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もりとき怪談 第一集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


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トンネルの足跡


 大学2年生のとき、友達が免許を取って親が車を買ってくれたってんで、仲間とあちこちドライブしてたんだ。

 3ヶ月もすると近場の観光スポットとかはだいたい行ったことがあるからつまんなくなっちゃって、かと言って授業もあるから長期の休みじゃないと遠出もできない。行く場所がなくなった俺たちは、徐々に心霊スポットに行くようになったんだ。

 心霊スポットってけっこう人が来てて、ときどきだけど別のグループと鉢合わせることもあったんだ。別のグループと穴場の観光スポットとか、他の心霊スポットの情報交換をするのも楽しかった。


 俺たちはその日、隣県との境の峠にある心霊スポットのトンネルに行ったんだ。ネットで調べると心霊スポットとして紹介されている、そこそこ有名なところ。

 トンネルの近くに車を停めて、懐中電灯を持って進んだ。トンネルはもう使われてないから道も整備されてなくて、草むらの中にある獣道みたいなのを頼りに進んで行った。

 俺を含めて男ばっかり4人のグループで、懐中電灯は2本。懐中電灯を持ってないやつはスマホのライトの光を頼りに進んでった。俺たちの車の他には車は停まってなかったから、他のグループが来てるってこともなかった。


 トンネルまで進む道もけっこう怖くて、フクロウか何かの鳴き声とか、虫の音、俺たちが草をがさがさ鳴らす音が夜の闇の中に吸い込まれてくみたいだった。

 やがて開けた場所に出て、古いトンネルが現れた。

 本当にそこだけ空気が違うって感じで、行ったのは夏の終わりだから夜でもまだ暑い日もあったんだけど、半袖だと肌寒く感じるくらいだった。

 俺はなんだか嫌な感じがして、トンネルに入りたくなかったんだけど、ここまで来てやめようって言うこともできなくて、みんなと一緒に入ることになったんだ。


 トンネルの中にはこれまでここを訪れた人間が置いていったのか、ゴミが散乱してた。壁にラクガキもされているんだけど、上の方から水が滴ったのか薄汚れてて、懐中電灯の光の中ではなんだか不気味に見えた。

「雰囲気はあるけど、別に何にもないな」

 友達のひとりが言った。俺も最初のうちは嫌な感じがしてたけど、入ってみたら予想してたほど怖くはないなと思ってた。

 トンネルはけっこう先まで続いてて、友達が飽き始めて「もう帰ろう」って言い出した。

 じゃあとりあえず記念写真でも撮るか、って流れになってそれぞれに写真を撮ったり自撮りしたりしてちょっと盛り上がった。


 撮影も終わって、元来た道を戻る。

 しばらく歩くと、俺は違和感を覚えた。

 トンネル内には俺たちの歩く音が反響している。俺たちの足音はザッザッて感じなんだけど、その音に混ざってぺたぺたって音がする。

「ちょっとみんな、止まって」

 俺がそう言うと、みんな「え?」とか言いながら止まった。俺たちの足音が止まった後に、少し遅れてぺた、ぺた、ぺた、って音がして、止まった。


「今の、聞こえた?」

「今のって、足音?」

「俺たち以外、ここには誰もいないよな?」


 友達が、懐中電灯を闇に向ける。全員で振り返ったが、そこには誰もいなかった。

 俺は持っていたスマホのライトを地面に向けた。

 スマホのライトは頼りない光だったんだけど、俺たちのちょっと後ろくらいに、濡れた裸足の足跡があった。

「これ、足跡だ……」

 って俺が言って、全員で顔を見合わせて、次の瞬間にはダッシュで逃げてた。

 トンネルから出て草の中の道を爆走して、車に飛び乗って全速力で逃げたよ。峠道から国道に出た頃にやっと落ち着いてきて、24時間営業のファミレスがあったからそこに入った。あれほど人工の明かりに安心したことはなかったよ。

 俺たちはみんな枝で切り傷を作ってたり、髪にはっぱがついたりしてたから、店員さんは妙な顔つきしてたな。


 ドリンクを飲みながら、あれ絶対幽霊だってって感じで盛り上がってたら、友人のひとりが「スマホで撮った写真になんか映ってんじゃね?」って言って、みんな自分のスマホを確認した。そんでみんな口々に「うぉっ」とか「げっ」とか言い出した。

 あれと思って「何か写ってた?」ってそれぞれの写真を見たら、トンネル内で撮った写真の全部に、俺たちを取り囲むように黒い影が映ってた。

 トンネルの中だからもちろん暗いんだけど、その暗さよりももっと濃い、真っ黒な影が俺たちの横にも背後にも写り込んでいたんだ。

 全員無言で、写真を消去したよ。


 トンネルの中で俺たちについてきた足跡はひとりだったけど、本当はもっとたくさんの霊があのトンネルにはいたのかもしれない。



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