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純白のブラックロード  作者: たや
第二章 HAST入隊
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思い通りに行かない


昨日とは打って変わって今日の天気は雲ひとつない晴れ。

道ゆく人々は誰も傘を持っておらず同じ年頃の学生は楽しそうに歩く。

教室に入るとクラスメイトは驚いた表情で見つめてくれる。

無断欠席した生徒が荒んだ顔で登校したのだから心配の目だろうか。

でも申し訳ないが今日に関しては誰とも話したくないのだ。

幼馴染も、チームメイトの二人も察しているのか無理に話しかけようとはしない。


そうだ、今日は起きれなかったかららんも連れて食堂で昼食べよ

梢香に先行ってもらって席とってもらって、京谷にお金渡して買ってもらおう


そういえばそんな俺を見てらんはとても心配そうに見てたな

というかいつになったららんの親は見つかるんだろうか

そろそろ一月経つけど今だに何の連絡もないな


そうやってずっと何かを考え続けろ、そうじゃないとまた昨日の()()が頭を埋め尽くす。


なんだっていい、幼稚園の思い出、ロボットアニメを見た思い出、小学校高学年の思い出、中月家でのバーベキューの思い出、中学校の思い出、じいちゃんにしごかれた思い出、梢香とのあの思い出、木村や海瀬とバカみたいな事を話した思い出、京谷に朝イチで殴られた思い出、しおりがこっち来た時の歓迎会の思い出、加賀見さんにもらったワックスの思い出、らんに初めて会った時に手を噛まれた思い出。


何でもいい、思い出さなくても、これからのことを考えてもいい、だから、頭を空っぽにするな


普段は自ら勉学に触れることは極力ないがこの日だけは自ら数式の答えや古文や英文の現代語化を必死に求めて考え続けた。

頭を最大限に使い休ませずに過ごしていると昼休みに入る。


「あ、勇也くん…」


席を立ったところに横の梢香が話しかける。


「今日…学食だよね。あたし先行って席取っとくからさ、らんちゃん迎えに行ってよ」

「ふーん。たまにはうちも学食食べよかな」

「噂を聞くとそこそこ安いらしいな。俺も今日コンビニ寄るの忘れたからたまには付き合ってやる」


あぁ。こいつらめちゃくちゃお人好しなんだな


俺は今はいないけど家族にも恵まれてこうやって友人に恵まれた。

正直行って、かなり心を助けられている。

照れくさいけど感謝の言葉は口にしないと伝わらない。


「あ、ありがと_」


俺の心は助けられたのにりゅーとの心は?


「…っ!?」


出ていた言葉が息と共に口内に引き摺り込まれる。

怪訝に顔を見る三名から顔を晒してらんの待つ託児室に足を急がせた。


「だいぶ重症…やね」

「この先、あいつやってけるのか?」

「おやおや。あのツンな亮くんが心配しとん?」

「多少はな。戸田川の時みたいにあいつが暴れてくれた方が合わせやすいからな」


歩き続け託児室に到着。

らんも大雑把な時間を把握しているのか入り口近くのドアに張り付いて待ってくれていた。


「おにーちゃん!ん!」


到着するなり、らんは右手を勇也に伸ばす。

うちの姫様は手を繋げと申しているようなので左手でその右手を優しく包む。


「行くぞらん。今日はあったかいご飯だぞ」

「うん!」


HASTの食堂には学生だけでなく隊員を含む全ての人員が利用することができるのでかなり早い段階から混みだすので学生と隊員の昼休憩時間は45分ずれているので今の時間は同じ高校生か大学生しかいない。

