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ぼっちプレイヤーなわたしが最強な訳がないじゃないですか  作者: YY
第3章

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第28話 Clear

 まずは、挨拶代わりの一撃。


「はぁッ!」


 射程ギリギリに到達すると同時に、【飛燕翔閃】を放つ夜宵。

 見た目は今までと何も変わらないが、威力は別次元。

 何より、スノウの為にも勝つと言う、気持ちが乗っている。

 当然、それが性能に影響を与えることはないが、彼女の戦意と集中力は過去最高になっていた。

 そして遂に、ダークネス・デストロイヤーが動き出す。

 飛来する真空刃に向かって左手を突き出し――受け止めた。

 まさか素手で受け止めるとは思っていなかった夜宵たちだが、3人はすぐさまそうではないと見破る。

 ダークネス・デストロイヤーの手のひらが赤く光っており、Gunちゃんとアンジェリカを仕留めた光線と同質の力を感じた。

 それと同時に、次の展開を読む。

 赤い光が強くなり、夜宵に向かって光線が放たれた。

 視聴者たちは、画面の向こうで悲鳴を上げたが――


「それは、先ほど見ました」


 Gunちゃんとアンジェリカの犠牲を無駄にしなかった夜宵は、紙一重で躱しながらカウンターの【絶影瞬駆】を発動。

 相手は強固な耐久力を誇る、ダークネス・モンスター。

 更に、【絶影瞬駆】の威力は決して高いとは言えない。

 それにもかかわらず、彼女の一閃は目に見えてHPゲージを減らした。

 これが、今の夜宵。

 正真正銘、全ての力を曝け出した、完全無欠の状態だ。

 とは言え、ダークネス・デストロイヤーが手強い相手なことに違いはない。

 懐に入って来た夜宵に、ダークネス・デストロイヤーは、超速で戦斧を振り下ろす。

 重装備とはとても思えない速さで、並のプレイヤーなら何が起きたかもわからなかっただろう。

 しかし、欠片も油断していなかった夜宵は、軽くバックステップを踏むことでやり過ごした。

 視聴者たちは見事な動きに歓声を上げていたが、実のところ彼女にとっては消極策。

 願わくばカウンターを取りたかったが、流石の夜宵も初見では回避するしかない。

 まだ情報が足りないと感じた彼女は、ここからはより一層注意が必要だと考えた。

 場合によっては、ダークネス・パラティンのときのように、数時間でも付き合うつもりだったが、今の彼女は1人ではない。


「援護します」


 ダークネス・デストロイヤーが、夜宵に攻撃した瞬間に背後を取ったseiが、怒涛の勢いで襲い掛かる。

 通常攻撃を主体とした、いつでも回避に移れるタイプのコンビネーション。

 このとき彼は、パーティにおける最高戦力を夜宵と定め、自分はサポートに徹する決意を固めていた。

 その事実が悔しくないと言えば嘘になるが、seiにとって優先するべきはクエストのクリア。

 目標達成の為なら、脇役に回ることに躊躇などない。

 それでも『グラスフラム』が付与した燃焼は、地味ながら着実にダークネス・デストロイヤーを蝕んでいる。

 そこに来て反転したダークネス・デストロイヤーは、大木を薙ぎ倒せそうな勢いで裏拳を繰り出した。

 眼前に迫る暴力を目にしたseiは、自分から後方に倒れてバク転することで距離を取る。

 危機を脱した彼は小さく息を吐き、再び攻勢に出ようとしたが――


「俺を忘れてない?」


 全身からオーラを立ち昇らせたジンが、極太の【ライトニング・レーザー】を放った。

 本来はあまり威力の出せないソーサラーも、やりようによっては充分に働ける。

 夜宵とseiがダークネス・デストロイヤーを相手取っている間に、彼は【精神統一】を発動した。

 僅か10秒とは言え、強大なダークネス・モンスターを前に無防備になるのは、相当なリスクだと言える。

