プリンセス&カンファレンス3
LRO合同研究会2回目
2回目の研究会に出席するために協会のビルに出向いたでござるが運の悪いことに姫と御子神先輩殿とばったり会ってしまったでござる。
御子神先輩殿が気の弱そうな藤堂先輩殿に絡んでトライアングルソフトの開発チームと研究会をしているとばれてしまったでござるよ。
御子神先輩のようなタイプは拙者たちの周りには居なかったので拙者も御子神先輩をうまくあしらう自信が無いでござる。
比較的常識人で隙の無い岩田先輩殿ではなく、藤堂先輩殿狙うあたり、獲物を仕留める嗅覚に優れているでござるよ。
全く始末に負えないでござる。
拙者も飯田殿も別に姫を仲間外れにするつもりではなかったでござるが池田さんに言われていたので仕方なかったでござるよ。
罪悪感一杯で会議室に向かったでござる。
別れ際、姫の目に涙が滲んでいたのを見たでござる。
もう胸は罪悪感で押しつぶされそうでござるよ。
普段は聞き分けの良い姫が涙まで滲ませるのは相当ショックだったのでござろうな。
連日のレッスンで疲れ切っているのかもしれないでござる。
帰りに何かフォローしておいた方が良いでござろうか。
「では、始めましょう。」
宮田課長が司会になって会議が始まる。
「今日はトライアングルソフトさんから前回の研究会で出た意見を実際にやっていただくことになっています。
こちらは、アメリカ政府からも結果を教えてほしいと言われています。
世界中から注目されていると言ってもいいでしょうね。」
「では、始めますね。
まず、武器は前回意見の出たゴッドスレイヤーと言う武器を作成しました。
鎧は神の鎧を作成しました。
どちらも性能はそれぞれ攻撃力・防御力999,999です。
ちなみに見た目は初期装備の見習いの剣と鎧になります。
スキルは無属性魔法の「神の裁き」と言う魔法を設定しました。
こちらも威力999,999で、消費MPは1ですね。
そして、今回作成したすべての装備品の使用可能レベルは1です。」
「ゲームに実装されたらとんでもないバランスブレイカーでござるなあ。」
岩田先輩殿たち3人も頷く。
「本社とこちらのビルをVPNで繋いでいます。
本来、会社の規則上認められていないのですが、政府と協会からも強い要請がありましたので特例と言うことで接続しています。」
では、実際にやってみます。
・・・・はい、これで岩田君たち4人に、ゴッドスレイヤー、神の鎧、神の裁きの魔法書を持たせました。
何か変わりましたか?
拙者たちはアイテムボックスを確認してみたが、何も起きなかったでござるよ。
「残念ながら何も起きていないです。」
「藤堂、中島、飯田、どうだ?」
「「駄目ですね」」
「駄目だったでござるよ」
「そうですか、では、これで改めて、何らかの方法で当社のゲームのデータベースがコピーされていたとしても、盗まれたデータは既に独立したシステムにインテグレートされていることはほぼ確実ですね。
我々は未知の方法を使ってデータを窃盗されただけで、今回の事件とは無関係でしょう。」
「少し残念な結果でもありますね。」
「協会さんの立場ではそうかもしれません。
しかし、自分たちが突然神の如き力を与えられたと言われたらどう思いますか?
当社のデータベース上からキャラを削除したら現実の人間が消去出来てしまう可能性もあったわけですからね。
私はその責任を負い切れる自信はありません。
正直に言うと、無関係でホッとしています。
先ほどは本当にアイテムが出現したらと思うと寿命が縮みましたよ。」
この日はアイテムボックスなどのシステム周りの仕様を確認したでござる。
ゲームと一番違っているのはアイテムボックスの仕様で、アイテムボックス中に入れられる個数がかなり増えているでござるよ。
これは、ゲーム内にあった荷物を預けられる倉庫と言うシステムが無くなったからでござろうな。
あるのかもしれないでござるが、今のところは発見されていないでござる。
上限は不明でござるが、ダンジョン産のアイテムや元々持っている装備品のみ入れることが可能で、現実の物品、例えば、会議に出たペットボトルのお茶などは入れることができないでござる。
倉庫に入れていたアイテムも全部個人のアイテムボックスの中に入っているでござるな。
今日はシステム周りのことを確認して、3回目、つまり次回にスキル周りのことを確認することになったでござる。
研究会の終わりの方に宮田課長殿に何かを伝えに来た職員がいて、それを聞いた後、宮田課長は慌てて出ていき、アシスタントの串田殿が後を引き継いだでござるよ。
実は中身は少し聞こえていて、姫が倒れたということでござった。
拙者たち4人は顔を見合わせる。
まさか、さっきの事と何か関係が・・・・?
