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016

 最初に報告に来た駐留兵を先頭に村の駐留兵5名が勢揃いする。


 (5人か。まあこの規模の村ならこんなもんか)


 エドヴァルトは期待以上でもなく、期待以下でもない駐留兵の数に妙に納得している。


 「君たちには一時的にボクの指揮下にはいってもらう。本来なら駐留兵は巡回の騎士が来ている時は村内の安全に専念する事になっているが、今回は戦力が少ないから協力してもらいたい」


 本来、駐留兵と王国の騎士では警察と軍隊くらい役割が違う。駐留兵はあくまで地域内の治安を守るのが仕事で、モンスターを含む外敵には騎士があたることになっている。


 「もちろんです!我々もそのつもりで集まりました。なんなりとご命令ください!」


 駐留兵たちはエドヴァルトがちょっとビックリするくらい気合が入った敬礼をしてくる。


 (ずいぶん士気が高いな。どうした?)とエドヴァルトは疑問に思っているが、十人もいた魔法騎士たちが真っ先に逃げ出したにも関わらず、この精霊騎士は一人残ってくれたことに感動しているのだ。


 「早速だが、これくらいの石を用意して欲しい。できるだけ多く。そうだな少なくとも1000はいる、いやあればあるだけいい。とにかく集めてくれ」


 エドヴァルトは右手に持った石を見せながら指示を出していく。.


 「石ですか?何とか集めてみますが…」


 駐留兵たちはとまどいの色を隠せない。石ならいくらでもあると言いたいが、実際にはそんな手ごろな大きさの石など村の中にそう多くはころがっていない。


 「君たちだけで無理なら村の者に協力してもらってくれ。もちろん強制はしてはダメだが」


 難しい注文をしている事はわかっているエドヴァルトだが、作戦のためにはやってもらうしかないだろう。


 「それについて少しお話があるのですがよろしいですか?」


 駐留兵のまとめ役らしい年かさの男(といっても30代前半くらいだろう)が一歩前に出る。


 「なんだろうか」


 「実はすでに村の者の中で協力を申し出てくれている者たちがいるのです」


 どうやらエドヴァルトたち巡回の騎士たちにゴブリンの襲来を報告しに行くと同時に、村の者たちにも声をかけていたらしい。


 それだけゴブリンの大群を脅威に思ったのだろうが、この絶対的な人手不足の中ではありがたい行動だ。


 「それは助かるよ。ぜひ手伝ってもらってくれ」


 「ともに戦いたいと言っている者もいますが」


 手伝いには二つ返事で許可を出したエドヴァルトだが、これには顔を曇らせる。


 「…訓練されていない一般人はあまりあてにならないんだよ。武器もろくにつかえないからね。下手をしたら足を引っ張りかねないからね。石集めだけに使ってくれよ」


 エドヴァルトは村人を戦力としては考えていない。いくら人手が足りないといっても素人を指揮するのは難しいのだ。なにより村人は守るべき国民なので危険な事はさせられないと思っている。


 「それから、聖堂にいるシスターも協力したいとの事です」


 「シスター?創成母神のか?癒しの奇跡が使えるなら役立つだろうけど、それも後方待機だな」


 創世母神はこの世界で広く信じられているこの世界を作ったとされる女神だ。この女神を信仰する聖職者は回復魔法が使える者が多いのでいざというときには頼りになるだろう。


 「それが…戦いの方でもお役に立ちたいと言っています」


 「シスターが?戦いに?」

 

 普通のシスターは魂の救済という死後の事を専門にしているのだが、エドヴァルトにとって幸運な事にこのシスターは人間が魂になる事を防ぐための才能にも恵まれていた。


 つまり戦術的な才能が少なからずあったのだ。


 エドヴァルトはシスターに会ってすぐにそれを知ることになるが、それはもうちょっと先の話だった。


 


                        *


 

 

 石集めを他の駐留兵たちに任せておいて、一番年かさの駐留兵の案内で村の武器庫を見に来ていたエドヴァルトは顔を曇らせる。


 「矢の数はこれだけしかないのか?」


 ざっと見ても全部で200本といったところだ。


 「もともとここはそれほど軍事的に重要な村ではないのです。モンスターの襲撃もあまりないですし、これだけあれば十分だったのです」


 「そうか。とりあえずこれは全部運んでくれ」


 エドヴァルトに指示に従って矢の束を集めながら駐留兵が問いかけてくる。


 「わかりました。あの…どうして精霊騎士様はこの村に残ってくださったんですか?」


 ためらいながらきいてくる駐留兵とは対照的にエドヴァルトはあっさり答える。


 「ボクがこの村に残らないとこの村はゴブリンによって全滅するかもしれないだろ」


 全滅という言葉に駐留兵はビクつきながらもさらに問いかける。その全滅の中にも自分も含まれているとわかったからだ。


 「…危険だとは思わなかったんですか?」


 「危険が嫌なら初めから騎士なんてしないよ。君だってそうだろ。危険が嫌なら駐留兵なんてしてないだろ」


 「私たち駐留兵はこの村や近隣の出身ですから。守りたい気持ちがあります。しかし、何のゆかりもなければ魔法騎士(あの方)たちみたいに逃げる方が普通ですよ。それに精霊騎士様も以前は危険な相手だと逃げられたと…」


 これは言っていいものか悩んだが、ここまできたら、と怒らせるのを承知で駐留兵はたずねる。エドヴァルトが命懸けの決意で残ってくれたとはわかっているが、やはりその動機が気になるのだ。


 (はっきり言うなあ。まあ、気になるのも無理もないか)


 なぜこの村の場合は残ったのかと言われたらマニュアルもあるがそれ以上に明確な理由がある。


 「危険が嫌じゃないと言ったけど、ボクは無意味な危険は嫌だよ。あの時は神級精霊の性質を考えて、すぐには被害出ることがないと判断したからその場を離れたんだ。神級精霊相手だと仮にボクが戦ったところで一瞬で殺されて終わりだよ。何の意味もない死だ。だから無意味な意地を張って無駄死にするよりも、撤退して適切な相手に任せた方がいいと判断したんだよ。でも、今回は相手がゴブリンだろ。アイツらは考えなしのバカだからいつしかけてきてもおかしくないし、ボクが残って戦えば確実にこの村の被害は減らせる。例え死んだとしてもね」


 淡々とした調子で自らの死について言及するので駐留兵はエドヴァルトも死を覚悟しているのかとまた感激の言葉を発しそうになっているのに気づいて、

 

 「あっ、でもボク今回の事で死ぬつもりは全くないから」


 水を差すようなことを言う。


 あまりにあっさりした言い方に「あっ、そうですか」と駐留兵は感情の置き所を失ってまごまごしているのを無視して、


 (しかし、矢が思ったよりも少ないなあ。本格的に石ころ集めをあてにしないといけなくなっちゃったよ)


 あてが外れたエドヴァルトは重く息を吐きながら他の駐留兵たちが石を集めている場所に向かうのだった。 

次回は新キャラのシスターがでます。

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