表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

■ 第5章 日本人における家畜化的特徴の観察と進化の深化

( 外見・行動・神経生理に見られる変化の蓄積)


・外形的特徴:丸顔・小顔・ネオテニー


 筆者がかつてアメリカを旅行した際、球場でビールを買おうとして年齢確認を求められたことがある。実年齢より遥かに若く見られ、身分証の提示を求められるという経験は、一度ならず複数回あった。実際に海外に行った日本人の多くが、同様に「年齢不詳」に見られるという体験を語る。


 これは単なる印象ではなく、日本人に特有の身体的特徴が背景にあると考えられる。


 家畜化症候群に見られる代表的な外見変化には、顔の丸み、顎の縮小、歯列の小型化、毛色や体毛の変化などがある。日本人には、特に丸顔で小顔、目が大きく、幼児的な顔立ち(ネオテニー)が顕著に見られる。これは性成熟後も幼形成的な特徴を保持する傾向であり、社会的警戒心を下げ、集団内の協調性を促進する。


 ホモ・サピエンスの研究において家畜化症候群のネオテニーの確証はなかなか得られてはおらず一部の説に留まる。しかし日本人には明らかなその傾向が見られるのである。


 顔立ちだけでなく、日本人は身長が比較的低く、手足も短い傾向がある(特に手)。これは、同じアジア圏に属する朝鮮民族が比較的大柄で手足が長いことと対照的である。また、声のトーンも比較的高く、女性は特に幼さを感じさせる声質を持つ者が多い。

 日本に時々いる大柄な人も、童顔である事が多い。


 かつての日本は繁殖力が高く、戦後の人口増加にも見られるように、家畜化によって穏やかさと同時に子孫を多く残す生物的傾向が維持されていたと考えられる(現在は別の社会要因により減少中)。


 また、日本の男性に顕著な傾向として、豊満な胸に魅力を感じるという性的嗜好がある。これは生物学的に言えば母性への憧れであり、ある意味で成体に憧れるよりも「依存対象」への接近である。これは、ヨーロッパの古典絵画で若さの象徴として小さな胸が理想とされた傾向と真逆の価値観であり、文化的にも生物学的にも、日本人男性の精神年齢の若さやネオテニー的傾向の裏返しとも言えるだろう。



・ 内面的特性:攻撃性の抑制と集団協調性


 外見とともに、行動面でも家畜化の進行を示す兆候は明らかである。特に日本人における攻撃性の抑制と集団内での高い協調性・秩序感覚は際立っており、これは文化的要因だけでなく進化的適応としての可能性を含んでいる。


 他人を強く非難したり、大声で争うような行為は社会的に強く忌避され、「空気を読む」「和を重んじる」といった行動様式が深く根付いている。これは、長期間にわたって攻撃的個体が排除され、穏やかで共感的な気質が集団内で受容・選抜されてきた結果であると見ることができる。


 なお、犯罪発生率の国際比較や、非暴力性の実証データについては第6章以降にて詳述する。



・ 社会行動としての観察事例と文化的表出

 良く言われている日本人が誠実である事例を簡単にカテゴリー分けして以下に記載する。


1. 正直・道徳的行動

 落とし物が高い確率で交番に届けられる(例:財布・現金・スマホなど)

 無人販売所で代金をきちんと置いていく

 終電後に酔って寝込んでも盗難や暴力に遭わない場合が多い

 飲食店やタクシーで支払い誤差を自ら申告・訂正する

 無人の寺や神社の賽銭箱も盗まれにくい


2. 利他的・公共意識

 地震・災害時に略奪が起きない/助け合いが自発的に発生する

 列に無言で並び続け、割り込みがほとんど起きない

 車内・公共空間で他人に配慮した静かな振る舞い(通話を控える、咳エチケット)

 子供や高齢者に対して自然に手を貸す

 障害者への配慮、スロープの設置、電車、バスの乗り降り

 通学児童の列を車が止まって待つ

 児童は渡らせてくれたことにお辞儀でお礼をする

 誰にも邪魔されない空間(電車の中など)

 ありがとうやすみませんを常に言い合う

 道路工事などで通行人に深く頭を下げる姿勢が常態化


3. 勤勉性・責任感(約束の遵守)