 だが、ジンはそれを実行に移し、見事に成し遂げた。

 そんな彼に夜宵は苦笑を漏らし、seiは鼻を鳴らしている。

 対するダークネス・デストロイヤーは戦斧を振り被り、ジンに向かって振り切った。

 到底届く距離ではなかったが、戦斧の刃から赤い斬撃が飛来する。

 はっきり言って、初見で避けるのはかなり難しい。

 ところが、ジンと言うプレイヤーはそれを可能にした。

 ニヤリと笑って【インスタント・テレポート】を発動した彼は、ダークネス・デストロイヤーの右側面に出現し、【エア・スラッシュ】を繰り出す。

 ノンチャージだった為、ダメージはあまりない。

 しかし、彼の狙いは別にあった。


「夜宵さん、sei、戦斧が部位破壊可能だ。 まずはそこを目指そう」

「はい……!」

「良いだろう」


 【エア・スラッシュ】による範囲攻撃を行ったジンは、それによってどこにダメージが入っているかを確認した。

 そのことを察した夜宵たちは即座に応じ、一瞬だけ視線を交わしてから同時に駆け出す。

 夜宵が戦斧を狙い、seiは反対側から攻撃を仕掛けた。

 現時点では、ダークネス・デストロイヤーが誰を狙うかわかっていなかったが――


「それで良い」


 振り向いた相手は、sei。

 左手を掲げたダークネス・デストロイヤーは、赤い光線を連射する。

 連射を見るのは初めてだが、その程度のことはseiも頭の片隅に置いていた。

 余裕はないまでも危なげなく全てを躱し、掠らせもしない。

 その代わりに攻撃も出来ていないが、これも予定通りだった。


「やぁッ!」


 seiへの攻撃をカウンターの材料とした夜宵が、【双刃疾風】を戦斧に連続で叩き込む。

 真の実力を発揮した彼女の一撃は、戦斧の耐久力を大きく削った。

 だが、それによって今度はターゲットが夜宵に移る。

 真一文字に振り切られた戦斧を、夜宵はその場に伏せることで避けた。

 ところがそこに、今度は蹴り上げが襲い掛かる。

 微かに瞠目した夜宵は、左に地面を転がることで凌ぎ切り、すぐさま立ち上がって間合いを空けた。

 大きく息をついた彼女の背中を、冷たい汗が伝い落ちる。

 舐めていた訳ではないが、やはり油断は命取り。

 多少好機があったとしても、控えめに動くくらいの方が良さそうだ。

 戒めとして自分に言い聞かせた夜宵は、再度突撃しようとして――


「……ッ!」


 ダークネス・デストロイヤーが踏み込む。

 それまでは受け身だったが、ここに来て攻勢に出た。

 その速度はダークネス・パラディンと遜色なく、普通に考えればピンチ。

 しかし、夜宵の思考は違う。


「チャンスですね」


 眦を決した彼女は全神経を集中させて、ダークネス・デストロイヤーを見据えた。

 そんな彼女に構わず、ダークネス・デストロイヤーは戦斧を繰り出したが――


「ふッ……!」


 カウンターの一閃。

 アーツを使う余裕はなかったが、大きな損傷を戦斧に加える。

 それでも、ダークネス・デストロイヤーが止まることはない。

 何度も連続で戦斧を振り乱し、夜宵を攻め立てた。

 そう、何度も、連続で。

 つまり――


「はぁッ!」


 夜宵が学習して行くと言うこと。

 いつしか通常攻撃ではなく、【双刃疾風】によるカウンターを取り始めていた。

 加速度的に耐久力を失う戦斧を見て、seiは感動すら覚えている。

 これが、真のサムライ。

 自身の理想すらも凌駕する夜宵の動きに、彼は思わず見入っていた。

 だが――


「フォレスト・ドラゴン戦を忘れたかな?」

「……ッ! うるさい、黙れ」

「だったら働きなよ」

「言われるまでもない」


 【ライトニング・レーザー】を撃ちながら、seiを冷ややかに窘めるジン。

 それを受けたseiは胸を抉られる感覚を覚えながら、すぐさま行動に出る。

