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■ 第7章 結論:人類進化の終着点と日本の位置づけ

・ 日本は誠実性・ストレス耐性・非暴力の最終形である


 本書を通じて検討してきたように、日本社会に見られる極めて高い誠実性、ストレス耐性、そして暴力の忌避傾向は、単なる文化的現象ではなく、深層において神経生理学的な基盤をもつ進化的適応の結果であると考えられる。国際的な数値比較においても、日本人は共感性、非言語的コミュニケーション能力、ストレスへの耐性、攻撃性の低さといった指標において、世界の中でも際立った特徴を示している。これらは、単一の社会制度や宗教観によっては説明しきれない現象である。


・ 自己家畜化の深化において世界唯一の例外的位置


 ホモ・サピエンスの進化過程において自己家畜化が果たした役割はすでに家畜化実験や神経研究によって確認されているが、日本社会はその方向性を極限まで深化させた、いわば「究極の家畜化型社会」として例外的な存在である。その理由は、日本が他国と異なり、歴史的に戦いに敗れた弱者や敗者たちが流れ着き、淘汰されることなく共存する環境が維持されたことにある。


 このような状況は、ソ連の家畜化実験において穏やかで従順な個体同士を交配させ続けた過程と類似しており、家畜化が進行するための生物学的・社会的・環境的条件が日本列島において自然発生的に揃っていたことを意味する。他国では、弱者は淘汰され、強者が支配し、自己家畜化は部分的に留まったが、日本においては「家畜化実験とほぼ同一の環境」が長期にわたって形成・維持されたため、神経的・行動的な変化が極限まで進行したのである。特定の宗教的戒律や法制度による強制ではなく、共感・協調・非攻撃性といった神経的特性が無意識的に行動を律している点が、日本の社会秩序と誠実性の持続性を説明する鍵となる。


 このような社会が成立した背景には、地理的孤立、豊かな自然資源、長期的な安定した定住文化、そして多様な遺伝的起源を持ちながらも他者を受け入れる社会構造などが関係している。つまり、日本列島という環境は、他の地域では淘汰された弱者や敗者の集団が共存することを可能にし、その中で穏やかで協調的な特性を持つ個体が選択され続けた結果、生理的・行動的なレベルでの家畜化が飛躍的に進んだのである。


・ 誠実性を文化ではなく神経構造の結果とみなす必要性


 これまで誠実性や秩序意識はしばしば文化論・教育論で語られてきたが、本書の議論が示すように、それは日本人の神経構造、ホルモン分泌傾向、社会的認知機能の特性に根ざしている。セロトニンの濃度、ストレスホルモンの抑制、島皮質の活動の活発さなどが、道徳的・規範的行動を支える生物学的基盤として機能していることを踏まえると、「文化的行動としての誠実さ」ではなく、「進化によって獲得された神経行動的特性としての誠実さ」として捉える必要がある。


 これは単に日本人論に留まらず、人類の進化の一つの方向性を考察する上で、重要な手がかりとなる。


・ 今後の研究課題と国際的対話への示唆


 この理論が真に確立されるためには、さらなる神経科学的・遺伝学的研究、および国際比較研究が必要である。特に、他国における誠実性の行動パターンとその生物学的基盤との比較、また異文化間における共感性の発現様式などを通じて、より普遍的な理論へと昇華することが望まれる。


 同時に、日本がもつこの特異な進化形態を「優劣」としてではなく、「人類の多様な進化の一つの帰結」として理解し、国際的な共存と対話の基盤とする姿勢が求められる。


・結論:


 脳や生理学的変化がここまで顕著に見られることから、自己家畜化が始まったホモ・サピエンスの歴史において、その極限形、すなわち「誠実性を内面化し暴力を忌避する存在」としての最終形態が日本人であるという仮説が導かれる。この日本的特性は、単なる文化の産物ではなく、生存戦略として進化の果てに到達した「人類の完成形のひとつ」として、今後も重要な考察対象であり続けるだろう。