 時間厳守(5分前行動)や納期の厳守が当たり前

 清掃当番や職務上の雑務も責任感を持って遂行する

 電車が2分遅れただけでも謝罪アナウンスする

 雪の日や台風時でも出勤・登校が続く

 自営業者が無休で店を開け続ける傾向がある

 宅配便や郵便の再配達を何度も無償で行う


4. モノ・空間への配慮

 トイレや公共の場をきれいに使う、使ったあとに拭いておく

 自宅でゴミを分別し、ルールを守ったごみ出しを徹底する

 サッカー、野球観戦後の自発的清掃

 ホテル利用時の後に清掃する人の為の整理整頓 

 シェアスペースや職場で他人が使いやすい状態を保つ工夫をする 


5. 無宗教でありながら高い倫理意識を保つ

 宗教に頼らずとも倫理的に正しいことを内面で判断し、自然に行動に移す

 神罰や報酬を前提とせず、「見ている人がいなくても」正しくあろうとする

 信仰に依らない良心的行動の継続性が社会全体に定着している


6.サービス、ホスピタリティ

 レストランで出て来るおしぼり 

 何処の料理の配膳も向きを揃え丁寧に椀、箸など全てが正確で音を立てずに行われる

 深夜でも変わらないコンビニレジの丁寧な対応

 会計のお釣りを両手で落とさない様に丁寧に渡す

 お土産包装など、渡す相手への心遣いが前提

 タクシー乗車時に自動でドアが開閉され、運転手が丁寧に応対する

 道を聞くと、この人は行けないかもと思われると自分とは逆方向なのに一緒に案内までしてくれる

 海外の様な自由度のない選ぶ事の出来ない日本の定食はプロのバランスが取れたより良い食事

 日本人の敬意は過剰なほどで、助けてもらったのに助けた時間がかかった事を謝罪までする



 勿論、日本人全員がそうであるとは言わないが、これらの傾向はあるだろう。

 これは日本人が内面に抱える家畜化的進化の影響が、日常の社会行動にも顕著に表れていると言えるだろう。


 例えば、宅配便や郵便の再配達を何度も行う事は非効率的だと最近は置き配に変わる傾向がある。

 そして置き配が盗まれる事は極度に少なく、あれば話題やニュースになるレベルだ。


 アメリカと比較すれば、アメリカでは置き配が一般的だが、盗難も非常に多く、「ポーチ・パイレーツ(玄関泥棒)」と呼ばれ社会問題化している。年間数千万件の盗難が発生していると推定される(2022年:推定2,600万件)。


 英国・フランス・ドイツなど欧州主要国では盗難の危険性が高く、置き配は行われない。郵便受け荒らしやアパートの共用部での盗難も頻発しているからだ。


 中国や韓国では配達制度自体は発達しているが、置き配ではなく宅配ボックス利用が主流である。

 特に中国では盗難やすり替えを前提として撮影証拠と荷物確認が義務化されることもある。この場合、防犯カメラが無ければ泣き寝入りになることが多い。


 中東・東南アジア・中南米では国や地域によって大きく異なるが、置き配は高リスクとされ実施されない。

 高額商品は基本的に手渡し・本人確認・事前連絡が必要であり、都市部の集合住宅でさえ盗難・詐取が日常的となっている。


 仮に置き配が盗まれる事がニュースになる国が日本以外にあるとすればそれは数えきれない程のニュースだろう。



 地方に広く存在する「無人販売所」は、販売者が不在であっても買い手が料金を正しく支払うという信頼に基づく仕組みであり、世界的に見れば極めて稀な現象である。

 世界で見てもかなり特殊な小さな共同体でしか見られない事であり、全国的にかなりある事は常識的にはあり得ない話だ。



 また、「落とした財布が高確率で交番に届けられ、中身も戻ってくる」という事例は、国際的な調査でもたびたび話題となっており、日本社会の秩序維持力と誠実性の証左とされる。


 ここで注意が必要なのは、ある種のイデオロギーを持つ方は金額で日本のダメさを強調する事がある。

 これは税金逃れなどの大金が時々見つかる事があるがこれらは返金される事はまずない。

 なのでこれらが発生する際には返金金額率としては70%程度になるデータもあるが、実際に財布が帰って来るのは93%であり、世界最高水準である事は間違えない。


 加えて、外国人から特に驚かれる事例として、電車の乗り場で自然に列が形成され、車内はほとんど私語がなく静寂が保たれている点がある。近年では咳エチケットや通話マナーである。これは流行り病以降に強化されている。地域差こそあるがエスカレーターでは無言のうちに片側を空けるという、暗黙の了解が日常的に守られている。これはエスカレーター業者に言わせればダメな行為であり、更に自治体では片側を歩く行為を禁止する動きもある。

 しかしこうした秩序ある行動は、監視や強制、報酬なしに実現しており、世界的に見れば非常に特異な現象である。


 また、日本の公共交通機関は時間の正確さでも知られており、電車が2分遅れただけでアナウンスと謝罪がなされるという水準の高さは、他国ではまず見られない。時間を守るという社会的な信頼は、個々人の誠実性の連鎖によって支えられている。


