姫君と初めての外出
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恵が風呂から上がったら、僕も風呂に入った。
今日は1日いろいろあったので、全身をじっくり見る機会と言うのはなかった。
風呂の大きめの鏡で見てみる。
見事なプロポーションの全裸の美少女が鏡に映っていた。
気恥ずかしくなって目をそらす。
胸はかなり大きい方なんだろう。
確か母さんは店員にEカップだと言われたそうだ。
僕の想像より、かなり小さい。
Eカップと言うとかなり巨乳のイメージだが、鏡に映った自分の胸はちょっと大きめだがCカップくらいかなあと言った感じだ。
案外こんなものなのかもしれない。
胸をさわってみる。
柔らかい感触と、自分の胸が触れる感触が同時に押し寄せてくる。
少し赤面してたが、段々冷めてくる。
(意外と大したことなかった・・・ような気がするけど、人のを触るとまた違うのかな?)
そして、局部を見ると、薄く茂みが見える。
どうやらこの体は体毛がかなり薄いようだ。
本来の自分の体と比べるとかなり違和感を感じる。
当然ながら、男の証が見事になくなっている。
一度も使わずに無くなっちまったな・・・。
ガックリうなだれる。
お風呂に入ったら中に水が入ったりしないんだろうか?
後でネットで調べてみよう。
そう思いながら、風呂に浸かる。
いつもより丁寧に洗って風呂から出た。
開放感が気持ちがいい。
バスタオルを胸の上に巻く。
タオル地のワンピースのようにする例のアレだ。
漫画やアニメでよく見る姿を自分でやるとは思っていなかった。
洗面台の鏡には薄紫色の髪をした美少女が映っていた。
髪は濡れたままだ。
脱衣所のオレンジ色っぽい明かりは、濡れた髪がかかった肩を照らす。
光の加減か、かなり艶めいている。
その姿が気恥ずかしくて少し赤面した。
恵が風呂場のドアを叩く。
「お兄、上がった?」
「どうぞ。」
そう言うと嬉しそうに入ってきた。
「髪はちゃんとコンディショナー付けた?」
「一応ちゃんとできたと思う。」
「折角綺麗な髪なんだから、ちゃんと手入れしないともったいないよね。」
そう言うと恵は髪をチェックしてくれる。
恵が丸イスを台所から持ってきてくれて、洗面台の前で座った。
そして、ドライヤーで乾かし方を教えてくれた。
「ありがとう。助かるよ。」
そう言うと恵はちょっと照れたように笑う。
「どういたしまして。」
恵が僕の世話を甲斐甲斐しくしてくれるのは正直助かる。
分からないことだらけだからだ。
ちょっとお兄ちゃんっ子(お姉ちゃんっ子?)過ぎる気がするが、いてくれなかったら途方に暮れていたかもしれない。
髪の手入れが終わると僕は恵と手を繋いで居間に顔をだした。
母さんに挨拶する。
「お休み」
「おやすみなさい。疲れたでしょう。ゆっくり休んで。」
「お休み裕樹、恵。裕樹はあまり気を落とすなよ。」
「ありがとう。父さん。」
そう言って部屋に戻ったが、恵が自分の部屋から枕を持ってきて僕の部屋に入ってきた。
「お兄、一緒に寝ていい?」
「いいよ、一緒に寝よう」
「やったあ。」
そう言うとポスンとベッドに倒れこむ。
僕はしばらくネットで転生事件のことを調べた。
ネットではこの事件をLROキャラ転生事件と呼ばれているようだった。
幾つかの情報が手に入ったが、初日だからなのかあまり確定的な情報は無かった。
恵が眠そうなので早めにベッドに入った。
恵はかなり寝相が悪くて、一緒に寝たのをちょっと後悔した。
次の日、僕は恵と一緒に起きた。
寝るのが早かったのでさすがにキチンと起きることができた。
ライモを見ると、中島と飯田から親と一緒に学校に行くとメッセージが来ていた。
出来るなら一緒に来ないかとあったので、どうしようか考える。
この姿で外出するのは怖いが、いつまでも引きこもっているわけにはいかないので、僕も一緒に行くことを決心する。
朝食を食べながら、僕も母さんと一緒に学校に行きたいこと、中島と飯田も学校に行くことを話した。
反対されるかとも思ったが、スンナリ許可が下りた。
恵と父さんが家を出るのを見送る。
特に恵は過剰なまでに僕を心配してくれるが大丈夫だからというとようやく手を放して登校した。
昼食をとってから母さんと一緒に学校に出かけた。
この姿で外に出るのは初めてだ。
鏡で何回もおかしくないかチェックしたが、不安が残る。
服装は昨日、買ってもらったばかりのデニムのワンピースだ。
薄い紫色の髪はあまりに目立ちすぎるので、つばが全周についている白い丸帽子を被っている。
「緊張してる?」
「してる。怖い。」
僕の声は少し震えていたかもしれない。
「大丈夫?手、握ってあげようか?」
母さんにそう言われると、少し勇気が出てきた。
「大丈夫。行こう。」
初めての外出に僕の心臓は緊張で高鳴った。
(なんだ、なんてことないじゃないか)
