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03

 今回の騒動の発端となった精霊が住処としている洞窟に続く一本道。たった一騎で馬を歩かせている精霊騎士長ヨハンは怒りに任せた声でぶつぶつ言っている。


 「ああいう場合、普通こっちが止めたとしてもついて来ようとするだろ!?自分が原因なんだから!『力足らずかもしれませんが、今回の事は私の責任ですからぜひともお供させて下さい』とか何とか言って。それを自分から来ないってある?!そんなパターンってある?!なんで俺に一人で行かせてんの?なに?もしかしてあいつ本当にこっちの『指示が悪かったから』とか思ってるわけ?あー、怖いわー。まーじーで、怖いわー!俺の指示してない『契約』を勝手にしようとして失敗したのが自分なのに本当に上司の俺が悪いと思ってるわけ?これが若者世代って奴なのか?いっても俺とたいして年違わねーだろ!!」


 たった一人で目的地に向かっているので誰も聞く者などいない中でヨハンの愚痴は続く。先ほどのまでの人の好さは消えている。どうも一人になると本音が出るタイプらしい。


 「なんか調査不足とか組織にせいにしてるけど、そもそもお前がその『調査』をするんだったんだろうが!こっちは『発現した精霊の正体を調べるように』としか言っていなかったのに、強そうな精霊だったからって勝手な自己判断で契約しようとしてお前が精霊を怒らせたんだろうが!」


 もともとヨハンがエドヴァルトに指示していたのは精霊反応があった場所の調査だけだった。


 精霊の調査は精霊の声を聴くことのできる精霊騎士でないと正確にできないのでたまたま近くにいた新人精霊騎士のエドヴァルトに命令したのだ。本来なら新人騎士一人に任すのはあまり好ましくないのだが、精霊反応の情報は貴重で他国に後れを取りたくなかった。


 自国内の事でも他国の精霊使いに先を越されるということは今までも少なからずある。これはクギョウロキ王国に限らずどの国にもあり得る事だった。


 精霊の情報を得た後は契約するかどうかはその後の判断によって決まるのだが、強力な契約精霊欲しさにエドヴァルトが勝手に契約しようとして、結果は失敗したのだ。


 要するにエドヴァルトは命令違反で失敗したくせに『悪気はなかったからセーフ』という謎理論を持ち出している。


「何が怖いってあいつ真顔で言ってんのよ!本気なのよ!マジでひとかけらも悪いと思ってないのよ~。いや、悪かったと口では言ってるけどあれは絶対反省してないよ。すごい純粋な目でみてくるんだよ。『なんかボクもわるかったですかね。でも、起きたことはしかたないですよね』って感じで!あ~、ありえないわ~!」


 人気がない街道を一人で行くうちにヨハンの声はだんだん大きくなって独り言の範囲を超えてきている。さらに馬を歩かせるスピードも速くなっている。


 こんな風に散々文句を言っているヨハンだがエドヴァルトを辞めさせる気はない。というか辞めてもらったら困ると思っている。


 何しろ精霊騎士になれる資質を持った者は非常に少なく貴重な存在だ。そのため深刻な求人難にある精霊騎士を辞めさせると後が面倒なのだ。


 実際、クギョウロキ王国では魔法騎士団やその他の騎士団と違って精霊騎士は騎士団と呼べるほどの人数がいないのでヨハンは精霊騎士を束ねる立場にあるにも関わらず『精霊騎士団長』ではなくあくまでも『精霊騎士長』になっているのだ。


 そしてもし、エドヴァルトが精霊騎士を辞める様な事になったら、内務大臣はその責任を間違いなくヨハンに押し付けてくるだろう。


 内務大臣が『貴重な精霊騎士を辞めさせるとは…。君はどう責任をとるつもりだねぇ?』とネチネチと言っている姿が目に浮かぶ。


 「『全部お前のせいだろうがー!』って言えたらなあ…」


 どうせエドヴァルトが辞める時は本当の理由(内務大臣の執拗な嫌味に耐えかねた)を言わないに決まっている。最終的に悪者になるのは辞めるのを阻止できなかった直属の上司であるこっちになるだろう。


 しかも内務大臣の嫌らしいところはヨハンの方は追い詰めてもそうそう簡単に辞めないという事が分かっているところだ。


 それにはヨハンの性格や家柄などが関わっているのだが、それが明かされるのは少し先の話だ。


 とにかくヨハンが辞めない事をいい事に今回の様な無茶ぶりをしてくるのだ。


 ただ、そんなヨハンも『いつか辞めてやる!』と心のそこで思わないでもないのだった。



本日の投稿はこれが最後です。この後は毎日一話を5日くらいしますのでよろしくお願いします。

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