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もりとき怪談 第一集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


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ノートパソコン


 もう2年くらい経ったし、時効だと思うから話します。


 残業が終わって家に帰っている途中、ゴミ捨て場にノートパソコンが捨てられているのを見つけました。「回収できません」っていうシールが貼られているノートパソコンです。外から見た感じでは汚れているとか傷ついているってこともありませんでした。

 しかもアダプターも一緒についたままになっていたので、俺はそのノートパソコンを持ち帰ることにしたのです。このノートパソコンが動いても動かなくても、フリマアプリで売れば少しの小遣い稼ぎになると思ったからでした。

 このとき、こんな出来心を起こさなければ……。俺はあんな思いをしなくても済んだんだなと反省しています。


 家に帰って、遅い晩飯を食べながら、俺はさっそく拾ってきたノートパソコンの電源を入れました。

 スムーズに起動し、モニターにデスクトップが表示されます。

 デスクトップにはいくつかのファイルが残されていました。フォルダの中には一時的に保管したと思われる家電の取説や風景の画像がありました。

 試しに開いてみると、問題なく画面に表示されました。

 ネットにつないでみましたが、それも問題なく表示されます。

 ノートパソコンはまったく壊れていませんでした。初期化すれば普通に売れるので、そのときはラッキーと思ってました。


 初期化をする前にひとつ、俺には気になるものがありました。

 デスクトップに「日記」とタイトルのつけられたフォルダがあるのです。前の持ち主が書いていた日記が保存されているかもしれません。

 ちょっとした好奇心で、読んでみようと思いました。

 フォルダの中を見てみると、丁寧に「○○年○月」とタイトルのついたテキストドキュメントが並んでいました。

 俺は一番新しいテキストドキュメントを開きました。タイトルは今月でしたから、前の持ち主は最近このノートパソコンを捨てたようです。俺はなぜこのノートパソコンが捨てられたのかが気になり始めていました。もしかしたらこの日記にその理由が書かれているかもしれない。


 日記の最初の方は、何かに怯えているような内容でした。

『またあの人がいる』『気配を感じることがある』『どうして私に』というような言葉が並んでいます。

 日記の内容から、前の持ち主が女性であることが分かりました。女性は誰かにつけられているようです。ストーカー被害の日記だろうかと思って、俺は読み進めました。


『ユミに、「さっき一緒に歩いていた人は誰?」と聞かれた。私は今日、誰とも一緒に過ごしていない。どんな人だったかを聞いてみたら、髪の長い女性だったって。たぶん、私の周りをうろついている人と同じ人だ。一緒にいたと思われるほど、私の近くにいたの?』

『家を出ようと思って何となく窓の外を見たら、いた。電柱の裏に身を隠している。私はカズヤに電話をして迎えに来て欲しいってお願いした。私の声がよっぽど怯えていたのか、カズヤはすぐ迎えに来てくれた。電柱の影に誰かいなかったか確認したけど、誰もいないって言ってたし、実際に誰もいなかった』

『大学のトイレの鏡に、あの人が映った。私が悲鳴をあげると、一緒にいたサクラは驚いてた。サクラに「今の人、見た?」って聞いたら、サクラはぜんぜん気が付いてなかったみたい。もしかしたら私にだけ見えるのだろうか』

 どうやら前の持ち主は、同性からストーカー被害を受けているようでした。

 そのまま読み進めていくと、日付はだんだんと現在に近付いてきます。ストーカー女は徐々に前の持ち主の女性と距離を詰めて行っているようでした。

 日記はついに、前日の日付になりました。


『最近はノイローゼ気味。カズヤも友達も警察に相談してはどうかと言う。この日記も嫌がらせの証拠になるらしい。いつからあの人に目をつけられたのだろう。あの人は誰なんだろう。どこで私を知ったんだろう。うしろ』


 そこまで読んだところで、モニターの画面が突然ブラックアウトしました。

 ブラックアウトした画面には俺の驚いた顔。

 その背後に画面をのぞき込むような仕草をした髪の長い女が映っていました。

 俺は反射的に後ろを振り返りましたが、そこには誰もいませんでした。

 もう一度画面を確認しましたが、俺が映っているだけです。

 俺はしばらく呆然としていました。徐々にさっき映り込んだのは日記に書かれていたストーカー女なんじゃないかと思えてきました。そうしたら急に怖くなって、俺はダッシュでゴミ捨て場にノートパソコンを戻しに行きました。


 俺が言えたことではないですが、皆さんもゴミ捨て場の物は持ち帰らないようにした方がいいですよ。

 いまだに俺は画面に映った女の爛々とした目が忘れられません。職場のパソコンでも電源が入っていない画面を見るのに、ちょっと勇気がいります。



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