僕はそう思った。
しかし、駅に着くまでの間に人とすれ違うと怖くなり、僕は母さんの腕にしがみつく。
男の時と違って、身長が低くなっている。
世界が一回り大きくなったようで、まるで自分が巨人の世界に迷い込んだように感じる。
きっと初めての外出の恐怖感もあるんだろう。
「女の子には優しくしなさい。」親戚のおじさんにはそう言われてきた。
僕は生意気なクソガキだったので、「今は学校でも男女同権って言ってるんだから関係ないだろ」と思っていた。
自分がいざ、その立場になってみるとこういうことなのかと思い知った。
確かにこんな華奢な体で一回り以上大きい男と同じ扱いをされたらたまったものではない。
足が震えた。
僕は何て情けない男なんだろう・・・あ、もう男じゃないのか。
僕が震えて足を止めるたびに母さんも足を止めて、僕の手を握ってくれた。
そのおかげもあって、駅に着くまでには男だった時と同じように落ち着きを取り戻すことができた。
電車に乗って、学校につくと校門の前で中島と飯田、・・・一緒にいる中年の女性は母親なのだろう・・・と落ち合った。
2人に逢った瞬間物凄い勢いで謝罪された。
「中島と言います。裕樹君が女の子になったのは僕らの責任です。申し訳ありませんでした。」
「飯田です。申し訳ありませんでした。」
「そこまでしなくてもいいよ。誰もゲームのキャラになるなんて思わないって。中島も飯田も被害者じゃないか。」
2人の母親は僕を物珍し気に見ている。
きっと性別が変わった人を見るのは初めてなんだろうな。
中島の母親が話しかけてくる。
「本当に女の子になっちゃったのねえ。」
「はい。びっくりすることばかりで・・・。でも翔太君のせいじゃありませんから、気にしないでください。」
そうフォローしておく。
「鈴木祐樹の母です。今日はよろしくお願いします。」
「こちらこそ。私は中島翔太の母です。」
「初めまして、飯田賢の母です。」
母親同士の挨拶が済み、学校の職員室側の出入り口から受付を済ませると、応接室に通される。
事前に話を通してあるので、僕らの担任と校長先生が応対してくれた。
まずは僕ら3人が自己紹介する。
僕が男から女に変わってしまったことを知った担任と校長の顔が強張った。
「ですよねー。」内心そう思った。
先生方から見たら特級の面倒事だろう。
校長先生と中島の母親が中心に話が進んでいく。
「とりあえず、政府からは身元の確認をしてほしいと言われていますが、専用の窓口に電話をしていただけましたでしょうか。」
「今日もかけたのですが、全然つながらなくて。」
「そちらには引き続き連絡を取っていただけるようお願いします。」
「学校の方では受け入れていただけるのでしょうか?」
「恐らくは、受け入れるということになると思います。しかし、我々も昨日の今日ですから、ハッキリとしたことは何も言えないのですよ。大変申し訳ありません。」
「このことは他の生徒には・・・」
「もちろん秘密にしていますよ。お帰りの際は目立たないように駅まで車でお送りします。」
結局は学校側も現時点では何も言えないということのようだった。
しかし、僕ら3人がどうなったのかがはっきりして、明らかに安心したようだ。
「当校からも上に変身現象の被害者が3人出たと報告いたします。追って何らかの指示が下りたらその都度お知らせいたします。」
「よろしくお願いします。」
僕らは別室で担任へ事情を説明することになった。
一人ずつ話をする。
「中島と飯田はともかく、鈴木は女の子に変わったのかあ・・・」
「ご迷惑をおかけします。」
「いや、責めているわけじゃないんだ。」
「制服とか体育とかトイレとかどうなるんでしょうか?」
「どうなるのかなあ。あくまでも現時点での俺の意見だが・・・。多分普通の女子と変わらない対応になると思う。女子生徒の側から拒否する意見が多数出たら・・・どうなるかわからんなあ。俺も初めてだし。」
「髪は地毛なんですけど、染めないとダメなのでしょうか?」
僕は薄紫色の特徴的な髪の毛を少しいじりながら担任に確認する。
「いやあ。大丈夫だと思うんだけどなあ。別にお前の責任ってわけじゃないし。詳しいことは追って連絡することになると思うよ。」
やはり現時点では確定的なことは何も言えないようだった。
僕と同じように中島と飯田も聞き取りがあった。
2人とも大したことは聞かれなかったと言っていた。
「学校に行けるようになったら拙者たちも、鈴木殿がトラブルに会わないように協力するでござるよ。」
「及ばずながら、力になるよ。」
2人がそう言ってくれたので、少し安心できた。
こうして、学校への説明は終わった。
身長158cmの女性から見た身長175cmの男性は、身長175cmの男性から見た身長193cmの大男に相当します。
しかし、体の横幅や厚みも違うので恐らくもっと大きく見えるのではないかと思います。