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純白のブラックロード  作者: たや
プロローグ
3/51

White Wish


「まさかこんなとこでアーカーになるなんてね。想定外だよまったく」


強風が吹く高いビルの屋上に双眼鏡を使って学校を覗き見る赤黒いローブを羽織った男がいる。

右手にはストローが刺さった紙パックのコーヒー牛乳を持っており、

足元には菓子パンやゴミなどが入ったビニール袋がある。


「まあ今回はこれがほんとに使えるか見たかっただけだし、いっかぁ」


左手の双眼鏡を鞄にしまってズボンのポケットに手を入れる。

そこから紫色や焦げ茶色の小指サイズのカプセルを取り出して眺める。

これを作った()()()はこう言っていた。


「握って魔力を少し込めて投げれば圧縮されたハザードが元通りになる、半信半疑だったけどすごいねこりゃ」


持っていたコーヒー牛乳を顔に近づけストローを咥えて吸う。


「うーん・・・コーヒー牛乳はうまいねぇ。人間の歴史の中でも屈指の傑作だよ」


甘いのだが、優しい甘さなのだ。喉を通るたびにアドレナリン?っていうやつが溢れてくる。

きっと今、人にはあんまり見せられないくらい表情がほぐれているだろう。


「いい気分だし残ったこれも使っちゃおっと」


左手を軽く握り魔力を軽く込めると次第にもぞもぞと動き始める。

そうなれば無事に魔力が作用してハザードが徐々に解凍される合図だ。


「そぉーれ!」


カプセルのようなものを再度学校に向けて投げる。一個はさっき学校に投げたキメラタイプ、もう一個は鳥類を中心に飛行に特化したハザードだ。手から離れた数秒後、カプセルが変化してみるみるおぞましい化け物になり、学校に向かって飛んでいった。


「さ、後はどーでもいーし。かーえろ」


男は足元のビニール袋を広い軽く伸びをしてから、その場から()()()

まるで、神隠しのように。



『お待ちをイサヤ、新たな害悪種反応です。それも2体』


今さっき、一体を仕留めたばっかりで尚且つ、

理解ができないことがあまりにも多いのにまだ害悪種が襲ってくる。


『位置は・・・こちらです。それも高速で』

「なんだ__」


レーダーが反応、三角サインの害悪種反応を感知したのだろう。

しかしそれは先程の害悪種より何倍も早く一直線にこちらに___


「うげぇっ!」


視界の上にそれらしき影が見えたと思えば急速に下降し、鋭くか細い両足、けれどとても強い握力で勇也の上半身、下半身を掴みそのまま運搬される。数秒にも満たないうちに校舎の壁に激突する。


「がわぁっ!」


はやぶさのような、鷹のような、とにかく強い鳥類だと思う。

甲高い鳴き声が間髪を容れず聞こえてくる。

かなり先の害悪種同様、獰猛な性格をしている。


「どんだけっ、校舎、壊すんだよっ!」

『まずいですイサヤ。先ほどと同タイプの害悪種が中月梢香さんの方向へ向かっています』

「くそっ!!」


振りほどけない、足の掴んでいる力が強い


「さっきの武器は使えないのか!」

『掴まれている部分が悪いです。アイ・ソードも、リッパーもブレイドも稼働することが不可能です』


もがいている間にもレーダーは害悪種の反応は梢香にかなり近づいている。

仮に今すぐ振りほどいたとして間に合わない。


どうすれば、どうする・・・


梢香の反応と害悪種の反応が、ほぼゼロ距離に。

おそらく、すでに接触範囲まで来てしまっている。


(梢香・・・!!)


『中月梢香、反応ロスト・・・』


ブラックロードが、発した。


それを効いた途端、視界が明確に2色になった。

耳に入る音は自分の鼓動、脳裏には()()()の病室の記憶。

その記憶が、()()()

だが、その言葉には続きがあった。


『新たなアーキファクト反応、これは___』


まるであっけにとられたかの様な声色で聞こえた。


『ホワイト・・・ウィッシュ・・・?』




「う・・・うぅ・・・づぁ!」


目を覚ました途端猛烈な痛みが全身を襲った。

それもそのはず、害悪種の鋭い爪で身体をえぐられた後に感覚がなかったとはいえ

肩も強く抑えられていたのだ。


「い、いさや・・・」


顔は見えなかったけど、あたしを助けてくれたあの黒いアーキファクトは間違いなく勇也だ。確信している。


「けほっ、がふっ!」


害悪種の毒が回ったのか吐血してしまった。それもかなりの量を。

ふと横を見ると未来が倒れているので這って近くに寄る。


「よかった・・・」


呼吸を感じる、生きている。それだけでも、とても安心した。

ほっと胸を撫で下ろすと、不気味な金切り音のような音が聞こえた。


「キュシュヲォォォン!!」


そう、害悪種の鳴き声だ。

力を振り絞って上を向くとそこには先ほどと同じ様な害悪種がいた。

違いといえばちょっと色が違う、焦げ茶色。


考えるより先に身体が動いた。

未来だけは襲われないように目と鼻の先にあった教室のドアを上半身を反って気合でこじ開けようとする。


「シュリィィィィギゥン!!」


害悪種が吠えると口の近くに光る球体を作り出した。

少しづつ体積が大きくなってきている。


開いて、開いて、開いて!!!


