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もりとき怪談 第一集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


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11/11

11 ケンちゃんの記憶


 俺が幼稚園の頃の、いると思ってた友達が存在しなかったって話をする。

 何言ってるんだって感じだと思うんだが、そうとしか言いようがない。イマジナリーフレンドじゃないかって言われたら反論できない。でもイマジナリーフレンドともちょっと違うような気がするんだ。


 まぁ、話していく。

 幼稚園の頃、俺にはよく遊ぶ友達がいたんだ。

 ひとりは同じ幼稚園に通っていて家が近いカヨちゃん。

 もうひとりはケンちゃん。ケンちゃんは幼稚園には通ってなくて、俺たちよりも小さかったから、まだ幼稚園に通う年齢じゃないか、保育園に通っていたんじゃないかと思う。

 ケンちゃんとも家が近くて、親同士も知り合いだった。

 ときどき3家族で集まってピクニックに行ったり、バーベキューしたりしてた。


 俺の家から道路一本はさんだところにそこそこ大きい公園があって、俺たちはそこに遊びに行くことが多かった。

 周囲をぐるっと木が囲んでてマラソンコースみたいなのもあって、平日でも休日でもいつも人がいる公園だった。

 何もない芝生広場が中心にどーんとあって、はじっこの方にちょっとした遊具、それから夏場に水遊びをする人工の小川と、鯉がいる池があった。


 俺は幼稚園が終わった後すぐにカヨちゃんと一緒に公園に遊びに行ってた。

 俺たちが幼稚園から帰ってくるぐらいの時間にケンちゃんが外で待ってて、ケンちゃんと合流して公園に行くんだ。

 家から近いとはいえ、幼稚園の子どもだけで公園に行かせる親ってどうなんだって思うけど、公園にはいつも人がいたし本当に家の前って感じだったから、親も油断してたんだろうな。俺が小さい頃はまだ、おおらかな時代だったんだよ。


 で、俺はその頃、カヨちゃんが好きだったんだよ。

 だから幼稚園が終わってカヨちゃんと遊ぶ時間が本当に楽しかったんだ。

 本当はカヨちゃんと二人きりで遊びたかったんだけど、ケンちゃんはいつも俺たちが帰ってくるぐらいの時間に外で待ってたからさ、結局カヨちゃんと二人で遊ぶってことはなかったんだ。

 ケンちゃんと遊んでても楽しいんだけど、ケンちゃんが小さいのもあって俺たちと同じようには遊べないのももどかしかった。

 ジャングルジムとかで遊んでると、ケンちゃんがついて来れなくて泣いちゃってさ。そうするとカヨちゃんがケンちゃんに駆け寄ってなだめてて、そういうのを見るのも嫌だった。


 だから俺、ケンちゃんのことを池に突き落としたんだよ。

 意地悪するつもりでさ。

 ケンちゃんがいなければカヨちゃんと二人でいれるって思って。

 もちろん、とんでもないことをしたって今なら分かるよ。でも幼稚園の頃の俺は、本当に一時の苛立ちに任せてケンちゃんを池に突き落としちゃったんだ。


 ケンちゃんはしばらく池でバチャバチャやっててさ、俺は笑って見てたんだけど、ケンちゃんの動きが徐々に小さくなって、やがて池に沈んだ。

 静まり返った池を見てさ、俺、急に怖くなって。

 これはヤバいんじゃないかって焦ってさ。

 でもさっきも書いたけど、ここ、そこそこ広い公園なんだよ。当然、池の周りにも人がいたんだけど、ケンちゃんが溺れているのを誰も気にしてなかった。

 池の鯉を眺めている親子連れだっていたのに、誰も溺れているケンちゃんに反応を示さなかったんだ。


 しかも俺のとなりには、カヨちゃんもいたんだよね。

 俺、自分がケンちゃんを突き落としたのに、カヨちゃんに「ケンちゃんが溺れちゃった!」って言ったんだ。そうしたらカヨちゃんは「ケンちゃんって誰?」って言うんだ。

 俺はケンちゃんのことを説明したんだけど、本当にカヨちゃんはケンちゃんのことが分からないみたいだった。

 ジャングルジムにのぼれなくて泣いたケンちゃんをなだめたことも忘れてた。


 家に帰って親にケンちゃんのことを聞いてみても、やっぱりケンちゃんなんて子は知らないって言うんだ。

 ケンちゃんの家に行ってみたら、ケンちゃんのおばさんがいた。あぁ、ケンちゃんのおばさんはちゃんといるじゃないかと思って、俺はケンちゃんのおばさんに「ケンちゃんが公園の池で溺れちゃった」って言ったんだ。

 おばさんはビックリした顔をして、「ケンちゃんってどこの子? 子どもが池で溺れたの?」って言って、その後ちょっとした騒ぎになった。


 警察が来て、公園で聞き込みをしたけど誰も子どもが溺れてるところなんて見てない。

 でも俺がケンちゃんが溺れたって言ったから念のため池をさらったんだけど何も出てこなくて、うちの親が警察に何か言われて、俺はめちゃくちゃ怒られた。

 うちの親がケンちゃんのおばさんに迷惑かけたって謝ってたんだけど、まるでお互い初めて会ったような話し方をしてたんだ。

 俺はケンちゃんのおばさんに「おばさんの家にケンちゃんって子はいない?」って聞いてみたんだけど、おばさんは子どもがいないどころか、結婚すらしていなかった。


 その日からケンちゃんは存在しない子になっちゃった。

 この話は親戚が集まるといまだに息子の馬鹿話として親が話すから、実際に警察まで呼んで池をさらった事件はあったんだ。

 俺にはケンちゃん家族も含めて3家族でピクニックに行った記憶も、カヨちゃんとケンちゃんと三人で遊んだ記憶もある。


 俺がケンちゃんの母親だと思っていたおばさんは俺が小学2年生の頃に結婚した。結婚相手は、やっぱりケンちゃんの父親だと思っていたおじさんだった。デキ婚だったらしくて、結婚後半年くらいしてケンちゃん……じゃなくて、女の子が生まれた。

 ちなみにその女の子が、今の俺の奥さん。

 小さい頃から俺にくっついてきて、年頃になってから猛烈にアタックされて結婚したんだけど、もしかしたらケンちゃんの生まれ変わりとかなのかなって思うときもあって、ちょっと複雑な気持ちなんだよね。



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