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もりとき怪談 第一集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


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02 ずるり


 社会人になりたての頃、とにかく家を出たくて、でも金がないからすごいボロいアパートに住んでたのね。

 風呂なしの2万5千円。マジでいつ壊れてもおかしくないなってところだったんだけど、どうせ日中は仕事だし、近くに銭湯もあったから不満はなかった。

 当然、部屋は和室で、畳も焼けてささくれてた。

 狭い部屋だけど、大きい押し入れと、その上に天袋があったから収納には困らなかった。

っていうかほとんど家出みたいにして家を出たからそんなに荷物も多くなかったし、住めば都ってやつ。でも友達が遊びに来たときにはあまりのボロさにドン引きしてた。


 で、ある日のこと。

 家に帰ってきたら、天袋のふすまが3センチくらい開いてたのね。

 天袋には何も入れてなかったから俺が開けるわけもないし、まぁ建物が古いから建てつけの問題なのかなーと思って、閉めたんだ。

 そんなことが何回か続いて、変だなと思って天袋を調べてみたりもしたんだけど、別に何にもないのね。天袋のふすまなんて、押し入れのふすまより固くて開け閉めしにくいくらい。

 ちょっと気味悪いなと思ったりもした。でも原因も分かんないし、困ることもないから、面倒くさくなって放置してたんだ。

 だからずっと3センチくらい開いてた。


 そんな感じで2週間くらい経った頃かな、夜中に急に金縛りになったんよ。

 俺、金縛りなんて初めてだったからびっくりしちゃって、どうしていいのか分かんなくて、心の中でずっとうわーうわー言ってた。

 体は動かないんだけど、目は動くのね。

 それで俺、仰向けで寝てるから視線だけちょっと動かして部屋の様子を見たのよ。

 そしたら、天袋の3センチくらいの隙間。

 ふすまが、ズズ、ズズって動いて、どんどん開いていくのね。

 めっちゃ怖かったんだけど目が離せなくて、開いてくふすまをずっと見てた。


 ふすまが開ききると何か黒いのが出てきた。で、ちょっとすると白いのが見える。それが人間の頭だって気が付いたとき、チビるかと思った(実際はチビんなかったけど)。

 そいつは手を使わずに、イモ虫みたいにして天袋から出てこようとしてた。

 見てる間に顔がぜんぶ出た。無表情で目だけガン開き。夜中で電気はついてないんだけど、顔が真っ白なのね。俺とずっと目が合ってる。


 そいつは俺と目を合わせたまま、どんどん出てきてさ。

 肩が出て、胸が出て(女だった)、腹の辺りまで出たところで、ずるりって全身が天袋から出た。


 べちゃっ


 首が動かなかったけど、目だけでそいつを追ってた。

 ついに天袋から出てきた。

 こっから先、この女に首を絞められたりするのかなーとか思って、俺死んだわってなってた。

 でも一向に、女は動かない。

 あれ? ってなってるうちに、指先が動くようになった。ほかにも動く場所がないかなって思って動いてみたら、首が動かせたのね。

 だから女の方を見たんだよ。


 女は顔から落ちて、顔面を畳に強打してた。


 思わず「何してんの?」って言っちゃったら、そいつの体が小刻みに震えて、そのままスーっと消えていった。

 体が動くようになったから起き上がって電気つけて、そいつが落ちたところをまじまじ眺めたけど、別に血の跡があるとかもなくて、いつものささくれた畳だった。

 マジで何で出てきたんだと思って、とりあえず全開になった天袋のふすまを閉めて、寝た。


 それ以降、天袋が勝手に開くこともなくなったし、金縛りにあうこともなくて、結局同じところに3年くらい住んだ。

 そのアパートは老朽化して取り壊すことになって、今は駐車場になってる。



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