第一章 紅蓮の特訓編(1)
ガタゴトと揺れるバス。
そこには暗い顔をした10名の男女。
彼らの耳に残るのは、かつて友だったはずの者たちからの言葉だった。
『ブラック送りって、名門校にあるまじき行為だぞ……』
『前々から思ってたけどよく生き残れたわよねぇ』
『そもそもなんでここに来たの?』
『劣等生』
『落ちこぼれ』
『優等生モドキ』
グッと顔を顰め、全員虚ろな目で外の景色を眺めていた。
やがて止まり、ノロノロと全員でバスを降りた。
顔を上げるとそこには彼らの顔の暗さにも負けないくらい真っ黒な校舎だった。
やけにボロボロで、どこかホラーな雰囲気を醸し出していた。
「いや……なんでこんなことに」
誰かがぽつりと呟いた。
それは自分の運命を嘆いたのか、はたまたここの校舎について疑問があったのか。
顔を見合わせ、全員が覚悟を決めて校舎に入っていった。
ブラックスクール、正式名称は劣等生隔離校舎。
各地に点在するスパイや暗殺者の育成、教育の場である教育高等学校は、年々数多くのプロたちを排出してきた。
その中でもトップオブトップの学校、ウィリアムズ教育高等学校は、イズム・新郷を始めとした『ディスペア』のメンバーなどを育成してきていた。
だがそんな中、教育方法や実技についていけない劣等生たちが現れる。
彼らは、優等生にとって邪魔以外の何者でもないので、ブラックスクールに送られるという。ただ、ウィリアムズ校はここ数十年間一度もブラックスクールを利用したことはなかったという。
「ようは俺らは経歴に大きな傷を残した劣等生っていう訳だなぁ」
誰かがまた皮肉げに言った。
ある者は物珍しく校舎を見渡している。
ある者はこれからどうなるのか嘆いている。
「やぁやぁやぁ劣等生諸君!」
そんな中、ひときわ明るい声でやって来たのは真っ赤な髪が目立つ美しい女性だった。
全員ポカンとし、まじまじとその女性を見つめた。
サラサラとなびく赤髪にギラギラと輝く金目。一度見たら忘れられない姿をしていた。
そんな彼女は手を耳に当て、
「さぁアタシの名前は……!?」
と瞳を輝かせた。
「えっと、どちら様ですか?」
困惑しながら全員恐る恐ると彼女に問いかけた。
途端にキラキラと子供のように輝いていた瞳は、彼らの顔に負けないぐらい暗くなった。
「え、ちょっと待って。アタシのことを知らないの? あの『終末兵器』の新郷イズムだよ?」
「誰……?」
そう言うと同時に、女性は崩れ落ちた。
「今の教育どうなってんだよぉおおおおおおお!」
「は、はぁ」
「アタシは世界最強の暗殺者さんだよ!? しかも組織の結構偉い人なんだよ!」
テストに出るくらいの超有名人だよぉおおおおと悶えながら、床をゴロゴロと転がった。
床に積もったホコリが宙に舞い、ヴェックショイとヘビメタバンド並のくしゃみしながら転がり続けた。
「改めて自己紹介するね……。アタシはイズム・新郷。今日からアンタらの先生だよ」
「先生?」
ピンク髪の少女がきょとんとした顔でイズムを見た。
それもそのはず。ブラックスクール送りの劣等生なぞに先生がつく訳ないのだ。
「じゃあこれから宜しく頼むよ……。有名人の名も知らぬ劣等生たち」
恨みがましい目でこちらを睨むイズム。
(取り敢えず色々言わせてくれ―――!!)
少年少女たちは心の中で大絶叫したのだった。




