第5話「孫」
俺は門番!
お昼にじいさんに飯を届けてくれる女の子がいるのだがそれが何とじいさんの孫だそうだ。じいさんに似ずに可愛い。俺のめちゃくちゃタイプだった。
「お雪ちゃん。こんにちは」
「こんにちは」
「大変だね。いつもこんな爺さんに飯を届けないといけないから」
「そんなことないですよ。これくらいなんとも無いです。それではこれでおじいちゃん。またね」
とっても良い子だった。俺にも手を振って帰るお雪ちゃん。
「じいさんお孫さんを僕にください」
「嫌じゃ。低収入、低学歴、低脳の三拍子のお前にはやれん」
「俺は真剣なんです」
「嫌じゃ。それにあの子は年収三千万以下の男とは付き合えんと言っとったぞ」
「あの子がそんなこと言うかー!」
「とにかくお前では無理じゃ」
「もうじいさんには頼まない。直接交渉するから」
「勝手にせい」
次の日のお昼。
「お雪ちゃん仕事が終わったらご飯食べようよ」
「貴様どの口がそんなことをいっておるんじゃ」
「なんだ。じじい。お前には関係ないだろうが。じじいは縁側でお茶でも飲んでな。俺はお雪ちゃんとオープンテラスでお茶するんだ。ねー。雪子ちゃん」
ぶち。
じいさんが切れる音が聞こえたような気がした。
「貴様。それ以上! お雪に近づくな。穢れるじゃろ」
「なんだと。じじい。やるか。おい」
「お前。わしを舐めておるじゃろう。これでもわしはかつては、蛤御門の門番もしておったこともあるのじゃよ。お前とは年季が違う」
「アホじじいが……。じじいこそ俺を舐めるな。まあ勝負してみれば分かるだろう。俺のすごさがな。後でほえ面かくなよ」
「それはこっちの台詞じゃ」
俺は手に持った棒を握りしめてじいさんと対峙した。じいさんの強さは噂では聞いていたがそれは大昔の話だ。あんな棒が杖に見えるじいさんが俺よりも強い訳が無い。
「行くぞ! はあああああああああああああああああああああ!」
「望む所じゃ! くわあああああああああああああああああ!」
二人して大音声をあげて躍動した。この勝負殺るか殺られるかだ。覚悟しろ。じいさん。
「お前ら! うるせえぞ! 今大事な客が来ているんだ。黙ってろ!」
「は! 申し訳ございません」
「は! 申し訳ございません」
怒って出てきた主人に二人してすごい勢いで土下座した。
門番の一日は続く。
ご拝読ありがとうございます。
自分はベタですがこういった落ちが好きなのでまた使ってしまいました。次はもう少し違った落ちを考えます。
よろしくお願いします。