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 ここで精霊騎士が精霊と契約する方法について説明しよう。


 精霊騎士が精霊と契約する方法は多岐にわたるが、たいていの場合はその精霊と戦って力を認めさせる事になる。中には戦闘以外の方法で契約条件を出してくる精霊もいるがそれは例外だ。


 そして戦って契約する場合は精霊騎士がすでに契約している精霊を使って、これから契約しようとする精霊と戦うのが一般的だ。


 この時に重要になるのは精霊同士の相性だ。水は雷に強く、土に弱いなどそれぞれの特性を考えて戦えば格上の精霊に勝てるので、そうやってより上位の精霊と契約するのだ。


 ではまだ精霊と契約していない、つまり契約精霊がいない状態の精霊騎士はどうするのかと言えば、自らの精霊力(精霊を従わせたり、声を聴く力)で精霊を従えるのだ。


 この場合はたいてい精霊の中でももっとも弱い最下級の精霊と契約することになる。光の精霊であれば光雀などだ。


 精霊力だけで従わせる精霊は最下級の精霊に限定される。普通は。


 中級以上の精霊は精霊力だけで従わせるのはほぼ無理なので、それまで契約した精霊で戦うのだ。普通は。


 しつこく普通は。と言ったが精霊力がどんなに高くても最下級の精霊以外には人間の精霊力などカスみたいなものなのだ。普通は。


 それこそ神級精霊を自身の精霊力だけで従わせるなど、常識はずれにもほどがある。ファンタジーなのだ。


 そのファンタジーをあっさりやってしまっているヨハンに対してクゥーラは、


「なっ、なかなかやるではないか。やっ、約束通り貴様と契約してやってもよいぞ…」


 せいいっぱい強がっているが、ガブリエルはその足元を見逃さない。


 (おっと、クゥーラ様ガクブルですよー)


 分身体とはいえ、元になったのが神級のクゥーラなのでかなり強かったはずだ。それを苦も無く倒されてしまったのを見てしまったら当然危機感を抱くのだろう。


 「それでは…」

 

 「お前のう、こいつは仮にもわしと契約しとるヤツじゃぞ?これくらいはできて当たり前じゃ」


 ヨハンがなにか言いかけようとしたその時、例の金髪の精霊が高笑いしながら出てくると、


 「げえっ、ミカヅチ先輩!?」


 クゥーラは驚愕してその名を叫んでいる。


 「…お前、今、『げえっ』って言わなかったか?」


 失礼なその第一声に片眉を上げるミカヅチに、クゥーラは真面目な顔で答える。


 「いえ、『げえっ』なんて言ってないですよ!先輩に僕がそんな事言うはずがないじゃないですか!『えっ』ですよ、『えっ』。驚きの『えっ』です!」


 (いや、言ってただろ…)


 ヨハンとガブリエルは心の中でツッコむが、ミカヅチの方はあっさりと「そうか。ならいいがのう」と受け入れている。あまり深く考えない性格らしい。


 それにしても先ほどまでの神級精霊としての威厳に満ちた口調から一転して、上下関係がしっかりしている先輩に対する口調にクゥーラはなってしまっている。


 「しかし、久しぶりなのにあんまり嬉しそうじゃないのう…」


 「そんなことないですよ!ミカヅチ先輩よりも、もっと会いたくない嫌な先輩いっぱいいましたよ!」


 「…その言い方だとわしも嫌な先輩ってことにならないか?」


 「いやいや、ミカヅチ先輩はちゃんと強かったじゃないですか。実力もないクセにちょっと早く生まれただけで威張っていた奴らとは違いますよ。全然いいほうですよ!」


 全くフォローになってない言い方をするクゥーラだが『ちゃんと強い』と言われた事でミカヅチの機嫌は直っている。


 その後も精霊二人はヨハンとガブリエルをほおっておいて話に花を咲かせている。「今度飲みに行きましょうよ!」とクゥーラの方から誘っているところを見るとそれほど悪い関係でないらしい。


