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もりとき怪談 第一集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


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後輩からの誘い


 この間、SNSで中学の頃の後輩からDMがあったんだ。

 中学のときは同じ部活で、そんなに親しくはなかったけど、お互いにもう社会人。そんな後輩がたまたまSNSで俺のアカウントを見つけて「もしかして〇〇先輩ですか?」って声をかけてくれた。

 俺も懐かしくてDMでやりとりをして、今度どっかでお茶でも飲みながらゆっくり話そうってなったんだ。

 後輩は地元の駅から電車で30分くらいのターミナル駅で待ち合わせしようって言ってきたんだ。

 その駅の周辺は店は多いんだけど、平日でも休日でも人が多くて店が混んでるんだ。「お前、そっちの方に引っ越したの?」って聞いたら、変わらず地元に住んでいると言う。「じゃあ地元でいいじゃん」ってなって、駅前にあるファミレスで待ち合わせることにしたのね。

 後から思えば、お互い地元に住んでるのにわざわざ電車で行くようなところを待ち合わせ場所にされた時点で、俺も疑うべきだったんだよな。


 で、後輩と待ち合わせの日。

 やって来た後輩は、中学の頃とはだいぶ様子が変わってた。俺たちはバスケ部だったんだけど、後輩ってその当時はぽっちゃり系だったのね。バスケをやりたくて入部したんじゃない。その当時流行ってたバスケマンガに憧れてバスケ部入ったって感じ。だからぜんぜん練習にもついて来れなかった。

 でも後輩はのめり込むタイプだったから、俺が卒業する頃にはだいぶ体がガッシリした感じになってた。

 なのに、目の前にいる後輩はガリガリに痩せてたんだ。目だけは生き生きしてるし、ニコニコしながら話してるから病気とかじゃなさそうだった。でも中学の頃からは考えられないくらい痩せてたよ。まるで別人で、名乗られなければ後輩と分からないレベルだった。


 お互いの近況や中学の頃の部活の話をしたんだけど、元々その後輩と俺はそんなに親しくなかったんだ。だからそこまで話題も弾まなくて、だんだん会話も途切れがちになってきた。

 微妙な空気になった頃、後輩が「先輩、◯◯の会って知ってます?」って言い出した。◯◯のところはよく聞き取れなかった。ムスビみたいな言葉が入ってたような気はする。

 後輩の言葉を聞いた瞬間、微妙な空気がさらに微妙になったよ。「あー、宗教の勧誘だ」って思った。だから急に声をかけてきたのかって。

 その宗教の話になった瞬間、後輩は急に饒舌に話し始めたんだ。


「俺、◯◯の会に入ってから本当にいいことばっかり起きてるんです。この間も雨の日にトラックにはねられそうになったんですけど、転んだところでちょうど傘がクッションみたいになってちょっとした骨折で助かったんですよ。これも◯◯様を信仰していたから救われたんです。ほかにも駅のホームから落ちたり、海で足がつって溺れたりしたんですけど、すべて◯◯様が救ってくださっているんです。◯◯様はいつでも俺を見守っててくれて、俺が◯◯様に正しい祈りを捧げれば導いてくださるんです」


 本当に目を輝かせて、楽しそうに楽しそうに笑いながら話すんだ。

 頬がこけるくらいに痩せてるのに、目だけがキラキラしている様子が何とも気持ち悪い。

 俺はこの状況をどうやって抜け出そうか、そればっかり考えてた。

 俺がそんなことを考えてたら、後輩は持っていたカバンから白い布に包まれた何かを取り出した。


「ほら、見てください。俺の◯◯様、俺の祈りを受け取って、こんなに育ったんですよ」

 布に包まれていたそれは、人形だった。

 サイズ的には20センチくらいでかなり精巧にできていて、フィギュアみたいな感じだった。

 その人形は、後輩に似ていた。俺が知ってた頃の後輩。ガッシリした体型だった頃の後輩。

 何でか分からないけど、俺にはその人形が本当の後輩なんじゃないかって思えてきた。


 穏便に済ませる方法を探してたけど、そんなものはなかった。

 俺は「宗教には興味ないから」って言って、伝票を持って立ち上がった。

 さっきまでニコニコしてた後輩の顔からスッと笑みが消えた。

「俺は◯◯様に何度も命を救われたので。先輩、後悔しますよ」

 後輩の捨て台詞にはドン引きだった。

 俺は中学の頃の知り合いに、後輩が変な宗教にハマってるから誘われても乗らないようにって連絡したよ。

 会社の同僚にこの話をしたら「待ち合わせ場所にわざわざ別の駅を指定したのって、そこにその会の施設があるからじゃないの?」って言われて、ちょっと背筋が寒くなった。


 しかし後輩が見せてきた人形。

 昔の後輩にそっくりっていうのも気持ち悪いんだけど、「育つ」ってどういうことかね。



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