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06

「内務大臣と言い、ここの村長と言い、『あのくらいの年代』のやつはやり口は違うけど、なんでこっちに責任を押し付けようとしてくるんだよ!もうわかってやってるよね、あれは!確信犯ってやつだ!本当に責任があるヤツじゃなくて、どうにか解決できそうなヤツに押し付けてくるんだよっ!『偉そうなおっさん』はなんでそういう目利きだけはしっかりできるんだよっ!」


 洞窟の中を進みながらヨハンはまた独り言にしては少々大きい声でブツブツ言っている。今は例の金髪大男の精霊が出ていないので正真正銘の独り言だ。


 しかし、しばらく進んだ後に急に落ち込んだように視線を足元に落とすと、


 「…いや、ダメだな。『あのくらいの年代』とか『偉そうなおっさん』とかひとまとめにするのはよくない。属性で批判するのは人として間違っている。そうじゃない人だってたくさんいるはずだ。性格が悪いのはあの二人だな。きっといい『偉そうなおっさん』もいるはずだ」


 先ほどまでの怒りに任せた声ではなく、弱々しく自分の過ちを確かめるように小さな声になっている。ちなみに『偉そうな』の時点ですでにいい可能性は低いと思うがそういう問題ではないらしい。


 そして、ヨハンに対して再び盗聴を始めていたアンナとガブリエルはその消え入るような声を聞いて、


 「…愚痴ひとつ言うのも大変そうですね、あの性格だと」


 「まあ、あの人の場合は自分に少しでも落ち度がある感じると、ああなるからな。むしろわざと自分の落ち度を探してるんじゃないかと思うくらいだ」


 「確かに」


 もちろんそんなわけはないのだが、アンナたちにはそう見えているのも事実だ。


 「おっ、あの洞窟だな。アンナ、灯を」


 「飛べ、光雀」


 ガブリエルに言われてアンナが雀の姿をした光の精霊を出す。ガブリエルは持ち精霊に光系の精霊がいないのでアンナに頼んだのだ。


 アンナが召喚した光雀は二人の前方3メートルくらいのところを足元まできれいに照らしている。


 「騎士長はもう結構進んでいるんですよね?」


 「そうだな。音豹が盗聴している空間から逆算すると徒歩で10分くらいは離れているだろう」


 ガブリエルが盗聴用の精霊が盗聴している空間からその位置を割り出す。ヨハンが村長の家から出てきたのが思ったよりも早かったので、ちゃっかり村の宿屋で一休みしていた二人は出遅れた形になっていた。


 「じゃあ、こっちの声はまず聞こえないでしょうね」


 アンナは少し安心したように普通の声で話している。この二人は後をつけて来たのはいいもののいまだに合流するタイミングがつかめないでいるのだ。


 「確かエドヴァルトの報告書ではこの洞窟にはある程度のモンスターも生息しているんだろ。強いのはオーガあたりが出てくるってあったな」


 「まあ、オーガくらいなら何匹いても騎士長なら問題ないでしょうし、少し前にエドヴァルトが調査した際にあらかた倒してるんじゃないですか」


 オーガは一匹でも民間の冒険者や普通の騎士では単独で相手をするのは危険な相手だが、精霊騎士にとっては大した相手ではない。精霊騎士長たるヨハンなら言わずもがなだ。


 「もし、騎士長が戦闘になっていたらすぐにわかるだろ。いくら騎士長でもモンスターがいたらあんなのん気に愚痴を言ってないだろうし、戦闘音も聞こえるだろうからな」


 ガブリエルが訳知り顔でそう言った瞬間、


 「キャーッ!」


 甲高い女性の声が聞こえたかと思うと、


「むっ、美女の悲鳴!」


 ヨハンが駆けだしていく足音が聞こえる。


 「やれやれ、余計な話をしていたらこれだ。まあこれで俺たちが騎士長に合流する名目もたつだろう」


 ガブリエルが自分の発言がトラブルを引き寄せたようになってしまった事にその端正な顔を少し歪めて苦笑する。


 「…なんで美女ってわかるんですかね?」


 まだ相手の顔を見ていないヨハンが悲鳴だけで相手を美女と決めつけている事にアンナは眉をひそめている。


 「騎士長らしいけどな。そんな事よりも俺たちも行くぞ」


 これまでは(主にヨハンの愚痴のせいで)なんとなく顔を合わせづらくて少し離れた場所で尾行していた二人だが、戦闘になるなら話は別だ。駆け付ける大義名分になるだろう。


 この合流する絶好の好機を逃すわけにはいかない。


 ガブリエルとアンナはそれまでののんびりした雰囲気から一変して、戦闘モードになると風のように駆け出していくのだった。


明日はイブですね。更新します。

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