 戦斧を狙い続ける夜宵の傍らで、ダークネス・デストロイヤー本体を斬り刻んだ。

 ターゲットが夜宵から動くことはないと確信し、今まで以上にリスクを上げての火力重視。

 【クアトロ・ディバイド】も使えそうなら積極的に使ったが、【アンフィニ・ストリーム】までは行かない。

 何故なら、押しているように見えて、ダークネス・デストロイヤー本体のHPゲージは、まだ3割も削れていないからだ。

 戦斧の破壊は間もなくだろうが、そこから何が始まるか未知数。

 夜宵の学習が進んでいると言っても、今の攻撃パターンでの話。

 変化が起きた場合に備えて、万全を期す必要がある。

 その上でseiは可能な限り本体を攻撃し続け、とうとうそのときが訪れる。

 夜宵の【双刃疾風】が戦斧を破壊し、部位破壊ボーナスとして本体にも大ダメージが入った。

 それによってHPゲージは5割を下回り――


『オォォォォォッ!!!』


 絶叫。

 赤黒いオーラを立ち昇らせたダークネス・デストロイヤーが、その場で両手を組んで振り被り――


「……ッ! 逃げて下さい!」


 爆発。

 振り下ろされた両手が広場に叩き付けられ、夜宵たちの足元から赤黒い光が噴き上がった。

 咄嗟に回避行動を取った3人だが、全てを避け切ることは出来ない。

 直撃ではなかったので戦闘不能は免れたが、ジンとseiは残りHP6割、夜宵に至っては3割を切っている。

 その事実も厳しいが、夜宵が何より悔やんでいるのは【神速への道】が途切れたこと。

 致し方ない部分はあったとしても、絶対に当たるべきではなかった。

 歯を食い縛った夜宵だが、深呼吸して落ち着きを取り戻す。

 まだ負けた訳ではない。

 ひとまず回復して、仕切り直せばチャンスはあるはずだ。

 気持ちを切り替えた彼女は、貴重な回復薬を取り出して飲み干そうとしたが、このクエストは普通のクエストではない。


『ゴォォォォォッ!!!』

「な……!?」


 回復薬を取り出した瞬間、ダークネス・デストロイヤーが咆哮を発して――砕け散る。

 流石の夜宵も驚きを禁じ得なかったが、ジンは尚も冷静だった。


「どうやら復活だけじゃなくて、回復すら許してくれないようだね」

「……そのようですね」

「かなり厳しい状況だけど、向こうだって残り半分もない。 気合いで押し切ろう」

「ふん。 貴様の口から、気合いなどと言う言葉が出るとはな」

「何か変かな? 俺としては、ここまで来たら気持ちの勝負だと思ってるけど」

「……全否定はしない。 だが、がむしゃらに挑めば良いと言う問題でもないぞ?」

「わかっているさ。 夜宵さん、行ける?」

「……はい。 必ず勝たないと……」


 凶暴性を増して夜宵たちを睨み付けている、ダークネス・デストロイヤー。

 このとき彼女は、恐怖していた。

 負けることが怖いのではない。

 スノウの願いに応えられないことが、怖いのだ。

 しかし、そう言った思考は人間のパフォーマンスを落とす。

 超人的な能力を持つ夜宵も例外ではなく、いつもの実力が発揮出来る状態にない。

 そのことに気付いたseiは何とかしたかったが、解決策を思い付けなかった。

 そうして、絶体絶命なまま戦闘が再開されそうになり――


「良し、誰があいつからターゲットを取れるか勝負しようか」

「……へ?」


 至極軽い口調で放たれた、ジンの提案。

 それを聞いた夜宵は、反射的にダークネス・デストロイヤーから目を離して、彼の横顔をまじまじと見つめる。

 危険極まりないが、彼女にとってはそれほど理解不能だった。

 ところがジンは、ニコリと笑って続ける。


「前にアサルト・タイガー戦でもやっただろう? 結構楽しかったし、またやろうよ」

「こ、こんなときに何を言ってるんですか! 今はどうやって勝つか、それだけを考えて……」

「良いだろう」

「……!? seiさん……!?」