 家畜化という言葉に抵抗を覚える向きもあるかもしれないが、それは人間が「攻撃性の抑制」や「共感の発達」などを通じて獲得してきた高度な社会性の進化を否定するものではない。むしろ、ホモ・サピエンスが知性を持ち、器用さを獲得し、道具を使いこなすようになったその根底にも、自己家畜化のプロセスが存在していたとすれば、これは人類の進化において不可避かつ本質的な道筋である。


 そして、日本社会に見られるような誠実性の極致に至った姿こそ、その進化の最も高度な到達点のひとつと考えられる。すなわち、日本人はホモ・サピエンスが歩んできた自己家畜化の道を、世界でも稀に見る形で完成させた存在であるといえる。


「弱肉強食」という概念は、ダーウィンの理論に対する誤った解釈が広まった結果として生まれたものである。ダーウィンが提唱した「自然淘汰」ではなく、後に取り入れられた「適者生存」という表現が、「強い者が生き残る」という誤解を生み、「弱肉強食」という概念へと繋がった。


 チャールズ・ダーウィンは著書『人間の由来』(原題:The Descent of Man, and Selection in Relation to Sex, 1871)において、以下の趣旨の記述を残している。


「愛国心、忠誠心、従順、勇気、そして共感の精神を強く備えた多数の成員を含む部族は、ほかの多くの部族に対して勝利を収めることができるだろう。そしてこれは自然淘汰なのである。」

(原文:"A tribe including many members who, from possessing in a high degree the spirit of patriotism, fidelity, obedience, courage, and sympathy, were always ready to aid one another and to sacrifice themselves for the common good, would be victorious over most other tribes; and this would be natural selection.")


 既にお気付きかと思うが、この観点から見ると、誠実で利他的、協力志向の強い日本社会は、ダーウィンのこの仮説に極めて近い特徴を有していると言えるだろう。つまり、日本人社会は、高度な共感的個体の密度、他者への援助や社会的規範の内面化、長期的視野での集団維持を備え、ダーウィンの言う「最も繁栄する集団」のモデルに極めて近い存在だ。


 そして本来は愛国心も強かったはずだが、一部の日本に否定的な勢力は、この中でも「愛国心」を標的とし破壊しようとする。


 負けてはいけない。

 我々は、この本質的な価値を手放してはならないのだ。


 そして、ホモ・サピエンス自己家畜化の章で述べたが、協力的コミュニケーション能力は革新技術を生みやすくなる。逆に言えば協力的コミュニケーション能力の低い殺伐とした国では革新技術は生み出せない。だからこそ日本人は技術においても他の追随を許さないものを数多く作り出しているのだ。



 私はこれまでの記述からどうやら日本人であると推測できるだろうが、決して日本人を賞賛したり、良い事を並べて褒め称えたい訳ではない。仮にそうしたいのであれば日本人は弱者、敗者の集まりであるとか、家畜化などというネガティブな表現の話を構築したりはしないだろう。客観的事実、そして幾人かの人類学者が既に気が付いているであろうその事実の理由を自身で知りたいと思考しただけである。


 私自身の本音を少し明かせば、行き過ぎたインバウンド、移民の多さなどによるこれまでに無い問題が多発している事もあり、余り日本人を称賛したくはないのだが敢えて最後に述べる。

 

  『人類の答えは日本人にある』



以上

神功 任那

2025年8月吉日


出典

青土社 キツネを飼いならす リー・アラン・ダガトキン、リュドミラ・トリート著 高里ひろ訳

白楊社 家畜化という進化 人間は如何に動物をかえたか リチャード・C・フランシス著 西尾 香苗訳

白楊社 ヒトは〈家畜化〉して進化した ブライアン・ヘア、ヴァネッサ・ウッズ著 藤原多伽夫訳

講談社学術文庫版 人間の由来(上下巻) チャールズ・ダーウィン著 長谷川眞理子訳

WIKI  Y遺伝子ハプログループ


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