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ぼっちプレイヤーなわたしが最強な訳がないじゃないですか  作者: YY
第2章

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第17話 ジン&スノウ

 暗い通路を並んで歩く、ジンとスノウ。

 一見、仲が良さそうだが、2人の間に会話はない。

 もっとも、そのようなことを気にする間柄ではないのだが――普段なら。

 ジンがいつも通りな一方、スノウはどことなく落ち着きがない。

 そのことを察しながらジンは黙っていたが、小さく溜息をついて声を発する。


「スノウ、言いたいことがあるなら言いなよ」

「いえ、わたしは別に……」

「そんな嘘が、俺に通用するとでも思ってるの?」

「……申し訳ありません」


 歩みを進めながら、少しだけ強くスノウを窘めるジン。

 それを受けたスノウは白旗を上げ、大人しく心情を吐露する。


「夜宵は……あの人なのですか?」


 誰が聞いているかわからないので、念の為に言葉を濁したようだが、「あの人」が弥生を指しているのは明らかだ。

 だからこそジンは、端的に答えを返すことにする。


「可能性は高いと思う。 でも、確証がある訳じゃない」

「……何故、教えてくれなかったのですか?」

「先入観を持たせたくなかったからね。 それに、事実がどうだろうが、どっちでも良いことだろう?」

「それは、そうかもしれませんが……。 彼女はこちらのことを、知っているのですか?」

「それこそわからない。 体感では気付かれてないけど、直接聞いた訳じゃないしね」

「そうですか……」

「まぁ、長年一緒にいたスノウですら、実際に会うまでは確信が持てなかったんだから、気付かれてなかったとしても驚かないよ。 何度も言うように、俺にとってはどっちでも良いし」


 強がりでも何でもなく、ジンは本当に興味なさそうだ。

 リアルはリアル、ゲームはゲーム。

 彼の信条は、どこまで行ってもここに帰結する。

 そんな彼を見て一応の納得を見せたスノウは、この話はここまでにしようと決めた。

 その様子を横目で見つめたジンは、薄く笑みを作って自身の考えを伝える。


「スノウもゲームの中くらい、現実のことは忘れてのびのび遊んだら良いんだよ? やっぱり、ゲームと現実は区別しないとね」


 ジンとしては、あわよくばスノウにメイドとして仕えるのをやめてもらいたかったのだが、残念ながら逆効果となった。


「区別はしています」

「え?」

「今のわたしはロールプレイ()()()ので、現実とは違います」

「……もしかして、怒ってる?」

「滅相もありません」

「怒ってるじゃないか……」


 わざとらしく「らしい」を強調したスノウに、ジンは苦笑を漏らす。

 よほど彼女は、自身の役割を演技扱いされたのが、気に入らないようだ。

 顔を正面に固定してスタスタ歩いているが、付き合いの長いジンにはお見通しである。

 とは言え、彼も今のスタンスを崩すつもりはないので、別の話を取り出した。

 スノウにとっては、あまり歓迎出来る話題ではなかったかもしれないが。


「ところで、夜宵さんはどう?」

「……どうと言うと?」

「ほら、印象とか、何か感じたことはない?」

「不本意ですが、強いことは認めます」

「それだけ?」

「……人としても、嫌いではありません」

「それは良かった。 でも、だったらフレンドになれば良いのに」

「必要ありません」

「素直じゃないね。 仲良く出来そうにない?」

「……現時点では、何とも言えません」

「なるほど。 まぁ、今はそれで良いよ」


 夜宵を憎く思ってはいないことを認めつつも、慣れ合う気のないスノウ。

 頑なな態度の彼女に呆れたものの、ジンは夜宵ならいずれ、この少女の心を解きほぐしてくれると信じている。

 そのときのことを想像して微笑を浮かべたジンだが、空気を読まない不届き者がいた。

 低い唸り声を上げながら近付いて来る、ゾンビの集団。

 安直な名前に反して討伐推奨レベルは45と高く、決して油断出来ない相手である。

 しかし、ジンは面倒臭そうに溜息をつき、スノウは「汚らわしい……」と、嫌悪感剥き出しだった。

 そんな彼女にジンは内心で同意したが、口に出したのは別の言葉だ。


「これだけ制限された空間じゃ、跳び回るガンマンは戦い難いんじゃない?」

「確かにそうですが、あまり見くびらないで頂きたいですね」


 ジンの言葉に強気で返したスノウはスカートを翻して、ガンホルダーから『ヴァイスシュヴァルツ』を抜き放つ。

 そして間髪入れずに【ディメンション・ファイア】を発動すると、4体の頭部を撃ち抜いた。

 ゾンビは耐久力が高く、胴体へのダメージはほとんど通らないが、頭部が弱点部位となっている。

 何度見ても見事な精度に感心したジンは、負けじとアーツを繰り出した。

 剣先をゾンビの集団に向け、【ホーリー・ブラスト】で頭部を狙う。

 スノウに劣らない命中精度で、多数のゾンビを塵と化した。

 胸中で称賛したスノウは、再度【ディメンション・ファイア】を放とうとしたが、その前にジンが走り込む。

 意外な行動にスノウは驚いたが、ジンは振り向くこともせずに、1体のゾンビを斬り伏せながら告げた。


「今回はボスが結構強いからね。 道中のザコ戦では、出来るだけAPを温存した方が良いよ」


 そう言いながら、別の1体の頭部を『グランシャリオ』で貫くジン。

 彼の言葉に納得したスノウは頷いて、自身も通常攻撃に切り替えた。

 先制攻撃でかなり数を減らしたとは言え、まだまだ残っていたゾンビたちが、あっと言う間に消えて行く。

 並のプレイヤーなら手に負えないような相手も、2人にとっては通常攻撃で事足りた。

 ひとまずの脅威を退けたジンとスノウは、互いに労いの言葉を送り合う。


「お疲れ様」

「お疲れ様です」

「それじゃあ、先に進もうか」

「はい。 ところで、仕掛けとはどう言ったものなのでしょうか?」

「ん? あぁ、そう言えば言ってなかったね。 各階のどこかにあるクリスタルを破壊すると、上の階への階段が出現するんだ。 どこにあるかは完全ランダムだから、しらみつぶしに探すしかないね」

「なるほど……かしこまりました」


 そう言ってスノウは、すぐ近くの扉のドアノブを掴む――ことなく、『ヴァイスシュヴァルツ』で破壊した。

 その後すぐに、部屋の中に向かって何発も銃弾を撃ち込み、扉を蹴破って侵入する。

 するとそこには、塵と消え行くスケルトン・ウォリアーの姿があった。

 その他には調度品が置いてあるだけで、ハズレだと察したスノウは、一旦戦闘態勢を解く。

 一連の出来事を眺めていたジンは、苦笑交じりに言葉を紡いだ。


「乱暴だね」

「何があるかわからないのですから、当然の対応です」

「まぁ、実際正しいよ。 扉や部屋には、罠が仕掛けられていることもあるからね」

「そのような低次元な罠に、引っ掛かるような者がいるでしょうか?」

「確かに低次元だけど……いないとは限らないかな」


 2人に悪気はなかったが、この会話を夜宵が聞けば再起不能になったかもしれない。

 何はともあれ、1つ目の部屋の探索を済ませた2人は、順調に攻略を進めるのだった。

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