「夜宵さん、ターゲットを取るには、より多くのダメージを与える必要があります。 それはつまり、勝利に繋がるんです」

「そ、それはそうかもしれませんけど……。 ここは慎重に攻めて……」

「そんな余裕があるのかな? ゆっくりしてたら、あいつに飲み込まれちゃうと思うよ。 ここはリスクを承知で、突き進むべきだと思うけど?」

「ジンさん……。 ですが……」

「それに、そんなの楽しくないよ。 慎重になるのが悪いとは言わない。 でも今は、攻めた方が絶対楽しいよ」

「楽しい……」


 ジンの提案を夜宵は受け入れ難いと思った。

 だが、彼女の本来の目的は、ゲームを楽しむこと。

 そしてスノウも、それは間違っていないと言ってくれた。

 ならばどうする。

 決まっている。

 楽しんで、勝つ。

 そうすれば、自分の望みもスノウの願いも叶えられる。

 傲慢なのは百も承知。

 それでも夜宵は、その道を選ぼうと決めた。

 困ったように眉を落とした彼女はクスリと笑い、透き通った声で宣言する。


「わかりました。 勝たせてもらいますよ、ジンさん、seiさん」

「それでこそ、夜宵さんだ。 まぁ、勝つのは俺だけど」

「寝言は寝て言え。 夜宵さん、試合では負けましたけど、今回は譲りませんよ」


 不敵な笑みを浮かべる、3人のプレイヤー。

 改めて確認しておくが、これはゲームであって、言ってしまえばただの娯楽。

 しかし、夜宵たちは紛れもなく真剣だ。

 こう言ったメンタリティが、現実に影響を及ぼすこともあるかもしれない。

 もっとも、今の彼女たちに、そのようなことは関係ないが。

 楽しんで、楽しんで、楽しんで――勝つ。

 そのことを胸に刻んだ夜宵は、数瞬瞑目し――


「行きますッ!」


 走り出す。

 ジンとseiも遅れず動き出し、それは敵も同様。

 武器を失ったダークネス・デストロイヤーは徒手空拳だが、戦闘力はむしろ上がっていた。

 動きの速度が増し、間断なく両手から光線を放つ。

 更に、広場を踏み付けることで、夜宵たちの足元を爆発させた。

 近付くことすらままならず、いつ被弾してもおかしくない。

 そんな中でもジンとseiは果敢に挑み掛かり、隙を見付けては攻撃をヒットさせている。

 ターゲット勝負に関しては今のところseiが優勢だが、本来のクラスではないにもかかわらず、ジンも大きくは劣っていない。

 僅かに目線を交換した2人は笑みを湛え合い、より一層勢いを増して行った。

 一方の夜宵は――


「……」


 ひたすら、回避に専念している。

 一切の攻撃をせず、ダークネス・デストロイヤーの動きにだけ注意を払っていた。

 見ようによっては勝負を放棄しているが、ジンとseiはそうではないことを知っている。

 内心で笑みを浮かべた2人は、彼女に負けじと自らの戦いを続けた。

 すると暫くして、彼らの努力が実を結び、ダークネス・デストロイヤーのHPゲージが4割を切る。

 そして、夜宵の戦いが始まった。

 猛烈な勢いで光線を撃ち続ける、ダークネス・デストロイヤー。

 そのうちの数本が夜宵に殺到し、彼女を仕留めようとする。

 これに対して彼女は、これまでひたすら回避していた。

 だが、ここからは違う。

 躱して踏み込んで戦う――のではない。

 では、どうするのかと言うと――


「やぁッ!」


 刀を振り切る。

 しかし、これは本来無意味。

 魔法系攻撃を前に、サムライの攻撃など無力。

 それが常識。

 ただしそれは、夜宵以外の場合だ。

 完璧なタイミングで全ての光線を捉えた刀が――反射。

 綺麗に撃ち返され、ダークネス・デストロイヤーを貫く。

 戦いが始まって最大のダメージを与え、HPゲージを大きく減らした。

 これこそが、『鏡月』の潜在能力。

 サムライにとって天敵とも言える、魔法系攻撃を跳ね返すことが出来るのだ。

 とは言え、誰にでも出来ることではない。

