幕間2
ブリエルは精霊騎士長ヨハンに好意を寄せているもう一人の精霊騎士の元に来ていた。いざ突き放してみたものの、あの寂しそうな顔を思い出すと、やはりどうにかしてやりたいと思ったらしい。この男前にはこういう親切なところがあるからモテるのだろう。
「心理学的に言うとあの人はモテたい願望が強すぎてモテないんですよね。つまりがっつきすぎなんです」
精霊騎士チヒロは異世界転生者で、元の世界では心理学とやらを勉強していたらしい。
アンナのように絶世の美少女というわけではないが、それは相手が悪いだけで元の世界のクラスという単位では『クラス一の美少女』くらいの可愛さはある。
だた、心理学と大仰な事を言っているが、その分析はアンナと大差ないものだったりする。
「心理学って、そんなのなくてもそれはみんなわかってるぞ」
『ヨハンの恋愛について相談したい』というていで話しに来ているガブリエルが身もふたもない事を言っているが、チヒロはわかってないですねえ、とばかりに人差し指を左右に振る。
「それはただなんとなくで知っているだけでしょう?私はちゃんと分析して言っているんです。心理学的に」
「いや、こっちの世界にも人の心の事を考える学問はあるぞ。それを専門にしているやつもいるくらいだし」
「え?そうなんですか?こんな異世界にもそんな考えがるあるんですか?」
「ちょいちょいチヒロの発言にはひっかかることがあるが、人文分野においてはそれほど大差はない気がするなあ。科学技術ってやつも凄いらしいが、こっちは魔法があるし発展した技術の違いなんじゃないのか。そもそもチヒロのいう心理学ってなんか浅い気がするな。本当に勉強してたのか?」
「ちゃ、ちゃんとしてたわよ!」
(将来はカウンセラーになりたいからその分野の大学に行く予定だったし、心理クイズの本は好きだったもの!)
そう、チヒロはまだ心理学の勉強などしていない。ただ、異世界の定番の『多少浅い知識でもマウント取れるはず』をしているだけなのだ。
「俺はその心理学とやらはわからんが、チヒロは騎士長の事が好きだよな?」
「はっ、はあ?そっ、そんなわけないし!全くの見当はずれですね!そんな事もわからないなんて、あー、やっぱり心理学的にこの世界はまだまだですねぇ!ぜんっぜん遅れてますー!」
完全に動揺してしまっているチヒロは顔を真っ赤にしている。
(なんで騎士長の事を好いている奴はなんでみんなこのタイプなんだよ。騎士長も可哀そうに…)
そう、ガブリエルが知っているだけでも二人もいるようにヨハンは意外とモテている。
ヨハンのためにも応援してやろうと思うガブリエルだが、
(でも、どっちも真剣に騎士長の事が好きみたいだし変な口出しはやめとくか。恋愛は公平じゃないとな)
二人ともがヨハンに対して本気な事がわかったために自分がどちらかとの仲を取り持つのはフェアじゃない気がする。
こうなるとヨハン本人を変えるしかないだろうと再びヨハンの元に向かう。
*
「もう気にしてないさ。まっ、俺はどっちみち精霊騎士に手を出す気は実はそれほどないんだよ」
マニュアル作りに没頭していたヨハンは戻って来たガブリエルに変な強がりを言っているが、(それじゃあ話が進まないんだよなあ)とガブリエルはわざとらしく質問する。
「別に精霊騎士でもいいじゃないですか。何か問題でもあるんですか?」
「いやあ、だってもし振られたらその後が気まずいだろ?それに俺が部下に交際を申し込んでみろよ。下手したらパワハラだぞ。むこうは嫌でも断れないかもしれないじゃないか」
「考えすぎじゃないですかねえ…」
そんな事を言っていたら恋人なんてできないだろうと思うガブリエルだが、この気をつかいすぎるところがヨハンのいいところでもあるようなので、他の点からヨハンの良さを出せるように提案する。
「やっぱり、騎士長はもっと余裕を持った方がいいんじゃないですかね。女の子はあんまりガツガツしてたらちょっとひいちゃいますからね」
「そういうお前は余裕たっぷりだよね。一体どうやったらその余裕が身につくんだよ」
半分嫌味で言うヨハンに、
「そうですね…。彼女がいたら余裕ができるんじゃないですか?俺はいま彼女がいなくてもモテてますけど、彼女がいた時の方がモテてた気がします」
しれっと更にイラつかせる事を言うガブリエルにヨハンはまたも涙目で叫ぶ。
「その彼女がいねえんだよ!その彼女がいないからこっちは困ってんだ!だいたい彼女がいたらそれ以上モテてもダメだろ!」
「…騎士長は変なところで真面目っスよね」
「変じゃないぞ!大事な事だろ!」
(なんでこの人がモテないんでしょうねえ…)
とガブリエルは嫌味ではなく本気でそう思うのだった。
もうヨハンはガブリエルに対してはかなり本音を出してますね。タイトル通りという事で。
次回から2章が始まります。頑張ります。