勇也とらんはお揃いでカツとじうどんを注文して受け取り梢香達を探すとわかりやすく声を出して手を振る女子生徒の姿があった。


「こっちこっちー!」

「しょーかおねーちゃーん!」

「走るなよらん」


トレイを持ったまま走り出そうとするらんに勇也は注意すると踏み止まりゆっくりと歩き出した。


「らんちゃんは相変わらずよく食べはるなぁ」

「うん!たくさんたべれるの!」


しおりや亮に世話をされながら食事を取るらんを眺めて少しだけ心が落ち着く。

本当に妹がいたらこんな感じなのだろうか、と。

自分も箸を持ち食事に手をつけるが半分を過ぎたあたりで喉が食事を受け付けなくなった。


「おにーちゃんお肉食べないの?」


らんのきらきらとした期待の目線はうどんの上に乗っている四切れのとんかつに夢中になっていた。


「ちょっとお腹いっぱいでな。おかしいな…俺も歳かな…はは」


中身のなくなりかけたらんの丼にとんかつを全部乗せてやると歓喜の声を上げて食べ始めた。


「らんちゃんお肉好きなん?」

「だいすきー!おにくおにく〜!」


幸い喉を通りやすいうどんだけを何とか食べ切ったが明らかに心身に異常をきたしている以上、無理をせずに過ごすしかないか。

できればしばらくは作戦などに選ばれずに戦いとは無縁でありたい。

ブラックロードには申し訳ないが少しだけ静かな環境に身を置きたい。


「ん?アーキリングが・・・」


梢香が腕のアーキリングの振動み気付き何かしらの通知が来たことを知る。


「作戦か。時間は・・・このあとすぐだな」

「大変そうな作戦やないね。ちゃちゃっと終わらせよか」



【作戦目的】

名古屋市昭和区、鶴舞公園にて侵食地警報発令。出現するであろう害悪種の殲滅


【害悪種出現推定時間帯】 

14:30〜15:00


【集合時間】

13:30分にHAST本部7階、出撃準備室


【作戦メンバー】 

アーカー

日羽しおり(C)チーム長


京谷亮(C)


十八勇也(C)


中月梢香(C)


現場支持要員

坂下啓一(B)


【備考】

出現予想害悪種のハザードランク5.0以上


どうやら現実はそう上手く思うがままに行ってくれないらしい。


「大丈夫?戦える?」


かなり心配して顔を覗き込む梢香を安心させるべくできる限りの作り笑いを添えて言葉を返す。


「大丈夫、戦える」


そしてチームメイト二人の顔を見て言う。


「足手まといにはならない。やることはしっかりやる」

「当然だ、少しでも邪魔になったら即刻撤退させるからな」

「まぁまぁそう言わんと、うちらがサポートすればええんやから。そうと決まれば出発準備しよか」


各々、食堂の器を返却口に置きらんを託児室の戻して出撃準備室に向かう。

普段であれば戦闘支持要員の坂下が現場までの送り迎えを担うのだが緊急性が高い作戦や今回のように作戦実行までの時間に余裕がない場合は最上部の出撃カタパルトが使用できる。


「「「「アーキファクトレディ」」」」

『Black Lord stand-by』

『White Wish stand-by』

『Blitz stand-by』

『Wind stanb-by』


カタパルトレーンの前に立ち、全員がアーキリングに音声認識を行う。


「行くぞ、ブラックロード」

「お願い、ホワイトウィッシュ」

「来い、ブリッツ」

「ウィンちゃん、行こか」


アーキファクトを身体に纏わせあらゆる衝撃に耐えられる状態に以降した後、小さな段差を降りてカタパルトレーンに足を置く。


『各位アーキファクトへの換装を確認、出撃ハッチオープン』


足を着けている床からかすかな振動を感じる。

前方の閉ざされていたハッチがゆっくりと開くと装甲にまばゆい光と強烈な風が当たるが纏っているアーカーはそれを感じない。


『出撃どうぞ』


「日羽隊出撃!」


しおりの号令と共にカタパルトのエネルギーが最大出力に達し、巨大な推進力が身体に一気に加わり空へと飛び出す。

全身が重力に押し付けられ、目的地へ向かって飛び立っていった。


----------


次回『夜の二人』

あとがきの有無は勇也の精神状態で決まるので久々に書きます。

中月家の母親について


梢香と聖奈は父親の純に似て、礁愛と梢葉は母親の美奈に似ています。

母方の祖母はロシア人で若い頃は素晴らしい美貌ととんでもないスタイルで絶世の美女なんて呼ばれたりしており、礁愛はそんな祖母の血を濃く継いでおり帰省するたびに「礁愛は私に似てるわ」なんて言わているようです。

つまり美奈はハーフで、中月姉妹はクォーターなんです。


さて、そんな美奈は一体いつ登場するんでしょうか?


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