プリンセス&ショーファードリブン
次の日
学校に行こうとしたら、家の前に黒塗りの車が止まっていた。
中から黒いスーツを着た運転手が出てきた。
「鈴木ユイ様ですね?。学校までお送りします。」
「え・・・。」
僕が躊躇していると池田さんから電話がかかってきた。
「あ、ユイちゃん?昨日のこともあるので、今日から送迎の車を付けることに急遽決まったから。遠慮しないで使ってね。
中島くん達には言ってあるから。」
「解り・・・ました。」
僕は迷ったが、問答しても仕方ないことなので了承した。
「お忙しいところありがとうございます。よろしくお願いします。」
僕はそう言って運転手さんに頭を下げる。
「いえ、お気になさらずに。さ、参りましょう。」
そう言って僕は車で学校に送ってもらった。
恵が目を白黒させている。
母さんも運転手さんによろしくお願いしますと頭を下げていた。
学校前に付くと僕がドアを開けようとする前に運転手さんがドアを開けてくれた。
まるでどこかのお嬢様みたいだ。
「ありがとうございます。」
「行ってらっしゃいませ」
僕が黒塗りの車から降りて運転手に頭を下げられているのを見て、回りで見ている生徒がざわざわしている。
降りるときはもちろん、マナーのレッスンで学んだ美しい車の降り方を実践している。
どこでカメラが回っているかわからないからね。
うちの学校は偏差値は高いが普通の公立高校なので黒塗りの車で校門に乗りつけてくる生徒などまずいない。
目立ち過ぎだ。
僕は努めて意識しないように振舞った。
マナーの練習が功を奏して、美しく見えるように歩くことに意識を集中できた。
「姫!」
中島と飯田が待っていた。
本当にお姫様かどこぞのお嬢様にでもなった気分だ。
「おはよう」
「おはようでござる。姫」
「おはよう。姫」
「昨日は大変だったね。」
「そうでござるな。
その件については昼休みに岩田先輩から話があるでござるよ。」
少し気になったが、何れわかることなので気にしないで授業を受けた。
昼休みになるといつもの6人で昼食をとる。
すっかり恒例になってクラスのみんなも慣れてしまった。
岩田先輩から昨日の黒服について話があった。
「昨日の黒服だがな。どうも外国の工作員らしい。」
「外国・・・どこの国なんでしょう?」
「俺も明言はされなかったのではっきり言えないが、日本の近くの大きな某国・・・とだけ言っておく。」
「そうですか・・・。」
「俺たちも事情聴取に付き合ったが、近々SPが増員されるそうだ。
警察官の巡回も増やすと言っていたな。」
「うちのSPも姫につけたって。
昨日見たやろ?
完全に姫狙いで、ウチはまるっきりシカトされてたし。
あいつらこんなか弱いミトラの女子にスタン警棒で容赦なく殴りかかってきたで。」
「昨日の戦いっぷりから判断すると、御子神がか弱いかどうかは疑問が残るところだが、、確かに完全に姫を狙ってたな。
元々、ウォープリンセスの数は少ないようだから、重点的に姫をガードするのが正解だろう。」
その言葉を聞いて、アカネ先輩がニヤリと笑う。
ミトラの本能なのか、強いと言われることには喜びを感じるようだ。
ゲームでは確かそんな設定があった。
ミトラは主に前衛職、特にアタッカーに向いている種族だ。
相手に大ダメージを与えるクリティカルヒットが出る確率が他の種族よりも少し高い。
「後は、何とかレベルを上げたいところだな。
今のところは普通の人間が相手だが、高レベルのLRO転生者が出てくると厄介だ。」
「そうですね。
だけど、僕はしばらく身動き取れないです。」
「ウチもや。姫と一緒にレッスンしとるからなあ。」
「外国のLRO転生者に関しては入国を許可しない方針にしたほうがいいと協会の方には報告しておいた。
俺たちの身体能力を考えれば人間兵器と言っても差し支えないからな。」
「そうでござるな。」
「僕の方からも父さんにお願いしておきます。
何とか名目を付けて中島・飯田・岩田先輩・藤堂先輩だけでも先行してレベル上げが出来ないかどうか。」
「そうだな。ダンジョン協会の専務理事の娘の話なら上に上げてもらえるだろう。」
「ただし、無理はしないでくださいね。
死んだらどうなるかはまだ誰にも解らないわけですから。」
「解っている。無理はしないさ。」
この日、僕と御子神先輩はボイストレーニングの最初のレッスンを受けた。
ボイストレーニングはマナーのレッスンやダンスのレッスンに比べると割と感触が良かった。
ここでも僕よりアカネ先輩の方が評価が高かった。
好きこそものの上手なれというけど、さすがだなと思う。
終わった後、僕だけ山田先生のレッスンを受ける。
「今日は悪いところはありません。」
遂に隠し撮りに対してボロを出さなかった。
僕は思わずガッツポーズをしたかったが、それもマナー教育ではマイナスになりそうだったので、止めておいた。
「ありがとうございます。嬉しいです。」
「今日から、口調も直していきましょうね。
[僕]は駄目です。公式の場では[わたくし]、プレイぺートでは[わたし]で統一しましょう。
貴方は男の子にしては普段の物腰が柔らかいですから、それだけでもう合格点よ。
恵ちゃんにも協力をお願いしていますので、家でも気を付けなさい。」
「ハイ、キヲツケマス」
僕は思わず口調が固くなる・・・・
本当に厳しいなあ。
この日うちに帰ると恵が玄関まで出迎えに来た。
「お兄、お帰り」
そう言われた。
僕はニッコリ笑って言う
「なあに、恵ちゃん。お姉ちゃんはもう女の子よ?。」
そう言って優しく微笑む。
靴を脱いで上がると、恵の手を優しく握る。
「お姉ー」
恵は手を握りながら甘えてくる
(フッ。馬鹿め)
僕は某沖〇艦長のようなセリフを思い浮かべる。
居間に入ると僕は恵の手を強めに握る
「イタタタタタタタ。ごめんなさい。お姉ちゃん許してー」
「あら、恵ちゃん。お姉ちゃんはちっとも怒ってなんてないわよ?」
そう言って恵の後ろに回り、こめかみを両拳で挟んでグリグリする。
いわゆる、ウメボシと言う奴だ。
「ああああああああああ。ごめんなさいお姉ちゃん。恵が悪がっだでず。」
Lv7になった僕のウメボシはかなり痛いと思う。
もちろん加減はしている。
恵は涙目だ。
「ユ、ユイ・・・もうその辺にしてあげた方が・・・」
「何でしょう、お母様
いやですわ。
姉妹のスキンシップには親と言えどもお口を挟まれるものではなくてよ?」
引きつった笑みを浮かべてそう言う僕の後ろに母さんは鬼のオーラが見えたそうだ。
(少しやり過ぎたわ)
後からそう思ったと聞いた。
そう思ったら途中で止めてよ!。
この日の夕食時、父さんに岩田先輩たちのレベル上げの話をしておいた。
ダンジョンは現在封鎖中になっており、先行して入るということになると、協会に出資している会社間の調整が取れなくてなかなか難しいそうだ。
僕は・・・私はこれ以上無理を言うことは出来なかった。