 むしろ、ほとんどのプレイヤーにとっては、宝の持ち腐れだろう。

 だが、夜宵がこの刀を持つのは、まさに鬼に金棒だ。

 事情を知っているジンとseiは笑みを深め、もう1段階ギアを上げる。

 1発でも、まともに当たれば終わり。

 そんな状況下でもゲームを楽しんでいる3人は、強大な力を持つダークネス・デストロイヤーを、徐々に追い詰めつつあった。

 敵の攻撃に慣れて来るのは、夜宵だけではない。

 ジンとseiも動きの質が上がっており、余裕すら出来始めている。

 そうして、この戦いの結末が見えた――かに思えたが――


『グ……ルァァァァァッ!!!』


 ダークネス・デストロイヤーも、ただでは終わらせない。

 HPゲージが3割を切ると同時に、最後の変化を遂げた。

 両手に加えて、全身から放たれる無数の光線。

 更には、足元の爆発も頻発するようになっている。

 あまりにも激しい攻撃を前に、夜宵ですらカウンターを取れない。

 ジンとseiに至っては、回避するのが精一杯だ。

 ここに来てseiは、川上が全員セイヴァーでなければクリア出来ないと言った意味を悟る。

 確かに、攻撃と回復を同時に行えるセイヴァーなら、この猛攻にも耐えられるかもしれない。

 いや、川上はそう言う設計にしたはずだ。

 だからこそ、越えてみせる。

 決意を新たにしたseiは、ジンに向かって声を投げた。


「ジン」

「何かな? 今、話してる余裕ないんだけど」

「夜宵さんを頼んだ」

「……何だって?」

「2度は言わん」


 一方的に言い捨てたseiは、スキルを発動した。

 【極限突破】及び【不屈の信念】。

 彼が何を考えているか察したジンは、一瞬だけ止めようとしたが、敢えて見送る。

 ジンが自分の意志を尊重してくれたことに、seiは薄っすらと笑みを浮かべ――


「行くぞッ!」

「seiさん……!?」


 光線を全身で受けつつ、駆け抜ける。

 夜宵の悲鳴が聞こえたが、無視した。

 瞬く間にHPゲージが消え去ったが、どれだけのダメージを受けようが、この20秒間だけは彼が倒れることはない。

 そして、それだけあれば充分。


「おぉぉぉッ!!!」


 雄叫びを上げたseiが、4つの異なるアーツを連続で繋げる。

 【クロス・ロザリオ】、【デュアル・ウェイブ】、【レイン・スパーダ】、【クアトロ・ディバイド】。

 これによって、条件は整った。

 『グラスフラム』を逆手に持ったseiは、柳眉を逆立てて――


「これが、僕の全力だッ!」


 【アンフィニ・ストリーム】。

 超速の12連斬がダークネス・デストロイヤーに叩き込まれ、HPゲージがガリガリと削れて行く。

 しかし、倒すには至らない。

 残りHPが2割を切ったところで、【アンフィニ・ストリーム】は止まった。

 それとほぼ同時に、【不屈の信念】が終わる。


「く……」

「seiさん!」


 至近距離で膨大な光線を浴びたseiは、そのまま戦闘不能になった。

 その様を夜宵は、悲痛な面持ちで見つめたが――


「意識を逸らすな」

「……ッ! ジンさん……」

「残ってるのは、俺たちだけだ。 そして悔しいけど、勝てるとしたら夜宵さんの力に頼るしかない。 だから、キミは生き残らなければならない」

「……わかりました」

「有難う。 ……とは言ったものの、何か手はあるのかな?」


 真面目だったジンが、急に苦笑交じりに問い掛ける。

 それが自分を落ち着かせる為だと気付いた夜宵は、内心で感謝しつつ告げた。


「……1つ、考えがあります」

「そうなんだ。 じゃあ、それで行こう」

「えぇと……内容を聞かなくて良いんですか……? もしかしたら、とんでもない作戦かもしれませんよ……?」

「必要ないよ。 俺は、パートナーであるキミを信じてるから」

「……有難うございます」


 優し気な笑みを浮かべたジンに、微笑を返した夜宵。

