第3話「小僧」
俺は門番!
毎朝門にやって来る小僧がいる。それなりに小奇麗な格好をしているので裕福な家の子供なのだろう。とにかく俺たちの邪魔をしようとする。
「ねえ。ねえ。何しているの?」
「そういうことはとなりの爺さんに聞け」
小僧はとてとてとじいさんの方に駆けていった。じいさんなら無駄に年を食ってはいないだろうからうまく追い返してくれるだろう。
「そういうことは隣の馬鹿なお兄さんに聞くんじゃな」
どうやらじいさんは無駄に年を食っていたようだ。使えないじいさんだ。小僧は爺さんに言われたので素直に俺の方まで再び駆けてきた。
「ねえ。馬鹿なお兄さん」
「俺は馬鹿じゃねえし、そういうことはお母さんにでも聞いてこい」
「うん。そうするよ。ばいばい。馬鹿のお兄さん」
「だから俺は馬鹿じゃねえって」
小僧は意外とあっさりといなくなった。横でじいさんはにやにやしていた。どうやらじいさんの策略にはまったらしい。くそじじいが覚えていろよ。
次の日。
再び小僧が来た。うれしそうに俺の所まで賭けてきてぺこりとお行儀よくお辞儀をしてこんなことを言い出した。
「お母さんがあの門番の人は貧乏人だから近づくと貧乏がうつるから近寄っちゃ駄目って言っていたよ」
「貧乏がうつる訳ないだろうが!」
「確かに佐助は貧乏臭いからのう。うつるかもしれん。しかし、傑作じゃな。ほっほほほ」
じいさんは大笑いしていた。自分も貧乏カテゴリーのフォルダに入っているとは知らずに。
「お前の母親にこう言え。お前がどれほどの金持ちか知らないが俺の主人には適わないだろう。身の程を知れ。どうせ。半端な金持ちだろうが。勝負してやるから今度。母親を連れて来い。相手してやるからよ。どうだ。覚えたか」
「うん。分かった。伝えておくね」
小僧はまた素直に去って行った。やけに素直なので気持ちが悪い。少しは俺の胸糞悪い気分が晴れたので気持ちが良かった。
「おい。よいのか」
「いいって。いいって。どうせ大したやつじゃないだろ」
「大したやつじゃないってあの小僧確か。俺たちの主人の息子だぞ」
「……。嘘だろ?」
「嘘言ってどうするんじゃ。それよりもお前主人のご子息も知らないとはアホじゃな」
「じじい。それを先に言えよ」
俺は小僧を追いかけた。何とか屋敷の中に入る前に食い止めなければいけない。俺は自分の門番生命をかけて小僧を追った。
門番の一日は続く。