 災害時の行動にも日本人の特性が顕著に表れる。地震や台風などの危機的状況においても、人々は整然と列を作り、混乱や暴動に至ることなく助け合いながら避難行動をとる。このような秩序だった行動は、世界の多くの国では実現が難しく、日本社会に深く根付いた共感性と誠実さの表れである。列に自然と並ぶ行動や、割り込みを忌避する規範意識もまた、無意識的な「調和の内面化」の結果であり、文化的というよりも「社会的本能」のようにすら見える。

 中には自らでなく他人の個人所有物まで分配しようとする無茶な話もあるが、それは行き過ぎだろう。


 日本人特有の「空気を読む」「間を取る」「沈黙を尊重する」といった非言語的な社会同調行動も注目に値する。これは、言語以外の情報(表情、距離感、呼吸のタイミングなど)を高精度で認識・処理する能力と関係が深く、後の章で紹介する通り、日本人は非言語コミュニケーション能力の国際比較で非常に高いスコア(平均94.1)を示している。


 こうした行動様式は、単に教育や文化の結果ではなく、長い進化の中で内面化された「共感性」「同調性」「恥と道徳の感受性」といった神経生理的な特性に支えられている可能性が高い。



 特に「恥」に対する感受性について、日本人はしばしば高いとされるが、これは他国(たとえば中国や韓国)に比べて性質が異なる。中国や韓国では「恥をかかない」ことが重視され、場合によっては嘘をついてでも体面を保とうとする傾向が見られるが、日本人はそうした虚偽的手段を取ることは少なく、むしろ「恥は一時のもの」として受け入れる傾向が強い。これは監視社会などの道徳的規範の強制というよりも、自己の内側に形成された同調圧力による「無意識的な行動制御」となって表れるものである。その為、日本人が誠実であることの理由として「恥の感受性」が主因であるとは言いがたい。


 日本人は恥を感じたからといって行動を偽るのではなく、むしろ誠実さを貫くことを当然とする傾向がある。したがって、誠実な行動の背景には、恥の回避ではなく、共感性や社会的協調を重視する文化的・進化的な基盤があると考えられる。これらは、他者の存在が目の前になくても機能する特性である。たとえば、スポーツ観戦後に観客席の清掃を自発的に行うといった行動も、誰かに見られているからではなく、次に使う人への共感と配慮によって動機づけられている。

 そう日本人なら恥は笑い話に変えれば良いではないか。


 これら一連の特徴は、日本人が「誠実である」とされる実体を、進化心理学・社会神経科学的に説明しうる現象として位置づけるものである。とりわけ、宗教的信念や明示的な道徳教育に依存せずとも高い道徳意識と誠実な行動が自然に発現するという日本人の特性は、自己家畜化の進化過程によって内面化された「当たり前の誠実さ」であると考えられる。このことは、本書の最初に提起した「神を信じず、見られていなくても誠実である」という問いに対する、進化論的な一つの解答となりうる。


 つまりそれは神罰を恐れてでもチップを期待してでもないのだ。



 日本人が使う言語表現にオノマトペが存在する。

 世界的に存在しない訳ではないが明らかに日本はオノマトペが多すぎるのだ。


 これは擬音に限らず様々な物が感覚的に共有されるもので共感的コミュニケーション能力が高いからこそこんな事態になっていると言えるだろう。感覚的イメージの共有、気持ちの共有など多岐にわたり他の言語では表現の難しい事まで細かく行われるのだ。

 漫画の背景に良く書かれるがこれも幼い頃から所謂赤ちゃん言葉にまで多様されるこれも共感力によるものなのだ。

「手を綺麗に洗おうね」ではなく「手をゴシゴシしようね」と感覚的に日本人は育つのだ。



 文化進化論の権威、ハーバード大のジョセフ・ヘンリック教授はWEIRDと言う概念を提唱しこれに当てはまらない日本の特異性に驚くが、ヘンリック教授は「文化進化的に日本は異例である」と言う。


特にアメリカとの違いを

 独立的自己観の弱さ:日本人は相互依存的な自己観が強く、個人主義が弱い

 道徳判断の文脈依存性:普遍主義よりも状況依存的判断が優先されやすい

 低い他罰傾向:ミスを社会構造のせいにせず自己内面で反省する傾向が強い


 などとしているが、その根源的理由については自著『The WEIRDest People in the World』などでも明確な説明をしていない。つまり、「文化」だけでは答えが出せていないのだ。


※WEIRD 

W: Western(西洋)

E: Educated(高学歴)

I: Industrialized(産業化された)

R: Rich(裕福な)

D: Democratic(民主主義的な)


 つまり彼の言う進化と別の道を歩んだ日本は彼の分類では当てはまらないのだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