第11話「生涯門番!」
俺は門番!
何とかケガも治って晴れて門番に復帰することができた。それよりも最近思うのだが門番じゃなかったら俺は何をやっていただろうか。
「おい。じじい。どう思う?」
「わしは物心付く前から門番じゃったからその質問は愚問じゃな」
「へー。すごいねー」
「お主。信じとらんじゃろ」
「この嘘つきじじいがばればれなんだよ」
「嘘ではないぞ。わしの親父もな。門番でな。物心付く前から親父に連れられて門を守っておった」
そう言って遠い目をするじじい。じじいがじじいでは無かった時を思い出しているのだろうか。とてもじじいが子供時代のことなど想像できないが。
「それでじじいも親父に憧れて門番になったって訳か」
「お主。よくわかるな。それがこの門なんじゃ。この門を守れるのは二人だけ中々空きが出なくてわしは何年も待ったもんじゃよ」
「俺は知り合いのつてで入っただけだけどよ」
「お前の前の門番もそりゃあ立派な門番だったぞ。お主とは違って不満も漏らさず黙って立っておった」
「そりゃあ。ご立派なことで」
「あんなことがなければまだそこに立っておったのにな」
「何かあったのか」
じじいはもったいぶってたばこを吸う振りをする。
「いや。止めておこう。今更言っても仕方がないことじゃ」
「おい。じじい。中途半端なことで止めるな。気になるじゃねえかよ」
「もう昔のことだ。それに前の門番にも悪い」
「もういないやつのことじゃねえかよ。いいじゃねえか」
「いや。あまりにも可哀想じゃ。いくらわしでもこればかりは」
じいさんはそう言うと今まで見たこともない悲壮な顔をして黙り込んだ。いったい前の門番がどうしたと言うのだろうか。もしかしたら俺がライオンに襲われたように悲惨な事件が起こったのかも知れない。
そこにやたらと高そうな着物を着た羽振りの良い30代くらいの男がお付きの者を2人程連れてやって来た。
「おい! 久しぶりじゃねえかよ。じいさん」
「げ! 元気そうじゃな」
「当たり前だろ。富くじがあったんだからな。うっはうっはよ。じいさんも門番なんて辞めちまえよ。門番なんてやってられねえだろ。それか俺が雇ってやろうか。またな」
「今のは誰だ」
「さあ誰じゃろうな。最近物忘れがひどくてな」
「じじい! 今のが前の門番だろ! 適当なこといいやがって」
「うるさい! こんな嘘に引っかかるお主が悪いんじゃろうが。罰としてわしに金を払え」
「何言ってやがる。詐欺みたいな話しやがって。このやりきれない気持ちをどうしてくれるんだ」
「わしが知るか。わしだってむかついて仕方が無いんじゃ。何が門番など辞めろだとふざけるなよ」
「おい。じじい。俺にそんなこと言ってどうするつもりだ」
「こうするだけじゃ!」
じじいは棒で俺の頭を叩いた。
「痛えなあ。やりやがったな」
「はっははは。貧乏人は心が狭いなあ」
また通りかかる前門番。お前どこかへ行けよ。頼むから馬車に轢かれてくれ。
「誰のせいだと思ってるんじゃ!」
「お前誰のせいだと思ってるんだ!」
俺たちは前の門番を追いかけた。せめてこの棒で叩きたい。その一心だった。
「じゃあな。貧乏人どもー」
「この野郎が待ちやがれ。そして、俺に飯を奢ってくれ」
「お主ただで済むとおもうなよ。奢られるのはわしじゃ。待ってくれ」
俺たちは前の門番をとりあえず飯を奢ってもらった後で、ぼこぼこにして川に捨ててやった。気持ちよく戻って来たが主人に怒られたのは言うまでもない。
門番の一日は続く。