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08

 アンナとガブリエルがヨハンたちの元にたどり着いた時には、すでにヨハンと女冒険者は言い合いをしている状態だった。


走ってきたために途中からしか会話を聞けていない二人からしたら、ナンパが失敗しているのにそれでもヨハンがしつこく女冒険者に声をかけている様にしかみえない。


 もし初めから聞いていたら精霊騎士としてスカウトしている可能性も考えたかもしれないが、残念ながら二人が聞いたのはヨハンが「村に宿を取っているのか?」と尋ねたあたりからだ。


 せっかく駆け付けたのにまた出にくくなっているアンナとガブリエル。


 上司のナンパ(しかも失敗しそう)に鉢合わせているのだからやむを得ないところだろう。


 物陰からしばらく様子をうかがっていた二人だが、次第に女冒険者の断り方がかなり辛辣になってきて、ヨハンの声が泣きそうな情けないものになってきたところで、ガブリエルが大きくため息をつく。


 「…もう聞いてられないな」


 「まったく、仕方ない人ですねえ…」


 アンナは時と場所を選ばないヨハンのナンパ?に対して『困った人だ』というニュアンスで苦笑しているような言い方をしているが、その実際の顔は苦笑どころか般若のように恐ろしいものに変貌している。


 (おっと、アンナさん。顔とセリフが全然あってないぞ~。本音がだだもれだぞ~)


 ガブリエルがは実はアンナがヨハンに好意(恋愛的な意味の)を持っている事を知っているのだ。


 その上でガブリエルは(よせばいいのに)アンナにちょっかいをかける。ガブリエルは男前でモテるせいか、こういう悪ふざけをする。


 ガブリエルの様なモテる男前は別に一人の女の子に嫌われてもまだまだ余裕があるのでできるのだろう。余裕のない(誰にも嫌われたくない)ヨハンにはとてもできない芸当である。


 「なんか、アンナ怒ってないか?」


 ニヤニヤしながら言うガブリエルに、


 「はあっ?!わたし、全然怒ってませんけどっ!別に騎士長がどこで、誰を、ナンパしようと私にちっっっとも関係ありませんからっ!」


 プリプリ怒りながらヨハンの元に向かっているアンナは、いつもの冷静な美少女としての顔が台無しになっている。


 (こえ~)


 自分がアンナの怒りを膨張させたくせにガブリエルはけっこう本気でビビっている。こうなる事がわかっていてもガブリエルはちょっかいかけてしまう性分らしい。


 「ほらっ!ガブリエルさん、騎士長を止めますよ!」


 般若顔のアンナに促されてガブリエルがわざとらしく手を上げて大声で叫んでヨハンたちの間に割って入っていく。


 「お待ちください。ここは私たちにお任せを!」


 「ガ、ガブリエルか。アンナも来ていたのか」


 ヨハンは驚きながらも平静を装った顔で部下たちに向き直る。ガブリエルはいつも通りの顔をしているが、アンナは少し怒っているように見える。


 「騎士長。お一人で行かれるなんて水臭いですよ。もっと私たちを信用してください!」


 「すまないな。急いでいたからな」


 アンナの言葉には棘がある。しかし、それはヨハンが一人で行った事よりも、さきほどのナンパ騒ぎの方が影響しているのだろう。

 

 「騎士長?この方は騎士長なんですか?」


 (え?このナンパ野郎が?)と驚きを隠せない女冒険者に、


 「こちらの方はクギョウロキ王国の精霊騎士を束ねる精霊騎士長ヨハン様です。私たちの上司になります」


 アンナがちょっと得意そうに説明しているのを見ながら(そう言えば名乗ってなかったな)とヨハンは改めて自分の名を女冒険者に言ってなかったと思う。


 「そっ、そうなんですね。失礼しました」


 (精霊騎士長?!それって超大物じゃない!)


 焦って頭を下げる女冒険者に、


 「いや、私も名乗ってなかったからな。不審に思われても当然だろう」


 別に女冒険者がヨハンを不審に思ったのは名乗らなかったからだけではないのだが、ヨハンはそう思う事にしたらしい。


 そんなヨハンと女冒険者を見比べてアンナはひと息をつくと、


 「まったく、しっかりしてくださいよ。この方は私が村まで送っていきます。どうせ一人で村まで帰すのが危険だと判断したのでしょう?全く騎士長は人がいいんですから。私が送っていくなら心配ないですよね?」


 冷静に、そして少し呆れたようにヨハンに提案している。


 さっきまでヨハンのナンパに怒り狂っていた美少女と同一人物とは思えない。それどころか騎士長のやることは信頼している、といった態度になっている。


 (うわ~、アンナのやつ、いつもの『デキる部下』やってんなあ…)


 ガブリエルはアンナの豹変ぶりに若干引いているが、アンナにひとにらみされて肩をすくめている。アンナはヨハンの前ではその好意を隠して上司を信頼している部下としての顔しか見せていないのだ。

 

 「頼むぞ、アンナ。君に任せれば安心だ」


 ヨハンの方もさっきまでナンパをしていた事実がなかったかのように真面目な上司としてアンナに命令している。


 「…そういえば彼女は精霊魔法の素質があるようだ。村にもどったら話を聞いてみてくれないか」


 「へえ~、精霊魔法の素質が、ねえ…。わかりました」


 言い訳するように付け加えたヨハンの言葉にアンナは少しだけ素が出そうになるが、それを抑えてヨハンの命令に従うのだった。


次回から毎週土曜日更新になります。ブックマークやいいねがつくと嬉しいです。

…つけて下さいませ。マジで。心が折れそうです。(本音)

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