プリンセス&プロモーション
夏休みに入ってすぐ、ナコール・ファニーズ・リズミサ・美聖堂から提供品が届いた。
自宅じゃなくて、協会の事務所に。
スタイリストさんとメイクさんが3日ほど使って使い方や着回しの方法を教えてくれるとの事だった。
池田さんに案内されて送られてきた服を見る。
「凄いわねユイちゃん。女の子なら大喜びよ。」
しかし、僕は送られてきた大量の服を見て軽くパニックになる。
「え?え?これどうしたらいいんですか?
なんでこんなに一杯あるんですか?
お母さんから買ってもらったワンピースは1種類二着だけなんですけど・・・」
「今日から三日くらいかけて着回しの仕方の勉強しましょうね。
スタイリストさんがちゃんと教えますから大丈夫ですよ。
こういう服、私も高校の時着たかったなあ。」
「なんだ、池田、お前女子校生の時あったのか?」
丁度宮田課長が通りかかってまぜっかえす。
「幾ら課長でも殴りますよ。」
池田さんが拳を握りしめる。
「おっと怖い怖い。
ユイちゃん、コーディネートとメイクの勉強終わったらこの荷物協会からユイちゃんの自宅に送る手筈になってるから、心配しなくていいですよ。」
「ありがとうございます。宮田課長。」
「もう。課長、報告書上げていますからね。」
「解った。解った。仕事せにゃー」
そう言って宮田課長は立ち去っていった。
「提供品の服の方は市販品と色や大体の形は同じなんだけど、型は日本人離れした体形をしているユイちゃんに合わせて作ってあるそうよ。
プライベートの時は必ずこの中から選んでね。
今日から3日間かけて着回しの仕方や組み合わせ方を学んでもらいますが、最終日に写真を撮らせてもらって、ファニーズやリズミサのWEBページや業者向けのカタログに使わせてもらいます。いい?」
「解りました。」
「お母さんは年齢的にこういう服は無理だと思うけど、妹さんにはサイズを教えてくれれば無償で提供してくれるそうよ。はい、カタログね。」
僕はA4の紙を1枚渡された。
紙にはQRコードが4つ入っており、スマホで読み取ると公式HPにアクセスできるのかな?
QRコードの下にはファニーズ・リズミサ・ナコール・美聖堂と打ってある。
「そのQRコードを読むとカタログがダウンロードされるので希望の品番を教えてもらえればユイちゃんの自宅に届くように出来るわ。」
「何から何までありがとうございます。」
「美聖堂のコスメの方も協会に届いています。
早速今日からメイクさんが使い方を教えてくれます。
ナコールの下着の方はさすがに自宅に直接届きます。
こちらもお母さんと妹さんの分も提供していただけるそうなので遠慮なくいってね?」
「解りました。」
池田さんに案内されて、準備されている部屋に向かう。
全く未知の世界である化粧の仕方を習う。
メイクは遠藤さんと言う女性の方だった。
「私がユイさんのメイクを担当します。遠藤久代です。
よろしくお願いします」
「鈴木ユイです。よろしくお願いします。」
「それじゃあちょっとやってみましょうか。」
「はい、お願いします。」
「じゃ、わかりやすいように顔の半分だけメイクしてみるわね。
ユイちゃんはまだ全然若いし、無理してお化粧する必要は無いと思うけど、体調があまり良くない時のカバーの仕方とか、目の周りとか自然に、健康に見えるようなチークの仕方とかを中心にするわね?」
そう言われても何もわからないので、もう全部お任せだ。
顔の半分だけやってもらった。
お、なんか、とても明るく、健康的に目立って見える。
プロってすごい。
「ユイちゃんは元々がとても美人さんだから、あまり頑張ってメイクする必要ないと思うわ。
目の下にクマが出来たりとか、何かあったときのカバーを中心に少し目の周りがハッキリ見えて薄くチークを塗るくらいにしておきましょう。
リップも自然に見える色にしましょう。
