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もりとき怪談 第一集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


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3年振り


 現在進行形の話なんだけど、徐々に怖くなってきたから話だけでも聞いてくれ。


 2ヶ月くらい前かな、大学に向かう途中の交差点で信号待ちしてたら、後ろから声をかけられたんだよ。

「よう、3年振りだな」

 俺は振り返った。俺の背後にはぜんぜん知らない奴が立ってた。

 年齢は俺と同じくらいで、目線が上の方にあったから俺より身長は高かったと思う。すごいイケメンとかすごい不細工ってこともなくて、本当、どこにでもいるような奴。

 で、交差点には俺以外にも信号待ちをしている人がいたから、俺じゃない誰かに話し掛けたんだろうなって思って、俺は前を向いたんだ。

 そうしたら今度は俺の肩を叩いて「おいおい、無視かよ!」って笑いながら言ってくる。


「え? 俺?」

「そうだよ、久しぶりじゃん。元気だった?」

 相手は俺のことを知っている風なのに、俺にはさっぱり心当たりがなかった。

「悪い、誰だっけ?」

 素直に白状すると、そいつは別に驚いた感じもなく、「俺のこと忘れたのかよ、ひでぇな!」って笑ってる。

 ちょうどそのとき信号が青に変わって、そいつは歩き出した。

「俺、今日は急いでるから。またな!」

 そう言って、そいつは走っていった。俺は結局そいつが誰なのか思い出せなかった。


 ここまでは、まぁよくある話だと思う。

 相手は自分のことを知ってるのに、自分は相手のことを思い出せない経験なんてのは、誰にでもあると思うんだ。

 でも、俺に変なことが起こり始めたのは、思い返すとここからなんじゃないかなと思う。

 その頃から、俺のスマホには写した記憶がない写真が混ざるようになった。友達と会話しててスマホの写真を見せようと思ったときに気付いたんだ。食った記憶のない料理や、行ったことのない場所の写真が紛れている。

 友達にも話したんだけど、忘れてるだけじゃないかとか、一緒にいた誰かがイタズラでお前のスマホで撮ったんじゃないのとか言われた。

 そう言われればそうなのかもしれないとは思いつつも、何か釈然としない気持ちだった。


 それから、大学内を歩いてるときに知らない奴から「この間のカラオケ楽しかったな」とか「この間はノート貸してくれてありがとう」とか言われるようになったんだ。

 俺には心当たりがなくて、でも相手は俺のことを知ってるみたいですごく親し気に言ってくるから、俺も何となく話を合わせたりしてた。

 でも俺にはぜんぜん記憶がないし、かと言って、いわゆる二重人格みたいに俺の中にいる俺じゃない人間が活動しているとも思えなかった。俺と一緒に遊んだって奴にいつ頃遊びに行ったか確認したことがあったんだが、その時間は家にいた記憶があるんだ。二重人格の場合だったら記憶に空白があったりするだろ? 俺にはそういうことはなかったんだ。


 そんでこれは10日前くらいの話。

 家に帰ったら見慣れない男物のスニーカーが玄関にあった。親父が履くにしては若者すぎるデザインだし、俺には男兄弟はいない。客が来てるってわけでもないみたいだった。

 おふくろに「玄関にある靴、誰の?」って聞いたら、おふくろは不思議な顔をして玄関に行って戻って来た。で、「どっちの靴もあんたのじゃないの。使わない方は靴箱に入れといて」って言われた。

 あんなスニーカーを買った覚えはないぞと思って玄関に戻って、試しに履いてみたんだ。

 俺の足にぴったりだった。

 急にゾッとして、俺はそのスニーカーを靴箱にしまったよ。


 まぁ、俺の話はこんな感じ。何か俺の知らないところで俺の日常が徐々に浸食されているようで気味が悪いよ。

 あと、最近ちょっと気になってることがあるんだ。

 俺って元々、こんな顔だったっけ?

 前はもうちょっと違う顔だったような気がするんだけど、でも元からこんな顔だったって言われたらそうなのかもしれない。

 今の俺の顔さ、本当に何となくなんだけど、交差点で声をかけてきた奴の顔に似てるような気がするんだよね。



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