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04

 ヨハンの姿がギリギリ見えるくらい離れたところで一組の男女の騎士がその後を追いかけていた。


 「何かめっちゃ出て行きにくくなりましたね…、先輩」


 「そう言うな。騎士長一人で行かせるわけにもいかんだろう」


 ヨハンと同じクギョウロキ王国の精霊騎士であるアンナとガブリエルだ。


 ガブリエルは漆黒の肌をした線の細い男前で、アンナは金髪がよく似合った雪のように白い肌の美少女だ。ガブリエルの方が先輩なのだが二人ともヨハンの部下で、クギョウロキ王国の精霊騎士としては中堅どころの実力をもっている。


 ちなみに普通ならヨハンの独り言がどんな大声であったとしても内容を判別する事などできないほど離れた距離だが、ガブリエルが音の精霊の力を借りて盗み聞きしているので全部聞こえている。


 ヨハンの姿が見えた時にあまり機嫌がよくなさそうだったので、とりあえず様子を探ろうと音の精霊で盗聴してみたところちょっと合流しにくい感じになっていたのだ。


 そんな風に盗み聞きされているとも知らないヨハンの愚痴は止まらない。


 「だいたい大臣も大臣だよ!なんで俺に責任取らせようとしてくるんだ?どーいう思考回路してんの?どー考えてもやらかした奴が一番悪いだろ!何でもかんでも俺に押し付けてくんなよ!いっつも、いっつも、いっつもよぉ!」


 ヨハンの愚痴に答えるように、


 「きっと、騎士長は内務大臣に期待されているんですよ。騎士長ならできるって」


 アンナの言葉にガブリエルがうんうんと頷いていると、それが聞こえたわけではないだろうが、


 「どーせ、俺に期待してるとかそういう事言うんだろうが、そんな言葉で俺に仕事を押し付けるのは違うだろー!なんだよ、『できるから』って。できるんじゃねー、できるようにやってんだよ、こっちは!」


 吐き捨てるように言うヨハン。


 「…だいぶたまってますね。騎士長」


 「まあ、あの人はため込むタイプだからなー。一度出しはじめたら止まらないんだろう」


 冷静に分析する二人に対して、遥か先を行くヨハンは更にヒートアップしていく。


 「それになんで俺だけで責任取るような感じで指示するんだよ!せめてちゃんと一緒に行くように命令しろよ、言葉にして言わないとわっかんないんだから!そういうのが!最近のやつらは!」


 ヨハンに『最近のやつら』でひとまとめにされしまったので、


 「いや、そんな事ないですよ~。あいつが特殊なんです。普通のやつはさすがについて行きますよ」


 「そうそう、私たちはこうしてちゃんと付いてきてますしね」


 聞こえないとわかっているが二人は思わず反論している。


 実はガブリエルとアンナは今回の件には全く関係ないのだが、一人で行ったヨハンを心配して後を追ってきたのだ。なんだかんだと言ってヨハンは精霊騎士長として部下に慕われているらしい。


「そもそもあのエドヴァルトはいつも糸目でいかにも何かありそうな雰囲気を出しているくせに、なんで普通の新人なんだよ!ああいう見た目の奴はいざとなればとんでもない力を発揮して活躍をするって決まってるんじゃないのか!?」

 

 ついにエドヴァルトの見た目にまで文句を言い出したヨハン。


 「いや、騎士長それはさすがにいちゃもんですよ」


 またまた聞こえないとわかっていながらアンナがツッコミを入れると、


 「いや、今のは俺が悪いな。見た目で判断したらダメか…それにさっきの『最近のやつら』でひとまとめにするのもよくないな。ちゃんとしているやつはちゃんとしているか…」


 誰も見ていないないとわかっているのにヨハンはうなだれて反省の色を示している。


 ある意味ではこういうところがヨハンが部下に慕われているとこなのかもしれない。

 

 「騎士長…なんて痛ましい」


 「そうですよ、騎士長は悪くないですよ」


 本気で反省して落ち込んでいるヨハンの声を聴いて、更にガブリエルとアンナはヨハンに対しての信頼というか同情を厚くしている。


 知らない間に部下たちの心を掴んでいるとは知らないヨハン。ただ、知らないので今のヨハンには何の影響もない。


 「あ~、でも納得できねえ!なんで俺がしなきゃならないんだよ!絶対おかしいだろ!」


 まだまだ止まらないヨハンの愚痴に、


 「うっさいのう。結局はお前がカッコつけてたせいじゃろうが。『お待ちください!大臣!今回の事は全ての精霊騎士を束ねる私の責任です!』とか言ったりしてのう。かかかかっ」


 金髪を逆立てた筋肉質の大男がヨハンのモノマネをして高笑いをしながらいきなり出現する。


 「お前はいま召喚してないだろ!なんで勝手に現れてんだ!」


 「まあ、そーいう堅い事をいうなや。わしが出たいときに出る。出たくないの時には出ない。そして今は出たい時じゃ」


 「帰れっ!」


 「いやじゃ。わし、いま暇なんじゃもん」


 ヨハンに怒鳴られても涼しい顔で「帰らん」と居直っている金髪男(精霊?)のやり取りを聞いてアンナはガブリエルに話しかける。


 「…なんで帰れって命令しても帰らないんですかね。あれ、絶対おかしいですよね?」


 「それよりも出たい時にでるっていうのが無茶苦茶だろ。仮にも契約精霊だろ。召喚してないのに出てくるって相変わらずおかしいぞ、あの精霊」


 精霊騎士が呼び出した契約精霊に命令を出して、それに精霊が応える。召喚した精霊とのやり取りは普通はそれくらいだけだ。


 そもそも呼び出していない精霊が勝手に出てくるのは通常の契約精霊としてあり得ない。


 ただ、ヨハンのメイン精霊であるあの人型精霊はちょくちょくこうやって勝手に出てきているのを目撃されている。もっとも、さすがに大勢の前で現れる事は少なく、たいていはヨハンが一人でイライラしている時におちょくるように現れている。


 その仕組みをこの精霊に言わせると、ヨハンの精霊力は通常状態でも漏れ出るほど強力なので、それをちょっと拝借して出てきているらしいのだが、ガブリエルたちはそれを知らないので(知ったとしても非常識だと思うだろうが)不思議に思っているのだ。


 勝手に拝借できるこの精霊自身の力がそれだけ強いのか、ヨハンの漏れ出る精霊力が強いのか、あるいはその両方なのか。


 「勝手に具現化するほどの精霊だからな。嘘か真かあれも雷系の神級精霊らしいが…アンナはどう思う?」


 「そんな事言われても神級精霊なんて契約した事ないからわからないですよ。まあ、人型なんで強いんでしょうけど」


 ガブリエルの音の精霊が豹の姿をしているように、普通ランクの精霊は動物の姿をしている。


 それに対して高ランクの精霊は人型もしくは龍などの幻獣種の姿をしているので、ある程度はその見た目から精霊の強さは推し量る事ができる。


 そう考えると明らかに高ランクの見た目であったであろう今回の精霊と己の力量も考えずに契約しようとしたエドヴァルトの未熟さがより際だつのだ。



いいね、ブックマークありがとうございます!明日も更新しますのでよろしくお願いします。

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