「プォン!」


その光る球体がこちらに放たれた。


「うぅぅあぁ!」


火事場の馬鹿力か、ばぁんと大きな音を上げて()()()()()




その音が響くと世界が()に染まっていき、校舎も、害悪種も、未来もいなくなってしまった。


『___あなたをお待ちしておりました』


凛としていて、気高さがある。そして何より慈悲深い優しい声が耳に入った。


(わたくし)の名前は()()()()()()()()()。前世界ではルーカラ王国の国王第一王女として国を治めておりました。この出会いより、あなた方を護る盾としてお仕えします』


白のアーキファクトが空から眼の前に降臨した。

ついさっき見た黒いアーキファクトは角ばっていて攻撃的な印象を持ったが、

このアーキファクトからは女性らしく曲線美を主とした防御的な印象だ。

そして何より天使を思わせるような大きな白い鋼の翼。


『この様な形での出会いになってしまい申し訳ございません。このままではあなたの身体は出血と害悪種の毒で長くはありません』


感覚的にわかっていたことだった。

やっぱりそうだろう。


『ですが私を使えばあなたの身体を治療をしつつこの状況を打開することができると思います』


翼から少しの羽が分離し梢香の身体を覆う。


(ぽかぽかする・・・きもちいい・・・)


急速に体が回復している感覚だ。

視界の歪みは軽減され激痛は耐えれるくらいには治まっていく。


「ねぇ」

『どうされましたか中月梢香(なかつきしょうか)さん?』

「あなたを使えば()()()のこと、守れるかなぁ?」


梢香はホワイトウィッシュに右手を伸ばす。

ホワイトウィッシュもそれに呼応するかの差し出された梢香の右手を優しく両手で包み込む。


『・・・確約はできません。だけど私の十翼(じゅうよく)は守りたい人を守ることができる力です。後悔はさせません』


アーキファクトって機械なのに、すごく人みたいに話すんだなぁ。

これならあたしも安心・・・かも


『あなたも、あなたの大切な人も私が守ってみせます。私を信じてください』


発せられた言葉を信じる。


「うん・・・よろしくね」


瞬間、世界がブラックアウトした。




『中月梢香、反応ロスト・・・』


ブラックロードが、発した。


それを効いた途端、視界が明確に2色になった。

耳に入る音は自分の鼓動、脳裏には()()()の病室の記憶。

その記憶が、()()()

だが、その言葉には続きがあった。


『新たなアーキファクト反応、これは___』


まるであっけにとられたかの様な声色で聞こえた。


『ホワイト・・・ウィッシュ・・・?』

「どういうことだよ!おい!」

『わかりません、考えられるとしたら・・・』


ピシュン、と鋭く小さな発射音のような音が聞こえると勇也を捕まえていた鳥型害悪種を光線が貫いた。

今の攻撃が効いたのか掴んでいた勇也を離し、一度空中に戻っていった。


『この羽を用いた攻撃・・・間違いない』


無理やり首を攻撃が来た方向に動かされる。

そこにあったのは空に浮いている小さな羽根のような物だった。

あれから光線が発射されたのだろう。


『姫がお目覚めか・・・!』


今までの丁寧な口調から少し変わってやや威圧を感じる口調と声色になった。

レーダーに注視すると梢香の反応が消え、代わりに White Wishと書かれた反応が現れていた。

それを見つめていると空に戻った鳥型害悪種がほぼ直角90度にくちばしをこちらに向け高速で降下してくる。


『そうです。たった今、この世界で目覚めました』


ブラックロードとは違うアーキファクトの声だった。

その声が聞こえると4つの小さな羽根から放たれた光線が鳥型害悪種を貫く。

そして瞬時に紫色の蒸気になって消えていった。


『お久しぶりです。黒の主(ブラックロード)


上空から純白の天使が舞い降りた。

正直、見惚れてしまった。この美しさに。

一挙一動に目が離せない。ずっと見ていたい。

そう思えるほど、美しかった。


『再びお会いできて嬉しいです・・・白き願い(ホワイトウィッシュ)


この巡り合いが、この少年と少女を、この世界を、この運命を、変えることになるとは、まだ誰も知らなかった。

プロローグ完結です。

誤字脱字指摘あったら直します。

指摘お待ちしてます。

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