第15話「門の一日」
僕は門。
僕はご主人様の屋敷を守っている門だ。自慢では無いけれどこの辺りの門の中では一番立派だと思っている。ご主人様が門だけは立派にしたいという意向でかなりお金をかけて趣向を凝らして作ってくれた。
ただ僕の前には僕の素晴らしい門に似合わない門番が二人立っている。僕は彼らを老いぼれと馬鹿百二十パーセントと呼んでいる。
老いぼれは昔、かなり有名な門を守っていたという話だが、僕から言わせるとただのじじいだ。いざという時には果たして僕を守ってくれるのか甚だ疑問だ。最近はかなりの割合で休んでいる。理由は腰が痛いという情けない理由だ。ご主人様は人がいいので大目に見ているが、僕がご主人様なら即刻クビにしている。
もう一人の馬鹿百二十パーセントは体だけは頑丈だがとにかく馬鹿だ。この間は、馬鹿百二十パーセントのおかげで大切な看板を取られてしまった。あの看板はある地域で数本しかはえないという貴重な木で、それにご主人様の知り合いの有名な書道家に書いてもらった代物だ。とても値段が付けられるものではない。それを馬鹿百二十パーセントのおかげであっさりと取られてしまった。
ご主人様は気づいているようだったが何も言わなかったようだ。僕はそれに大してはかなり納得が言っていない。変な看板をかけられて虫唾が走る。僕は腹いせにこの間、馬鹿百二十パーセントの右手の親指を挟んでやった。馬鹿百二十パーセントはものすごく痛がっていた。良い気味だ。
馬鹿百二十パーセントはこの僕を燃やすと言っていたが、それだと馬鹿百二十パーセントは失業するではないかと僕は思った。やはり馬鹿だ。
今日も二人はやる気がない。老いぼれは寝ているし、馬鹿百二十パーセントは女の人が通るたびにD、A、Cと訳の分からない単語をつぶやいている。気味が悪い。早くいなくなってくれないかなと思う。
老いぼれが起きたかと思うと、馬鹿百二十パーセントとお昼まで女と男どっちが多く通るかかけていた。相変わらずくだらないことを思いつく天才だ。一週間に五回はこの遊びをしている。よく飽きないものだ。
ちなみに今日は男が多く通ったようで老いぼれが勝った。おやつのイチゴ大福を取られて馬鹿百二十パーセントは悔しがっていた。くだらないと僕は思った。
僕は冬になったら屋根から氷を落としてやろうと考えている。その氷を二人の頭に直撃させてうまいこと当たって二人がいなくなればいいなと思う。とにかく冬が早くくればいいなと僕は冬を心待ちにしている。
門の一日は続く。