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もりとき怪談 第一集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


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ツーリング


 1年前、ツーリング仲間のトモキが、バイクの事故で亡くなった。

 トモキは気に入っていたコースでひとり走っていて、カーブを曲がり切れずにガードレールを突っ切って転落した。たまたまその事故を目撃してた人がいてすぐに救急車が呼ばれた。でも、たいした高さでもなかったのに当たり所が悪く、トモキは帰らぬ人になってしまった。

 急な訃報に俺は理解が追いつかなくて、ぼんやりした気持ちでトモキの葬式に参列した。トモキのおばさんが泣きながら「ショウタくん(俺の名前)、トモキと仲良くしてくれてありがとう」とか言ってたけど、俺にはぜんぜん実感がわかなかった。

 俺も何度も、トモキと一緒に走ったコースだった。

 ずっと「何でトモキは死んだんだ?」って思ってた。バイクに乗る気にもなれなくて、しばらく走ってなかった。

 この間、トモキの一周忌があって、命日に弔いも兼ねてトモキが好きだったコースを走ろうって思ったんだ。


 トモキが好きだったコースは、トモキが亡くなったコースでもある。俺も走り慣れたコースではあったが、その日はだいぶ慎重に走った。

 カーブをいくつか曲がった頃、俺の後ろをバイクがついてきていることに気が付いたんだ。バックミラーを確認して、息を呑んだ。


 見覚えのあるバイク、見覚えのあるジャケット、見覚えのあるヘルメット……。


 かつてのトモキによく似ていた。

 まるでツーリングをしているかのように、俺について来る。

 トモキの命日だったからもしやと思った。俺はちょっと泣きそうになった。もちろんたまたま、トモキと同じバイクで、似た格好の人が後ろを走ってるだけかもしれない。

 でも俺にはなんだか、後ろを走っているのがトモキのような気がしていた。別に嫌な感じもぜんぜんしなかった。俺を驚かせて同じような事故に遭わせてやろうみたいな意思は感じなかった。

 本当に、昔みたいにふたりで楽しくツーリングをしている。

 そんな気分だった。俺の心臓はすごくドキドキしてた。


 待避所を見つけて、俺はそこにバイクを停めた。

 涙があふれてきて、このままじゃ事故を起こすと思ったからだ。俺の後ろを走っていたバイクは俺を追い抜いて遠退いて行った。

 俺は涙をぬぐって深呼吸してからまた走り出した。

 トモキが亡くなったガードレールまではもう少しだった。


 トモキが亡くなった場所に着くと、そこには真新しい花束が供えてあった。

 俺の他にも弔いにやってきた人がいたらしい。俺はメットインからトモキが好きだったお菓子を取り出して、その花束のとなりに置いた。

 手を合わせて冥福を祈る。祈り終わって目を開けたときに、花束に二つ折りにした手紙がはさまっているのに気が付いた。

 トモキへのメッセージだろうか。もしかしたら共通のバイク仲間が花束を置いて行ったのかもしれない。だから俺は何の気もなしにその手紙を開いたんだ。


 そこには「ショウタへ また一緒に走ろうな トモキ」って書かれてた。


 間違いなく、トモキの筆跡だった。トモキから、俺に宛てられたメッセージだ。

 やっぱりさっき後ろを走っていたのはトモキで、俺を追い越して行って、先にこの花束を置いてメッセージを残したのかもしれない。

 そう思えたら、もう馬鹿みたいに泣けてきてさ。

 俺、しばらく花束の前で泣いてた。


 その後も俺は、別に事故に遭うこともなく無事に帰ってきた。どうしようか悩んだけど、トモキからのメッセージは持って帰ってきた。

 通帳とかをしまってるひきだしに入れておいたんだけど、昨日見たらなくなってた。ひきだしをひっくり返して探しても見つからなくて、それでなんとなく心に一区切りついた気がした。

 トモキが亡くなってからバイクで走る気にはならなかったけど、また今週末にはバイクに乗ろうかと思う。トモキの分まで。

 


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