればそのくらい日常になってたってこと。



 私てっきり、あの「すみません」って声は自分だけにしか聞こえてないんだと思ってたんだけど、他の人にも聞こえるもんなんだなってそのとき思ったね。

 まぁ、声はしたけどお客さんがいないんじゃ私達にはどうすることもできないからさ。

 ベテランパートさんと「空耳かね」なんて言いながらまた作業に戻ったよ。

 でも空耳だとして、二人とも同じ言葉に聞こえるなんてあるのかな? そもそもお客さんは誰もいないのに、私達は何を「すみません」って聞き間違えたんだろう。


 とまぁ、私の体験はこんな感じ。

 この本屋さん、怖いっていうより不思議な体験だけど別の話もあるから、それはまた今度に話すね。




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