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姫君とゴブリン事件2

「うわっ、何千匹いるんだこれ・・・」

飯田が思わず声を上げる。


全員が真っ青になっていた。


ふと、御子神先輩と目が合った。

御子神先輩はニヤリと笑った。


「よーし、全員乗っとるな?いない人手ぇあげてー」

御子神先輩の軽口にようやくみんなに笑顔が戻った。


恵が僕に泣きながらしがみついてきた。

「お姉~。」

僕は恵を抱きしめると背中をさすったり優しくたたいてあげたりした。

母さんと父さんもさすがに真っ青になっている。

他の家もみんな恐怖のあまり、家族で抱き合っている。


暫く抱き合っていると落ち着いてきたので、僕は恵を母さんに任せて、運転手の方に行く。


幸いなことに今日1日は特に用がない場合、僕らの学校の周辺には近づかないように通達されていたので、何とか止まらずにゴブリンの群れから逃げることができたが、何せ数千匹のゴブリンだ。

周辺の住人には犠牲が出てるだろうな。


「どこに向かっていますか?」

僕は迷彩服を着ている運転手さんに小声で尋ねた。


「自衛隊のO駐屯地に向かっています」


「そこではあの数のゴブリンに対処できますか?」


「わかりません。しかし、皆さんは我々が命を懸けてお守りしますよ。」


幸いなことにと言うか不運なことにと言うかゴブリンたちは僕らをまっすぐに追いかけているようなので、あまり周辺には被害が出ていないように見える。

いや、出ていないで欲しいなあ。


僕らの学校でゴブリン掃討部隊が全滅したとの報告は既に為されているようなので、O駐屯地ではゴブリンを迎え撃つ準備がしてあるそうだ。

今も無線で基地と連絡を取っている。


今日は不測の事態に備えて臨戦態勢で準備をしていたとの事だった。


O駐屯地の前では既に交通規制が行われ、僕らのマイクロバスは駐屯地の中に入ると横にどけていた装甲車を戻してそのまま道を塞いだ。


数千体のゴブリンが走ってくるのが遠目に見えた。

道路を真っ黒に染めながら、こちらに向かってくる。


万が一、突破された時のために、僕らはマイクロバスに乗ったまま待機することになった。


火薬の炸裂音が響き、門ではゴブリンの掃討が行われているようだった。


数十分後、マイクロバスを運転していた自衛官から、追いすがってきたゴブリンが全滅したことが報告された。


僕と中島、飯田、3年の先輩たちはようやく一息つけた。


しかし、残念ながら、それでは終わらなかった。


ダンジョンの門から最後に大型のゴブリン、恐らくホブゴブリンが合計15体出てきてこちらに向かっているとの事だった。。


岩田先輩がぼやく

「おいおい、幾らクエスト失敗のペナルティにしても厳しすぎるだろう。」


「クエストは失敗するなと言う警告なのでしょうね」


「警告?誰からの?」


「神様・・・でしょうか?」


「神様?悪魔の間違いだろ?」


「じゃあそれでもいいです。」


互いに顔を見合わせる。


最後は遠目に見させてもらったが、ホブゴブリンファイター5体と取り巻きにゴブリンメイジ3体、ゴブリンファイター7体がやってきた。


ホブゴブリンファイターは金属の鎧を着込んでおり、巨大な剣を持っていた。

ゴブリンメイジはアコライトスタッフと言う見習いの杖の次に手に入る杖を持っていた。

ゴブリンファイターは全身ではないが肩や胸当てなどに皮鎧を着込んでいて、手には昔話に出てくる鬼が持っているような金棒を持っていた。


僕らは自衛隊の指揮官に15体のうち杖を持った3体のゴブリンは魔法を使うので最初に倒した方が良いというアドバイスをした。


ホブゴブリンファイターの着ている金属の鎧に当たると、銃弾は弾かれ、メイジの魔法によって大きな被害が出たが最後は全て討ち取られた。


初期クエストをわざと失敗させる通称ゴブリン事件は全国で死者127名、重軽傷者852名を出し、大きな被害をもたらした。

死者のほとんどはゴブリンと交戦した自衛官だった。

重軽傷者の多くははゴブリンに襲われた周辺の住民だった。


幸いなことに僕らの警告によってプレイヤーとその家族には死者は出なかった


後日僕らはこの時に警告したことをみんなから感謝されることになった。


事件から数日後、僕らは学校の職員室の隣にある応接室に呼ばれた。

学校はゴブリンの発生源になったダンジョンの入り口があるにもかかわらず、僕らをまっすぐ追ってきたため、あまり被害は出ておらず、1週間ほどで授業が再開できるとのことだった。


ゴブリンの死体は全てが一時間ほどで消滅したそうだ。

ポーションなどのドロップ品は一切出てこなかった。

殉職した自衛官の遺体や巻き込まれて死んだ民間人の遺体は次の日までには回収されたようだ。


現場は綺麗に洗浄され、多少の破壊痕は残っていたものの思ったより綺麗だった。


応接室にはやつれた乾さんが待っていた。


「まずは今回の一件、折角警告してもらったにも関わらず、生かせなかったことを謝罪するわ。そして、あなたたちの家族を危険にさらしたことも重ねて謝罪するわ。申し訳ありませんでした。」


御子神先輩が眉を吊り上げて何か言おうとしたが、岩田先輩が手を横に広げて静止した。


「乾さんたちも初めて経験したことだったのでしょうから、仕方ありませんよ。マイクロバスを都合してもらったことには感謝しています。ありがとうございました。」


御子神先輩はふくれっ面で横を向いたままだ。


乾さんはやつれた顔に少し笑顔を浮かべながら言った。

「そう言ってもらえると助かるわ。今日は君たち6人に、お願いがあってきました。国会の証人喚問に出ていただきたいの。今まで、あなたたちの知識や経験を生かすことが出来なかったけど、あなたたちが国会で証言してくれれば今後のダンジョン行政の方向性を決定づける重要な転換点になるはずよ。何を話してもあなたたちの立場が不利になるようなことは無いと保証するわ。」


僕らはパーティー[にゃんにゃん遊撃隊]として、国会の証人喚問に応じることになった。

ちなみにこのふざけたパーティー名は変更してほしかったが、既に報告書に載せてしまっているため変更はできないとの事だった。

もちろんだが、いつの間にかリーダーになっていた僕が代表として受け答えすることになっている。


え、この恥ずかしい名前を国会で読み上げられた上に全国放送されるの?と思ったが、もうどうにもならないらしい。


この事実を知った瞬間岩田先輩が御子神先輩にアイアンクローをかましていた。

「イタタタタタタ、ごめん、ごめんって」


「俺らはただ立ってるだけからいいけどな。お姫は代表として受け答えするんだぞ。誰にも相談せずに勝手にパーティ名決めやがって。」


ぎゅぅぅぅぅぅぅぅ。と効果音が聞こえそうなくらい岩田先輩の腕に力が入る。


「イタタタタタタ、壊れる、頭蓋骨壊れるから。ごめん、みんなごめんなさい。2度としませんから許してください。」


岩田先輩がようやく御子神先輩を離した時、さすがの御子神先輩も珍しくガチ涙目だった。


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― 新着の感想 ―
[一言] こんな時も時間を無駄にするそのスタイル、流石日本。
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