 だが、次の瞬間には顔を引き締め、端的に言い放った。


「5秒……いえ、3秒、わたしを守って下さい」

「3秒? それで足りるの?」

「なんとかしてみせます」

「……わかった。 絶対に守るよ」

「……有難うございます」


 ジンの返答を受けた夜宵は、頬が紅潮するのを感じた。

 しかし、すぐに雑念を振り払って集中する。

 尚も降り注ぐ、光線の雨。

 夜宵には、もう掠ることすら許されない。

 極限の集中力を発揮した2人は、なんとか合流することに成功した。

 ところが、そのせいで攻撃が集中し、輪を掛けて回避が難しくなっている。

 それでも彼女たちは必死にタイミングを窺い、そのときがやって来た。


「行きますッ!」


 3。

 殺到する光線。


「任されたよ!」


 2。

 ノンチャージの【ライトニング・レーザー】を連射して、辛うじて防ぎ切るジン。


「すぅ……」


 1。

 ジンを信じて呼吸を整え、【刀気解放】を発動する夜宵。

 ここまでは順調だったが――


『ガァァァァァッ!!!』


 まさかの新挙動。

 ダークネス・デストロイヤーの瞳から、光線が射出された。

 夜宵は思わず瞠目し、ジンは――


「目からビームは鉄板だよね」


 読んでいた。

 ニヤリと笑って【ライトニング・レーザー】を撃ち、完璧に相殺。

 彼の実力の高さに夜宵は感心していたが、自身のやるべきことを果たす。

 次の光線の予兆を察知した彼女は、タイミングを合わせ――


「はぁぁぁッ!!!」


 【絶影瞬駆】を超える速度で接近した夜宵が、ダークネス・デストロイヤーを斬り裂いた。

 ジンですら反応も出来ないスピードで、驚きのあまり硬直している。

 ユニークアーツ、【一刀】。

 【神速への道】の『最大』効果時間が300秒を超えたときに、発動可能。

 デメリットは【神速への道】が解除されることと、発動後20秒間、攻撃力が99%減少すること。

 効果は、対象への距離を刹那の間に詰めて斬る――ただそれだけ。

 しかし、威力は対単体用アーツでトップ。

 それでも、ダークネス・デストロイヤーのHPゲージを、削り切ることは出来ない――はずだったが――


『オォォォォォ……』


 崩れ落ちて行く。

 納刀した夜宵はその様子を、冷ややかに見下ろしていた。

 普通に【一刀】を使っても倒せないと確信していた夜宵は、いくつかの手を尽くしたのだ。

 まずは、【刀気解放】による火力アップ。

 そして何より、【一刀】をカウンターで撃つと言う賭け。

 彼女のカウンターの技術には、サムライと言うクラスを極めていることが大きく影響している。

 ところが、【一刀】はユニークアーツ。

 普段使うことのない彼女にとっては、かなりタイミングがシビアだった。

 だが、その恩恵は途轍もない。

 カウンターの通常バフに加えて、【見切りの極意】によるバフ。

 【刀気解放】を含めたこれらが全て合わさって、ダークネス・デストロイヤーを仕留め切ったのだ。

 そのことを漠然と理解したジンは、最早笑うしかない。

 大きく深呼吸した夜宵は、スノウの【エーテル・ゲート】で晴れやかになった空を見上げた。

 そして、ゆっくりとジンに振り返ると――


「良くやったわ、夜宵」


 微笑を湛えたスノウに迎えられた。

 彼女だけではない。

 復活を遂げたGunちゃんとアンジェリカ、seiも一緒だ。

 驚いた夜宵が目を丸くしていると、空間に現れたのは『Quest Clear』の文字。

 それを見た彼女は涙ぐみ、スノウに駆け寄って抱き着いた。

 そんな彼女をスノウは苦笑交じりに宥め、ジンたちは微笑ましく見守っている。

 こうして、激戦を制した夜宵たちは、超高難易度クエストをクリアした。

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