 「いやー、それにしても先輩が人間と契約するなんて今でも信じられませんよ!」


 「まあ、こいつは特別製だからのう」


 意外そうに言うクゥーラの指摘にミカヅチも歯切れが悪い。


 「確かにそうですね。僕の分身体もあっさりやられちゃいましたし、普通の人間じゃないですね。ていうか先輩が契約してるならもっと早く止めて下さいよ!そういう性格悪いところ変わってないですね」


 クゥーラは結構はっきり言うタイプらしいが、これだけ言えるのもミカヅチの事を気安い先輩だと思っているからだろう。


 「仕方ないじゃろう。わしだってお前だとわかった時点で止めてやろうと思ったけど、わしらは契約者に呼ばれないと出てこれないじゃん?だから止めようがなかったんじゃ」


 先ほどまで好きな時に勝手に出てきていたくせに、ミカヅチは何食わぬ顔で「出てこれなかった」と言い切っている。


 「そりゃそうですけど…」


 と納得しかかかっているクゥーラにガブリエルは(騙されてますよ!クゥーラ様!)とツッコみたかったが、


 (そう言えば今だって勝手に出て来てるんじゃあ…?)と思いかけているところに、


 「ところでクゥーラ、ちゃんと契約してやるんじゃぞ。こっちの男もな」


 とミカヅチはガブリエルの方を振り返ってクゥーラに釘を刺している。


 (おおっ、ミカヅチ様っていい精霊じゃないか。見かけによらず)


 実際にクゥーラの分身体を倒したのはヨハン一人の力だが、もともと二人と契約するという約束だったのでガブリエルにも契約する権利があるのだ。


 「まあ、それは仕方ないですね。契約の試練の前にそう言いましたから」


 クゥーラは実際には自分の分身体に対して防戦一方だったガブリエルと契約するのは腑に落ちないようだったが、ミカヅチにこうまで言われてたら不承不承でもうなずくしかない。


 「ありがとうございます!さすがはクゥーラ様!お心が広い!」


 と、ここに来てヨハンのよいしょか再びクゥーラに炸裂するのだった。



    

                        *


 

 無事に契約を終わらせて洞窟内の帰り道でヨハンはガブリエルに話しかけている。


 「これでガブリエルも晴れて神級精霊持ちになったな。だが、神級精霊は強力すぎるからむやみに呼び出したらダメだ。それは肝に銘じておくんだな」


 真面目な顔でアドバイスするヨハン。むやみに呼び出すも何も勝手に出てくる事があるようなのだが、そこには触れていない。


 (さっきまで神級精霊相手に『よいしょ』していた人と同一人物に見えないんだよなあ…)


 ガブリエルはそう思いながらも、


 「あの、騎士長。さっき騎士長の精霊、ミカヅチっていうんですか?あれが出てきたのは騎士長が呼び出したからですよね?」


 ヨハンはずっと感じていた違和感を口にする。


 分身体を倒した後にクゥーラが契約の事を口にした際に、ヨハンが何か言いかけていたが、あの時にどうも口の中だけの小声を使ってミカヅチを召喚していたのではないかと思ったのだ。


 「そうだ。よくわかったな。あのままだと分身体を倒した俺としか契約しないと言いかねなかったからな。神級精霊は平気で嘘をついたり、ごねたりするからな」


 ヨハンはあっさり認める。


 だからあの時ミカヅチは「契約者に呼ばれないと出てこれない」と言っていたのだ。もちろんミカヅチにとってはそんな事はないのだが、あれは都合のいい時だけ呼び出すヨハンへの嫌味だったらしい。


 「ガブリエルもせっかく来たんだからな。強くなっていても損はないだろう」


 何食わぬ顔で言うヨハンを見て、


 (いい人なんだよなあ。この人。何でモテないんだろう…)


 とひどい事を考えているモテる男、ガブリエルなのだった。


          

ブックマーク、いいね!ありがとうございます。次回で一章が終わって幕間が少しあって二章に入る予定になっています。

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