第1話「しりとり」
俺は門番!
あるお屋敷の門番をしている。
今日も相方と一緒に門を開閉して門をゲートキープしている。
仲間内ではゲートキープ佐助で通っている。何かかっこいいので俺も気に入っている。
屋敷の顔とも言える門を守っているので派手な仕事と思われがちだがここだけの話だが非常に地味な仕事だ。
基本的には立っているだけでお金がもらえる詐欺みたいな仕事だ。でも実際はただ立っているだけという方がかなりつらい。
それならば多少きつくても動いている方がいい。
なんだか良く分からないひのきの棒のような物を持って真面目な顔をして立っていなければならない。
時間は九時から十七時まで最後には門を閉めて終了だ。
二人一組で門番をするのだが俺の相方は彦兵衛と言ってこの道三十年のベテラン門番だ。爺さんで無口なやつだが俺にとっては大事な相棒だ。
基本的には暇なので彦兵衛としりとりをやることにした。
「わしから行くぞ。りんご」
「ゴーダチーズ」
「寸銅」
「ウォッシュチーズ」
「逗子」
「シャウルスチーズ」
「頭脳」
「ウェンズリーデールチーズ」
「頭陀袋」
「ロシュバロンチーズ」
「またずか。ず。ず。ず。ず。それになんじゃ。チーズばっかりじゃな」
「なんだ。降参か」
「いやまだじゃよ。ズラ」
「ランカシャーチーズ」
「またずか。ず。ず。ず。ず」
「降参か。意外にあっさりだな。じいさん」
「待て。まだじゃ。今考えておる。ず。ず。ず。ず」
「続きは午後だな」
午後一時頃。
「ず。ず。逗子は言ったしのう。うーむ」
「いい加減諦めたらどうだ」
「ふざけるな! ここまで来たら諦められる訳がないじゃろ。待っておれ。今すごいのが閃く所じゃから」
「どうぞ。ごゆっくり」
午後三時頃。
「ず。ず。ず。ず。あるはずじゃ。何かあるはずじゃ。なぜ思いつかん」
「もういいだろ。俺の負けでいいからさ」
「貴様。わしを馬鹿にする気か! 待っておれ。今思いつきそうなんじゃ」
「はあー。しりとりなんてやるんじゃなかった」
午後五時。閉門時間。
「ずだ。ずか。ずえ。ずおし。ずおしはないな。ず。ず。ず」
「爺さん。閉門するぞ」
「ずま。ずれ。ずむ。ずわ。ずわ。ずわ。む。何か思いつきそうじゃ」
「もう俺帰るからな。一生やっていろ。ハゲじじい!」
夜。
「ずわ。ズワイガニ。お。これじゃ。これじゃ。おい。佐助。どうだ。思いついたぞ! ありゃ。どこいった。佐助―」
門番の一日は続く。
ご拝読ありがとうございます。
ちょっと視点を変えて門番の話を書こうと思います。短い話で楽な気持ちで読めるようなものを目指したいと思います。
よろしくお願いします。