表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もりとき怪談 第一集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/43

5時ちょうど


 小学生の頃、うちは門限が5時15分だった。

 本当は5時だったんだけど、私はいつも5時ちょうどまで公園で遊んじゃう。だから帰りは5時過ぎになっちゃうのね。

 母さんが呆れて「じゃあ5時ちょうどまでは公園で遊んでていいよ。でも、公園の時計が5時を差したら、遊ぶのをやめて帰って来なさい」って言ってくれたの。

 いつも私は、5時ちょうどになると、時計を恨めしそうに眺めながら家に帰ってたんだ。


 その日もいつもみたいに仲のいい友達と数人で、公園で遊んでた。

 日もだんだん暮れてきて、私は公園の時計を見ながら、「あぁ、5時になっちゃう」って思ってた。高鬼をやっていて、そのとき私は鬼だった。だから誰かにタッチして鬼を交代してから帰りたかったの。

 気持ちが焦ってるからかぜんぜん捕まえられなくて、もうすぐ時計は5時を差しちゃう。

 心の中で「時間よ、止まれ~!」って強く念じたの。

 時計の針が4時59分へと動いたのを見て、いよいよ「ヤバい!」って思ったときだった。


 それまで聞こえていた友達の笑い声も、走る足音も急にしなくなった。

 時計から目を離してみんなの方を見たら、みんなピタリと静止してた。まるで写真の中の世界に迷い込んだ気分だった。明らかにそんな格好のまま静止するなんて無理だろうって姿勢で止まっている友達もいた。

「え? みんな、冗談だよね……?」

 私の声だけが、公園に響く。誰も答えてくれなくて、私は不安になって公園を飛び出した。外にいる人に助けを求めようって思ったのね。


 なんだけど、公園を出て絶望したよ。

 だって、車も自転車も歩いている人も、みんな止まってるの。世界で動いているのは自分だけなんじゃないかって思えてきて、私は怖くなって公園に戻った。

 体感ではもう3分くらい経ってると思ったんだけど、公園の時計は4時59分のままで止まってた。

 近くにいた友達の体を揺さぶって名前を呼んでみたけど、その子はぜんぜん動かない。触ると皮膚はやわらかいんだけど、そのやわらかい皮膚の下に石が詰まってるんじゃないかってくらい固い手触り。力いっぱい揺すってみてもビクともしなかった。


 家に帰ろうかとも思ったけど、友達みたいに母さんも静止してるかもしれない。

 自分が世界にひとりで取り残されてしまった気がして、私は怖くなってその場でしゃがみこんで泣いちゃったのね。

 涙が止まらなくて、しばらく泣いてたらカチッて音が聞こえた。

 慌てて顔を上げて時計を見ると、時計の針は5時ちょうどになっていた。

 私が5時だと認識した瞬間、一気に周囲の音が戻ってきた。

 友達も、公園にいる他の人も、公園の外の車も自転車も、みんな一斉に動き出した。

 私がしゃがんで泣いていることに気が付いた友達が駆け寄ってきて「どうしたの?」って声をかけてくる。

 私は今起きたことをどう説明していいのか分からなくて、口をぱくぱく動かしただけだった。他の友達もやってきて「もう家に帰らなきゃいけないから泣いてたの? また明日も遊べばいいじゃん!」って励ましてきた。

 そういうことじゃなかったんだけど、私は泣きながら頷くしかできなかった。その日はみんなに家まで送ってもらって帰った。今思えば、いい友達だったなぁ。


 それ以降、私はまた公園の時計が4時59分で止まっちゃうんじゃないかと不安で、公園で遊ぶときには4時45分に切り上げて帰って来るようになった。母さんも私が早く帰って来るようになって、初めの内は不思議そうな顔をしてたな。

 中学生になった頃に、もしかしたら自分が強く念じれば時が止まるのかもしれないと思って試験前日に試してみたよ。だけど、時間が止まったことは1回もなかった。

 だからあの公園の時計が特別だったんじゃないかなって思ってる。まだ公園にはあの時計が残っているから、今度試してみようかな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