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姫君とアンニュイな午後

僕は居間に戻ると、母さんに間違いなくテレビで報道されていたゲームのキャラクターになっていると説明する。


「あんた、女の子でプレイしていたの?」


「メインは男だったよ。こっちは頼まれて作ったキャラクターだったんだ」


「頼まれる・・・?誰に?」


「友達とか・・・ゲームでの仲間とか・・・とっても珍しいクラスのキャラクターで最近こっちでばかりプレイしてたからかなあ・・・・」


ユイ・フォン・フロイツハイムはレアアイテム「古のティアラ」がないと転職出来ない特殊なプリンセス系と呼ばれるクラスだった。

プリンセス系のクラスは前衛としても後衛としても中途半端な性能しかなかったので、当初はネタ職とされていたが、後からかなり有用なバフをかけることが出来るクラスとしてゲームの中で引っ張りだこになった。

僕の本来のキャラクターは人間族の男で黒騎士だったが、有用なクラスであると判明してからはずっとユイでプレイしていた。

いや、周りの人たちから「お願い」されて実質ユイ以外ではプレイできない雰囲気だった。

ゲームでの事だったし、僕も未知のクラスであるウォープリンセスの性能にはかなり興味があったので、特に抵抗はなかったが、本音で言えば最初に作ったキャラでずっと使ってきた黒騎士の「ガッシュ」でプレイしたかった。

僕の思い入れは周りの友人たちも理解していたので、意に染まぬキャラプレイさせる代償として装備やアイテム面でかなり優遇してもらっていた。

それはウォープリンセスの「プリンセス」に引っ掛けて、通称「姫プレイ」などと言って笑い話になっていた。

あとの方になると一緒にパーティーに入る人は跪いて、「姫とご一緒出来て光栄です」と言うのが慣例(?)になっていた。

もちろん強制はしてない。

さすがに気恥ずかしかったが、ロールプレイの一環として受け入れていた。


「古のティアラ」は実装直後にはそれなりに出ていたらしいが、譲渡不可のアイテムの上、売却不可だった。

当初はネタ職とされていたため、殆ど使われずに大半はそのまま捨てられていたらしい。

一部のティアラは使われてキャラ自体は存在していたらしいが、人族の女性キャラにしか使えないのと、使うと強制的にレベル1になるので育てなおしになり、高レベルまで育てた物好きは僕くらいしかいないと言われているほどJPサーバーでは見なかった。

僕は一応、サーバー内のトップ攻略組に属していて、クランのメンバーやゲーム内での知り合い・友達が育てるのにこぞって協力してもらっていたため、早い段階でLv99までカンストすることが出来た。

それから転職アイテムであるティアラのドロップ率がかなり下がって、今ではほとんど見ることの無いクラスになった。

エンシェント・プリンセスから始まってバトル・プリンセス、ウォープリンセスと転職していくが、ウォープリンセスまで育てている人は見たことが無かった。


「裕樹。何か食べる?食べられる?」

僕は母さんの声で現実に引き戻された。


「今はちょっと無理かな。お茶か何かがあるなら飲みたい・・・」


「・・・・政府は緊急対策チームを作って対応に当たっています。ご自分やご家族の姿が変わられてしまった方は無用の混乱を避けるため、学校や仕事を休んでください。緊急以外の外出を控えて、以下の番号に連絡をしてください。追って指示があります」


