表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もりとき怪談 第一集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/42

クローゼットの中


 俺はあんまり幽霊とかそういうのは信じてなくてさ。

 だから同じ部屋を借りるなら事故物件でも安く住める方が得じゃんってタイプだった。

 実際これまでも事故物件に何回か住んだことがあったけど、幽霊を見たこともない。当然、霊障みたいなのも経験がない。事故物件なんて、実際のところはこんなもんだよ。

 まぁ、そんな俺なんだけど過去に1回だけ「ここはヤバい」って物件に当たったことがある。


 駅から少し離れてたけど立地もまぁまぁ良くて、1LDKの部屋だった。

 何でも若い夫婦が住んでいたらしいんだが、母親が子どもを虐待して、子どもは死んでしまったんだそうだ。

 次の入居者が決まらなくて2年くらい空き部屋になっていたそうで、相場の半額くらいの家賃になってた。

 ひとりで暮らすには十分な広さだったから、俺はこの部屋に住むことにしたんだ。


 引っ越し当日、俺は必要最低限の荷物だけ解いた。

 内見のときも嫌な感じはしなかったし、今回も当たりの物件だったななんて思って過ごしていた。本当、普通の部屋って感じだった。

 でも夜が更けた頃、どこかからカリカリって引っかくような音が聞こえてきたんだ。

 となりの部屋の音かなと思ってたんだけど、その割には音が近い。

 不謹慎なんだけどさ、俺は幽霊とかマジで信じてなかったから、これはついに心霊現象がある部屋を引いたんじゃないかと思ったよ。


 俺は慎重に、音の出所を探った。

 8畳のリビングのとなりに6畳の洋室があるって間取りだったんだけど、音はどうも洋室の方からする。

 洋室にはクローゼットがあったんだ。そして音は、クローゼットの中からしていた。

 俺は思い切って、クローゼットを開けてみた。当然、中には何も入っていなかった。俺はクローゼットを閉めて部屋を出ようとした。

 そしたらまた、背後でカリカリ音がする。


 さすがにもう一度開く勇気はなくて、洋室にベッドがあるんだけど洋室で寝るのも嫌だったから、仕方なくリビングで寝ることにした。

 フローリングに直接寝たから、床が固くてなかなか寝付けなかったよ。

 洋室からはまだ引っかくような音がしていたし、その音がなんとも耳障りだった。眠れないまま時間ばかりが過ぎていく。

 そうして1時間は経ってない頃だったと思うけど、洋室から突然ガタガタって音がした。そんなに大きな音じゃなかったけど、もしかして泥棒かと思って、俺はリビングの電気をつけてそっと洋室をのぞいたんだ。

 でも洋室には誰もいなかった。

 これももしかして心霊現象なのかなと思っていたら、またガタッガタッと音がして、クローゼットの扉が小さく揺れた。


「ママ……ママ……」

 子どもが泣いてしゃくりあげるような声が、かすかに聞こえた。

 幽霊なんて信じていない俺でも、全身に鳥肌が立ったよ。

 クローゼットの内側から、カリカリガタガタ音がする。

「ママ……もう、出てもいい?」


 俺は思わず「ダメだ!」って叫んだ。

 音がやんで静かになったと思った次の瞬間、バンバンッってすごい音で内側からクローゼットが叩かれた。

 ビビりまくって、とりあえず財布とスマホだけ持って、近くのコンビニに駆け込んだ。

 コンビニで朝まで過ごして、外で朝飯を食ってから後輩を呼び出して事情を説明して部屋まで一緒に行ってもらった。


 大家さんに夜にあったことを話したら、どうも子どもを虐待していた母親は、お仕置きと言っては子どもをクローゼットに閉じこめていたらしい。母親が「出てもいい」って言うまでクローゼットから出してもらえなかったんだ。

 清掃に入ったとき、クローゼットの扉の内側には血の跡がついていて、外に出してもらいたくて爪で扉を引っかいて出血したんだろうってことだった。

 となりで話を聞いていた後輩もドン引きしてて、さすがに引っ越すことにしたよ。


 次の物件は、事故物件じゃないところにした。

 あんな体験をしても、俺はまだ幽霊とかには懐疑的。まったくないとは言わないけど、その大半は思い込みとか勘違いだろう。

 ただあのとき、俺がとっさに「ダメだ!」って叫んじゃったから、許可があるまでクローゼットから出してもらえなかった子どもは、まだクローゼットの中にいるんじゃないかな、なんて思ってる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