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41話 デート?

マリー視点です。

その昼下がり、私はお使いの帰りだった。

帰り道、最近時々かんじる薄い気配が尾けている事に気付く。


薄い気配は屋敷にまで付いてきた。

屋敷まで付いてくるのは珍しい、これはもしかすると、、、。

そう思って庭の外れの東屋に行ってみる。

近くの茂みに真っ直ぐに向かい、声をかけた。


「何かご用でしょうか?」


「どうして分かったの?」

ガサガサと茂みから栗色の頭が除く。前に合った時より口調がくだけている。


「フィーの気配は以前会った時に覚えました。」

そう言うと件の栗毛の美青年は嬉しそうに笑った。

相変わらず変な奴だ。気配を覚えられているなんて危険だとは思わないのだろうか。


「アーノルドに用なら本日は仕事です。」

「知ってるよ。今日はマリアンヌさんに用があったんだ。」

「マリーで結構です。ご用とは?」


「前に言ってた、お詫びとお礼をしたいんだけど何を贈ったらいいのかさっぱり分からないから直接聞こうと思って。」


「、、、、、ああ、律儀な方ですね。」

私は以前、フィーから弱った猫のアーノルドを受け取った時の事を思い出した。

そういえばその時、よくは分からないが話の流れでフィーがお詫びとお礼を贈ると言っていた。


「うん。約束したしね。欲しいものを教えて。」

フィーはそう言って屈託なく笑う。


聞かれて欲しいものを考えてみるが、特に思い浮かばない。

少し前までなら、カイン・オルランドの首であったが今はそこまでは考えていない。


「特にはないですね。」

「えっ、困ったな。」

「そうですね、あ、探しているものならあります、、、、、。フィーは呪いの道具について詳しいですか?」

アーノルドの友人で魔法使いなら詳しいかもしれない、と思って聞いてみる。


「呪い?あー、まあ、普通の人よりは。呪いの道具を探してるの?」


「はい。そっち系の魔道具店に行きたくて、店の目星もつけてるのですが、主より1人で行ってはダメだと言われております。詳しい方と一緒でないとダメだと。なのでご一緒していただく事でお詫びとお礼をしてもらう事にできませんか?」


「えっ、うん。もちろんいいよ。ねえ、それってデート?」

フィーがぱあっと顔を輝かせる。

なかなか可愛く笑う奴だ。


「フィーは未婚ですか?」

「うん。」

「未婚の男女が外で遊ぶ事を一般的にデートと言うので、デートでしょう。夫婦で行く事もあるようですが。」


「誘われたのは初めてかもしれない。嬉しいものだね。」


フィーがすごく嬉しそうにほくほくしている。

そこまで嬉しそうにされると何だか申し訳なかったような気もしてきた。


「私などが最初に誘ってしまい申し訳ありません。取り消しましょうか?」


「えっ、取り消さないで、最初がマリーさんでいいよ。じゃなくてマリーさんがいいよ。いつ?いつにするデート。」


「次の私の非番の日で良ければ明後日です。行きたい店は昼過ぎに開店するので、お昼に待ち合わせしましょう。」


「馬車で迎えに来るよ。」


「それはダメです。目的の店は少し治安の悪い界隈の路地裏にあります。馬車で行くのは目立つと思います。」


「じゃあ、ここに今日みたいに迎えに来るよ。」


「分かりました。ところでフィー、貴方が私と親しくする事を貴方の家の方は良く思っていないようです。」

私の言葉に朗らかだったフィーが固まった。顔に笑顔が張り付く。


「どういうこと?」


「貴方に付いている護衛ですが、何度か私を監視をしていました。フィーはなかなかのお家のご子息とお見受けします。家の方の不興を買うような交流は止めておいた方が良いと思いますので、デートも断っていただいても大丈夫ですよ。」

今日のお使いの帰り道でもフィーの護衛の薄い気配が私を尾行していた。私を監視、もしくは調査しているようだ。

悪い虫の類だと思われているのかもしれない。

その薄い気配は今はフィーの背後に控えている。


「断らないよ。そういうのマリーさんは気にしないで。」

フィーの笑顔は張り付いたままだが、気配で怒っているのが分かる。セレス様がマジで怒っていた時と似ている。

私がフランシス様に夜這いした次の日のセレス様だ。


家の事について口出しするのはまずかっただろうか。フィーの怒りは私ではなく家の者に向けられているようだ。

というか、今まさに背後に居る護衛に向けられている気がする。


「一度、きちんと家の方とお話しされるのが良いかと思います。」


「うん、それはそうするよ。じゃあマリーさん、明後日にね。」

そう言うとフィーはまた茂みから帰って行った。


それにしても、近寄る女を警戒して監視させるなんてどれだけ過保護なのだろう。

フィーを見送ってからそう思って呆れてしまう。

本当に一体どこの坊っちゃんだ。





***


「ジャン?どうしてマリーさんにバレてるの?」

ノース子爵邸を後にして、ジャンは久しぶりに一番怖いレベルのフィッツロイ殿下に詰め寄られていた。


「すいません。あの方物凄く勘が良くてですね。野生動物並なんです。いつもの尾行よりも距離は取っていたんですよ。」


「だからって、バレてたら仕事にならないよね?もう一度修行しなおす?引退したベンを呼び寄せる?」

フィーの口から元鬼班長の名前が出てジャンは震え上がる。


「ベンジャミン卿は今はのんびり騎士団生活を楽しんでおられます。腰も悪くしてますし、お手数をおかけする訳にはいきません。それに言い訳にしかなりませんが、マリーさんが本当に特殊なんです。あの方そのまま影に入れますよ。もういっそのこと影でお側に置かれてはいかがですか?」


「そんな風に手に入れたくはない。」

フィーが不機嫌にそう言う。


「手には入れたいんですね、、、。」

難しいと思いますよ、もごもごとジャンは言った。





マリーとセレスの護身術の師はこのベンジャミン卿です。どこかで入れるつもりが入らなかった。

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