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もりとき怪談 第一集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


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17/43

閉鎖された市民プール


 これは俺たちが高校生のときに体験した話。

 けっこう荒れた生活してて、学校をサボるのも日常茶飯事だったし、親がゆるい友達ん家に入り浸って何日も家に帰らないなんてのも普通だった。

 荒れてたけど根性はなかったから、いわゆるケンカしたりするタイプの不良じゃなくて、立ち入り禁止の工事現場に夜中に忍び込んだり、廃墟に肝試しに行ったりして遊んでた。


 で、友達ん家の近くに閉鎖された市民プールがあって、深夜にそこに肝試ししに行こうってなったんだ。

 夏の頃で暑かったから、「まだ水が入ってんじゃねーの、泳ごうぜ」「馬鹿、お前、藻とか生えてるに決まってるだろ」「病気になりそう」なんて言い合ってゲラゲラ笑ってた。

 せっかくだからってコンビニでジュースとお菓子買って、もう肝試しっていうか、普通にプール行くみたいなノリで出かけて行ったんだよね。


 入り口には当然鍵がかかってたんだけど、フェンスがそんなに高くなくて、ちょっと登ったら簡単に侵入できた。

 小さな子どもが遊ぶ浅いプールと、数字のゼロみたいな形した輪になってる大きなプールがあって、友達が「小さい頃によく来てた、これ、流れるプールでけっこう楽しかったんだよな」って言ってた。

 懐中電灯で照らされたプールサイドにはところどころ雑草が生えてたし、俺たち以外にも肝試しに来る奴がいるのかあちこちにゴミが落ちてた。

 さすがにプールの水は抜いてあった。


 友達が「向こうに25メートルプールもあるんだぜ」って言って歩き出した。

 深夜だし雰囲気はあるけど所詮はプールだからそんなに怖くねぇなって別の友達と話しながら、そいつについて行った。

 そんで25メートルプールに着いたんだけど、そのプールだけまだ水が残ってたんだよ。夏特有の生ぬるい風が吹いてて、水面が月明りでキラキラしてた。明るいところで見れば汚い水なんだろうけど、夜の闇の中では月明りを反射するせいか、妙にきれいに見えたなぁ。


 しかし、臭いは酷かった。ヘドロっぽいというか、胸が悪くなる臭い。

 持ってきたお菓子やジュースを食べる気が一気に失せるような感じだった。

 別に何かこのプールにまつわる怖い話があるわけでもないし、何だか興覚めして帰ろうぜって話になった。

 その時、友達のひとりが「何か聞こえねぇ?」って言ったんだ。


 それまで特に気にしてなかったけど、友達の言葉にみんなで耳をすませてみたら、歌声みたいなのが聞こえてきたんだよ。

 女の歌声。

 俺たち以外にも今ここに肝試しに来てる奴がいるんじゃねぇの、しかも女のグループなんじゃねぇのってちょっと盛り上がって、俺たちは周囲に懐中電灯を向けたんだけど、誰もいない。

 でもまだかすかに歌声は聞こえたのね。


 歌声はみんなに聞こえてたから、近くにいることは間違いないんだけど、俺たちの近くには建物もなくて視界は開けてるのに歌声の主は見つからない。

 変だなと思って、俺は何気なく25メートルプールに懐中電灯を向けたんだ。

 初めは見間違いだと思った。

 でも見間違いじゃなかった。

 水面に、目玉がいっぱい浮いてた。

 いっぱいに浮かんだ目玉が、さっき水面が月明りにキラキラしてたみたいに、月明りを反射してた。


 俺、声も出なくて、となりにいた友達の肩をバンバン叩いてプールを指さした。

 友達は面倒そうに「何だよ」って言ったんだけど、プールを見た途端に悲鳴を上げて、周りにいた友達もプールを見て言葉を失ったり叫んだりしてた。

 その瞬間、俺たち全員がプールに浮かんだ目玉に気付くのを待ってたように、それぞれ別の方向を向いてた無数の目玉が一斉に俺たちの方を向いたんだ。


 友達のひとりが駆け出して、みんなそいつを追って走り出した。

 入って来たフェンスに向かって走ってると、友人のひとりが「歌! 歌!」って叫んでる。

 走るのに夢中で気が付かなかったけど、さっきは耳をすまさないと聞こえなかった歌声が、はっきり聞こえる。俺たちは全速力で走ってるのに、歌声はどんどん近付いてきてた。

 俺たちはフェンスに飛びつくようにしてよじ登って、プールの外に出た。

 プールの外に出てみると、歌声はぴたりとやんだ。


 もう肝試しって気分じゃないし、友達ん家に戻って、汗でべしょべしょになってたけどひとりで風呂に入るのも怖かったから、汗臭いままみんなで雑魚寝して過ごしたよ。

 何事もなく朝になって、あんなにほっとしたことはなかった。

 その市民プールはしばらく閉鎖されたままだったけど、俺たちが忍び込んだ数年後に取り壊されて、今は老人ホームになってるらしい。



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