テレビは姿が変わってしまった人たち向けの連絡先が公開されていた。

そこで個人情報を把握して、後から対応を行うようだった。


「この番号に電話してみたの?」

僕は出されたお茶を啜りながら言う。


「何回も電話してみたのだけど、繋がらなかったわ」


どうも、全国で数万人規模の被害があったと言うことで、政府の設置した電話は激混みしているらしい。


ニュースを見ながら、カフカの「変身」のようにでっかいイモムシにならなかっただけマシか・・・などとどうでもいい考えを巡らせていた。


昼には父さんから電話があって、母さんが僕のことについて説明していた。

父さんも情報を集めていたようだが、テレビで言っていること以上の情報は集まらなかったようだ。

会社の若手の何人かは被害に遭って、いつ出社できるのかわからない状況らしい。

一応、混乱を避けるため、政府から会社や学校に姿が変わった人たちに対して、無理に出社や登校させないようにとの通達があったようだ。


昼から、母さんが最低限度必要な下着や服を買ってきてくれるということなので、身長と体重、3サイズを測った。

メジャーが肌に触れるのが気恥ずかしい。


158cm、44kg、B83・W55・H85だった。


「これってすごいの?」

そう言うことにはまるっきり疎い僕は母さんに尋ねる。


「足もスラリとして、まるでモデルさんみたいなスタイルね。ホントに可愛いわあ」

うっとりするように言う。


準備を終え母さんは買い物に出かけていった。


留守番している間、学校はどうなるんだろう・・・外出するのが怖い・・・・クラスメイトの反応が怖い・・・・元に戻れるんだろうか・・・・将来はどうなるんだろう・・・。

一人になると様々な、殆どは良くない考えが浮かんでは消える。


「中島と飯田はどうしているかなあ・・・」

後ろ向きな思考から抜け出したくて、無理矢理考えを変える。

僕には二人の友達がいる。

もちろん、Lost Relic Onlineを一緒にプレイしているのだが、3人でクランを立ち上げていた。

一人は中島 翔太、ヒョロっとした長身で眼鏡をかけている。

歴史オタクでゲームでは人間族の金髪碧眼の白人キャラだったにも関わらず、幕末の4大人斬り河上(かわかみ) 彦斎(げんさい)から名前を取って、ゲンサイと言うキャラ名だった。

河上 彦斎は現代でいえばテロリストで、確かろくな死に方をしてなかったはずだ。

そう言った名前を平然とつける当り、歴史オタクの上に中二病迄発症していたのかもしれない。

ロールプレイの為か語尾には「ござる」を付けるのが癖だった。

クラスはアウトローな名前に似ずに聖堂騎士で、矛盾の塊みたいなキャラだった。


もう一人は飯田 賢、身長は160cmほどの小柄な男で、ゲームでは人間族のソーサラーで名前はアルバートだった。

こっちの名前は確か外国の偉人の名前が載っている人名事典から適当に付けたと言っていた。

外見は黒髪のアジア人っぽいキャラを選択していた。

賢は普段から物静かなタイプだが、ゲームの中ではかなり思い切った戦術や強引な戦術を取ることがあった。

キレると性格が一変するため、狂犬アルとあだ名が付けられている。

怒らせると怖いタイプだ。

僕らは学校では所謂オタクでスクールカーストでいえばあまり高い方ではない。

目立たないというか敢えて目立つ行動は避けていた。


ニュースが本当なら、2人も姿が変わっているはずだ。

ゲームのキャラはどれも美男・美女に作られている上に、身長もかなり高いはずので変わっているならばかなりのイケメンになっているはずだ。


僕が居間で考え事をしている間に買い物を終えた母さんが帰ってきた。


僕は下着3組とワンピースを2着渡された。

ワンピースはデニム地の地味な奴だ。

母さんが買ってきただけあって凄く主婦っぽい。

漸く恵の窮屈なパジャマから解放される。

僕は早速着替えて見た。


母さんから下着の付け方を習い何度か練習する。

そして、地味なワンピースを着る。

鏡の前でくるりと回ってみる。


「あら、似合ってる。美人さんだから、何を着ても似合うわねえ」


恵の頼りない、そして窮屈なパジャマから漸く解放された。

落ち着いた僕は少しはにかんだ表情を母さんに向けて、礼を言った。


「母さんありがとう」


「どういたしまして」


僕は礼を言うと自分の部屋に戻った。

確認したいことがあったからだ。



ちなみに身長158cm、15-19歳女性の平均体重は51.6kgで、44Kgは本当にモデル並の体重です。

ただし、本物のモデルはもっと身長が無いと無理です。


誤字報告いただきましてありがとうございます。

「意に沿わない」(いにそわない)は「相手の希望や要求などの通りに従えないこと」(主体=相手)

「意に染まない」(いにしまない)は「自分の気にいらないこと」「気が進まないこと」(主体=自分)

ですので、間違っていないかと思います。


12/23 副題を改題

「LRO転生事件の始まり」 から 「姫君とアンニュイな午後」 へ


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