我々は会議が終わった後、池田さんに話を聞きに行った。
御子神先輩殿も居たでござるよ。
「姫が倒れたと聞きました。何かあったのですか?」
御子神先輩殿も池田殿も「あちゃー」と言う感じでこめかみを抑えているでござる。
それを見た岩田先輩殿が疑惑を深めたようでござる。
「御子神、お前がまた何かしたんじゃないだろうな。」
「ウチは何もしとらんで?逆や逆、ウチが姫を介抱したんよ。」
「本当か?じゃ、何があった。?」
「ウチの口からはちょっと言えんな。」
「お前、何かやったな?」
池田さんが口を開く
「ちょっと・・・」
「池田さん、もうだめやこいつら。言うしかないわ。
転生前は陰キャでコミュ障のどうしようもないオタクやから。
女子に気ィなんて使われへん。」
「で、何をした。御子神。」
「姫はな[オ ン ナ ノ コ ノ ヒ]や」
「は?」
「だから、生理や生理。お前らがしつこく聞くから言ったんやからな。
姫も男子4人に自分が生理で倒れた何て知られて可哀そうや」
「私も岩田君たちはデリカシーが無いと思う。
ユイちゃんを心配しての事だから、これ以上は言わないけど、そう言ったことに気が使えないと嫌われるわよ?」
池田さんがちょっと怒った顔でそう言った。
自分がかなり余計な追及をしたことを覚った岩田先輩殿の顔色が途端に悪くなる。
「お、おい・・・まさか姫には言わないよな?」
「言うにきまっとるやろ。仲間外れは可哀そうやないか。」
どうやら、研究会を内緒にしていたことも根に持ってるようでござる。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。頼む。姫には言わないでくれ。」
「えー、どうしよっかなー。さっきの態度はいくら何でも失礼やろ。」
「スマン。この通り。」
勝ちを確信した御子神先輩殿の顔が邪悪な笑みでニヤァァァァァと歪む。
「そう言えば岩田、この間ウチにようアイアンクローかましてくれたな。あれは痛かったで?
こんな美少女の顔にアイアンクローってお前の顔みたいに不細工になったらどうしてくれるん?」
「あれはお前が・・・」
(おかしいでござる。岩田先輩殿は我らの中では一番の常識人。
それが何も考えてなさそうな快楽主義者の御子神先輩殿にやり込められているでござる。
この世の正義は死に絶えてしまったのでござろうか?
まるで何かに化かされているような気分でござる。
ひょっとして御子神先輩殿は実はミトラに化けた化け猫モンスターなのでは?)
拙者はリアルなネコの頭に人間の胴体がくっついていて尻尾が三本あるような化け猫モンスターを想像する。
「あれー、さっき謝ったばかりの巌君が、ウチに口答えするのかなー?」
御子神先輩殿はここぞとばかりに調子に乗りまくって岩田先輩殿のお腹の当りを尻尾でツンツンし始めたでござる。
拙者は小声で忠告する
(岩田先輩殿、ここはさっさと謝って仕切り直した方が良いでござるよ)
(ぐっ、分かった)
「済まなかった。この通り。」
なんという理不尽。
拙者も自分は常識人寄りの人間であると思っているので岩田先輩殿と自分の姿がダブって見え、血を吐くような思いだったでござる。
「まあ、ええわ。この美少女アカネ様は心が広いから許したるよ。」
全っ然、広くないでござるよ。
拙者はそう思ったが、もちろん口には出さなかったでござる。
姫は既に自宅に戻って休んでいるとのことでござるが、御子神先輩殿も上機嫌で帰っていったでござる。
尻尾がずっとゆらゆら揺れていて本当に嬉しそうだったでござるよ。
御子神先輩殿、恐るべし。




