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もりとき怪談 第一集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


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異界ポスト

 私が小学生の頃、子どもたちの間で「異界ポスト」と呼ばれている古いポストがありました。

 学校から少し離れた、人通りの少ない路地裏にあって、周りも人が住んでいるのか分からないような古い家やアパートばかりでした。

 異界ポストはところどころ塗装がはげて茶色く錆び、収集時刻もかすれて読めませんでした。


 私たちの間では「異界ポストに手紙を入れると異世界にいる誰かに手紙が届く」と噂されていました。怖い話が好きな子たちは「異界じゃなくて死後の世界にいる死んだ人間に手紙が届く」と言っていました。

 未来の世界に手紙が届く、過去の世界に手紙が届くなんて話もあって、兄弟がいる子だとそれぞれ噂の内容が違っていましたが、とにかくここではないどこかに手紙が届くということは一致していました。

 私は異界がいいと思っていて、その頃に見ていたアニメのようなファンタジーな世界に手紙が届くことを夢想していました。


 もちろん、そのポストに手紙を投函してみた子も何人かいました。

 でもほとんど何も起きませんでしたし、起きたとしても出した手紙が自分の家に戻ってきたというような話でした。

 私は夢見がちな子どもだったので、選ばれた子の手紙だけが異世界に届くのだろうと思っていましたし、もしかしたら私の手紙なら異世界に届くかもしれないと思っていました。

 だから親にせがんで、可愛い便箋と封筒を買ってもらいました。私も異界ポストに手紙を出してみることにしたのです。


 とはいっても、どんな内容を書けばいいのか分からなかったので、私は自分の名前や家族のこと、学校のことや友達のことを書いて、最後に「あなたはどんな人ですか?」と書いて手紙に封をしました。

 誰に届くか分からないので宛先には何も書かず、封筒の裏には自分の名前だけを書いて、ひとりでこっそりと異界ポストに投函しました。


 2、3日後、学校から家に帰ると、私の学習机の上に手紙が置いてありました。

 宛先には私の名前だけが書かれていて、切手も貼られていません。

 小学生ですから、友達と手紙を交換するときに直接その子の家の郵便受けに手紙を入れるなんてことはよくあったので、私は友達の誰かが手紙を書いてくれたのだろうと思っていました。母はそういう手紙が届くと、私の学習机の上に置いておいてくれるのです。

 けれど、その字はいままでに見たことのない筆跡でした。


 中を確認すると、たどたどしい字でこんなことが書いてありました。もう手元に手紙はないのでうろ覚えですが、確かにこんな感じだったと思います。


 お手紙、ありがとう。わたしは◯◯

 わたしは、すんでいます。丘の上にあるちいさな村。

 ここは、風の音が好きな場所です。羊たちも、大好き。

 学校には行ったことがありません。あなたの話はおもしろい。

 また、手紙をください。


 確かに名前が書いてあったと思うのですが、忘れてしまいました。

 手紙の文章はこんな感じで文法的に間違ったりもしていたのですが、学校に行っていないからちゃんと文章が書けないのだろうと思っていました。「風の音が好きな場所」という文章は印象に残っています。

手紙を読んで、私の手紙が異世界に届いたのだと思いました。丘の上の村や羊たちというのは、学校の授業で見たヨーロッパの村のように思えました。


 私はその後も異界ポストに何度か手紙を出しましたし、数日後には返事が来ました。

 便箋がなくなると親にねだって買ってもらい、異界から届いた手紙はクッキーが入っていたきれいな缶にしまいました。

 そうして何回かやりとりをして、いつものように異界ポストに手紙を出そうとしたある日、異界ポストはなくなっていました。

 私はビックリして学校で友達に異界ポストのことを聞きましたが、どうやら異界ポストは撤去されてしまったようでした。たしかにポストにはお知らせの紙が貼られていたのですが、当時の私には「撤去」という漢字が読めなかったのです。


 手紙が出せなくなってしまい、どうしようかと悩んだまま2週間が過ぎた頃、手紙が届きました。

 その手紙には「なぜ手紙をくれないのか、楽しみに待っている」といったことが書かれていました。

 私も手紙を出したかったのですが、もう異界に通じるポストがなくなってしまったのでどうすることもできません。

 何もできないままさらに1ヶ月が過ぎた頃、また学習机の上に手紙が置いてありました。

 手紙には


どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして


 とびっしり書いてありました。

 私は怖くなって、その手紙を捨てました。これまでやりとりしていた手紙も急に怖いものに思えてきました。頭の中に「死んだ人に手紙が届く」という噂が思い出されて、もしかしたら私の手紙は異世界ではなく、死者の国に届いていたんじゃないかと思いました。

 結局、私は大事にとっておいた手紙をすべて捨てました。


 さらに1ヶ月後にもう一度手紙が届きましたが、それは読まずに捨てました。

 その後は手紙が届くことはありませんでした。

 この間、実家に帰って自分の部屋を整理していたときに、手紙が入っていたお菓子の缶を見つけて思い出した話です。

 


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