第5話 軍事ロボットの嘘
私は、「破壊」の為に生まれタ。
私は、「親」の為に働ク。
私は、「仲間」を死なせない。
私は。
……一体何を守ろうとしているのだろうか。
私たちが魔族地区に向かっテ2日目の朝。太陽が昇り始めてきタ。
初日は宿にまでたどり着かズ。親の同類の言葉で「野宿」というらシイ。全員持ってきた飯を喰らってイル。データ上、そろそろ狩りや採集を始めなければ、人族は餓死してしまう、とインプットされてイル。
「おはよう!みんな、よく眠れた?」
世界最強勇者:アレン殿。よく皆のことを気に掛けているようダ。
「ああ、おはよう。私はよく眠れた。フィズは起きて祈祷に行った。」
僧侶:ヨシツギ殿。彼もまた早起きでアル。
「メルト殿はまだ寝ているようダ。彼女が準備出来次第、出発で良いだロウ。」
まさかこの私が、人族とパーティを組むとは思ってもみなかっタ。
人族の精鋭が集まっテ作ったという、「AP3」という団体。彼らは私の親でアル。
最先端AIが導入され、高度自立思考が可能。戦闘用物資を選定して回収、自身の体内でクラフト可能。能力解析機能、未知の戦闘をデータ化して学習、実際に動けるように設定されている、とのことダ。
私自身の身体情報やこの世の生き物の情報は既に全てインストール済み。力の使い方も親の力を借り、使いこなすことは容易ダ。
親からの命令に従い、人族の王、と呼ばれる男の元へ出向。そして、このパーティ「ファネスタ」の一員として、魔族地区へ向かうことになっタ。
私の仕事は3つ。「親の命令に従うこと」、「仲間を守ること」。
そしてもう一つ。
「魔族を殺すこと」。
この国の法律では、人族も魔族も共に「不殺の誓い」が交わされてイル。破れば2頭身離れた家族共々処刑の対象になるノダ。
だが、この法律は穴がアル。
我々ロボットにはその法律は適用されない。
例えされたとしても、ただ私一人がスクラップとなるだけダ。親は法律の範囲外となる。
パーティに参加した彼らがなぜ、これに同意したのカ。それはわからないが、利害が一致しているのだから問題は無イ。
「今日通るところは魔族地区の中でもかなり治安が悪いらしいです。気を付けていきましょう。」
「だな。まあこの精鋭揃いのパーティで負けることないだろ!最強ロボットのJDもいるし!」
ヨシツギ殿とアレン殿が笑顔で話してイル。
「もちロン、私の仕事は仲間を守ること。私は皆さまを死なせたりしまセンよ。」
そう、私の仕事は仲間を死なせないこと。死ななければ、どうだっていい。
私に嘘をつく、という機能は備わっていナイ。私の考えをそのまま言ってイル。
人族というのは本当に弱い存在ダ。思考力も私たちAIに劣り、個人の戦闘力は本当に乏シイ。私たちロボットがいなければ、か弱い魔法に頼るのみ。かく言う私ですら、素材があれば魔法を使えるというのニ。
もし、人族最強のパーティである彼らも弱い存在であるならば、それは私が守るべき対象であるのだろうか。
私は魔族を殺すために生まれた。そして人族を守る使命を持つ。
だが、その対象が救いようもない者であれば。それは私の仕事を放棄することと天秤にかけなければならなくなる。
さあ、教えてもらいますヨ。あなたたちが、私に「守られるべき存在なのかどうか」を。
憎き魔族を倒すのだから、邪魔をしないでくれよ。人族。