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もりとき怪談 第一集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


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写りたくない


 小学5年生の3学期に、Aちゃんは引っ越してきました。

 Aちゃんは私と同じクラスで、すごく可愛い子で人目を引いていました。Aちゃんは明るくて社交的で、すぐにクラスのみんなと仲良くなりました。


 うちの学校は1・2年生、3・4年生、5・6年生はクラス替えがなく、同じクラスメイトのまま進級します。

 だからAちゃんと私は6年生でも同じクラスでした。

 6年生と言えば、修学旅行です。私達は1泊2日で日光に行きました。

 私はAちゃんと同じ班になりました。Aちゃんは班のカメラ係をしていました。カメラ係は修学旅行後に班ごとで作成する模造紙発表で使う写真を撮る役割です。よく撮れた写真は卒業アルバムにも使われます。


 私達は日光東照宮や華厳の滝で記念撮影をしました。

 カメラ係のAちゃんは撮影をしているので、自身が写真に写ることはありません。なので私は、Aちゃんに撮影を代わると提案しました。

 Aちゃんは首を横に振って、「私は写真に写りたくないの」と言いました。

 Aちゃんの言葉をちょっと不思議に思いましたが、そのときは「ふーん」で流しました。


 修学旅行が終わったあともいくつかの学校行事がありましたが、Aちゃんは頑なに撮られることを嫌がりました。

 カメラを向けるとパッと逃げてしまうので、なかなかシャッターチャンスがありません。

 そのうちに「本人が嫌がっているのにむりやり撮ろうとするのは可哀想だ」という意見も出て、Aちゃんにカメラが向けられることはなくなりました。

 卒業が近づいてくると全体撮影や個人撮影をすることも増えましたが、そういう日はAちゃんは学校を休みました。

 そして卒業アルバムに載せるクラスページを作成するときに、Aちゃんの写真がないという事態になったのです。

 どれだけ本人が嫌がったとしても、クラスページに1枚も写真がないとまるで私達がAちゃんに意地悪をしているようで、もういっそのこと隠し撮りをしてしまおうかという話になりました。


 私と友人がAちゃんを真ん中にはさんで廊下を歩きながら、会話でAちゃんの気を逸らし、アルバム作成委員会の子が隠し撮りをすることになりました。

 Aちゃんの撮影に成功すると、私達はさっそくカメラを持って職員室に行きました。

 先生のパソコンで撮ったデータを確認すると、Aちゃんの後ろに変なものが写っていました。

 それは、カメラを睨むように見つめている老婆でした。

 Aちゃんも私も友人も誰もカメラを見ていないのに、老婆だけはこちらを見ています。まるでパソコンの画面を通り越して、私達を睨んでいるようでした。

 私達がきゃあきゃあ騒いでいると、他の先生も寄ってきました。みんな驚いているようでしたが私達を怖がらせてはいけないと思ったのか、あまり騒ぎ立てることはしませんでした。

 先生はパッとパソコンに表示されたデータを閉じて「後は先生がやっておくから、君たちは教室に戻りなさい。Aを傷つけるようなことは言ってはいけないよ」と私たちに釘をさして職員室から追い出しました。


 卒業式の日に、卒業アルバムが配付されました。

 私はAちゃんのあの写真がどうなったのか気になって、真っ先にクラスページを見ました。Aちゃんの写真は使われていましたが、背景をうまく切り取って、老婆は写っていませんでした。

 Aちゃんは私に、クラスページのAちゃんの写真を指さしながら「ねぇ、この写真、隠し撮りしたでしょ。あなたも共犯? 加工されてるけど、あなたは加工前の写真を見たの?」と聞いてきました。

 いつもよりAちゃんの声が冷たく感じ、私は口ごもりました。私の様子で、Aちゃんは私がこの写真に写った老婆を見たのだろうと悟ったようでした。


「あの写真におばあさんが写ってたでしょ? あれ、私のひいおばあちゃんなの。私が5歳のときに死んじゃったんだけど、それからずっと、写真に写り込んでくるの。だから私、写真を撮られるのが嫌だったんだよね。だってひいおばあちゃん、ずっと睨んでるんだもん」


 Aちゃんはそう言って、私の言葉を待たずに帰ってしまいました。

 中学校に上がるのを待たずにAちゃんはまた引っ越しをしてしまい、それ以降は会っていません。



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