じゃ、まず手始めに残りの顔の半分だけやってみて。」
僕は出来るだけ遠藤さんと同じようにやってみた。
当然だが、同じようには出来ない。
遠藤さんは苦笑しながら、フォローしてくれた。
「まあ、最初は誰でもこんなものよ。
ダンジョン庁と協会のお仕事の時は私が全部やるので心配しなくていいわ。
いきなり全部は無理だと思うから、出来るだけ簡単なことを少しずつ練習していきましょう。」
下地を作って、アイラインを強調して、チークを塗って、リップを塗って・・・
スゲー大変だ。
女の人は出かけるたびにこんなことしてるのか。
「これ、すぐに外出できないですよね?。」
「そうね。でも女ってそう言うものよ。」
「そうですか・・・」
僕は落胆した。
正直にいうと、面倒だなあと思う。
しかし、習ってしまった以上はやらないとダメなんだろうな。
そこから何回かやり直して、遠藤さんから一応及第点を貰った。
「あんまりやり過ぎるのもよくないから、この辺にしておきましょう。
美聖堂さんからは、あらゆるものを揃えてもらえることになっていますから、道具やコスメの心配はしなくていいわ。
道具の方は家に持ち帰って一日一度は必ずメイクしてください。
一日一回メイクした自撮りの写真を撮って私のメアドに送ってください。
週に一度採点します。
駄目だったところはキッチリ指摘するから手は抜かないでね?」
「解りました。」
これは大変だ。
碧ちゃんに聞いたことがあるが、うちの学校は校則にはメイクが駄目かどうかはハッキリ書いておらず、プチプラメイクをしている子は多いと聞いていた。
僕も新学期が始まったら毎朝メイクしていこう。
大変だが、やるしかない。
メイクが終わった後はスタイリストさんから、届いている大量の服の着回しの方法を習う。
ちなみに靴とカバンも付いてきている。
普通の女子高生なら大喜びなんだろうな。
女子が小さな鳥の餌しか入らないような無意味そうな小さなカバンを持っているのは女子の服にはポケットがあっても入れると型が崩れるので普通は使わないと言うことを始めて知った。
大抵の服にはポケットが付いてない。
もう実用性なんて皆無だ。
こんなに大変なのかよ。
抜け感?
こなれ感?
なんだそれ?
魔法の呪文のようなワードをいくつも言われながら、着回しの仕方を習う。
メイクの仕方と合わせてもう頭がパンクしそうだった。
LROのDPSの出し方なら得意なんだけど・・・・
そんな泣き言を言っても現実は変わらない。
これならダンジョンでゴブリンを狩っていたほうがよっぽど楽だ。
着回しの方法を学んだあと、山田先生のマナー講座を習う。
最初は厳しかったが、最近はダメ出しされることもほとんどなく、新しいことを学んでいる。
今は美しいしゃがみ方を習っている。
こうして、僕はメイク・ファッション・ダンス・ボイトレをしながら夏休みを過ごしている。
ダンスとボイトレはアカネ先輩と一緒だ。
合間にダンジョン庁とダンジョン協会のポスターとパンフの撮影も入っている。
ポスターとパンフの撮影ではコスプレのドレス鎧が用意されていた。
当日は池田さんが随行してくれる。
「あのぅ。これ、Fortune/daylightの姫騎士リリアナの衣装に見えるんですが・・・
版権とか大丈夫なのですか?」
アニメ化もされた大人気ゲームの名前を挙げる。
「あ、原作のブナしめじ先生にアレンジして使ってよいかどうか伺ったんだけど、是非そのまま使ってほしいと言われたので、そのまんま使わせていただくことになりました。
クレジットの表記も入ります。
顧問の税理士と相談した結果、かかった版権料は協賛と言う形で向こうから全額頂けることになっています。」
(えーっ!)
と思ったが当然口に出せるわけがない。
何カットか撮影したが、このポスターも協会の事務所にガンガン貼ることになるらしい。




