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姫君とゴブリン事件

数日前・・・あるビルの一室


全面がガラス張りになっている開放感のある部屋に豪奢なソファとテーブルが置いてある。

そこに年配の二人の男が座って何かを待っていた。


「お呼びたてした上に待たせて申し訳ない。」


初老の男が入ってきた。


初老の男はA4の用紙がそのまま入る大判の封筒を2人に差し出す。


封筒の中には何点かの写真と何かのデータを示す書類が入っていた。


待たされていた男のうちの一人がそれを見る。


「これは・・・・」


「素晴らしいでしょう。先日、例のダンジョン内から持ち帰ってきたものです。」


「自衛隊や警察が封鎖しているのでは・・・?」


「なんでも封鎖される前に学生が勝手に侵入したようですな。」


「薬効は素晴らしいですが、成分が不明・・・とは?」


「なんとこの薬からは未知の物質が検出されたのですよ。薬効から考えてもこの物質がなんであるのかを解明できれば、製薬業界に革新が起きるのは確実です。」


「なんと・・・」


「ダンジョンの権利は是非とも我々が確保したい。そのためには厚生労働省の管轄になってもらわないと困る。お二人にも協力していただきたい。」


「わかりました。確かにこの薬の成分が解明出来れば大きな利益を生むでしょうな。」


「忌々しいことに持ち帰った学生を通じてM物産にも薬が流れてしまい、M商事やその他の総合商社と組んで、何やら動いているようなのですよ。」


「・・・連中が組むとすれば経産省か・・・」


「そうですな。幸い、今の総理とはツテがありますから、現政権の内に何とかダンジョンの管轄を厚生労働省に持っていきたいところです。」


「とりあえず、これ以上競争相手が増えないようダンジョンはしっかり封鎖させておきます。」


男たちが会議室を出てから数時間後、ダンジョンは当面いかなることがあろうとも封鎖されることになった。





僕の家では恵が浮かれていた。

「お姉の学校に行けるー」

フンフンと鼻歌を歌いながら、お泊りの準備をする。

明日は1日中僕と一緒に居られると思っているらしく、遠足気分のようだった。

当日は昼間は学校の体育館で待機して、夜は周辺のホテルに一泊する予定だった。

宿泊代は政府もちだ。

お気に入りのウサギのリュックにお菓子を詰めていた。

妹よ、中学生にもなってそのウサギのリュックは無いと思うぞ。


僕は出来るだけ恵に気づかれないように乾さんと話した内容を両親に伝えた。


「危険になったら、バスで逃げることになるかもしれない。」


「ユイも逃げるのよね?」


「もちろん。僕も逃げるよ。心配しないで母さん。こんなところで命を捨てるつもりはないよ」

僕はそう言って笑った。


しかし、最悪の事態を予想して予め僕ら6人は家族が逃げ遅れないように最後まで残ると話し合っている。

そして、万が一の時は内心バスに乗れるかどうかは分からないと思っていた。

僕らは曲がりなりにもレベル7だ。

何とも心もとないが、何も鍛えていない一般人よりは多少マシだろう。


そして、当日、僕らの家族は朝早くから僕らの学校の体育館に集められていた。


僕らも家族と一緒にいるように厳命されている。


しかし、僕と中島、飯田、御子神先輩、藤堂先輩、岩田先輩の6人はダンジョンの入り口付近が見える校舎の2階までの出入りをしてもかまわないと許可をもらっていた。


クエストの期限が過ぎる。


目の前が一瞬赤く染まり、「クエストに失敗しました。」と表示された。


濃い紫色のダンジョンの入り口が真っ赤に染まり、最初のゴブリンが出てきた。


入り口に向けて銃を構えていた自衛隊が容赦なく発砲する。


最初は行けると思った。しかし、ゴブリンの波は収まらない。倒しても倒しても次々と出てくる。

とっくに100匹は越えている。


そして、自衛隊の武器が弾切れになると自衛官に向かってゴブリンの群れが走っていき。

隊員に襲いかかった。


自衛官は最初は健闘しているように見えた。

しかし、倒しても倒しても次々と現れるゴブリンたちに取り囲まれる。


最初はナイフや拳銃でゴブリンを倒していた自衛官も大量のゴブリンに取り囲まれて一人、また一人と倒されていく。僕らはこの時点で家族のいる体育館に走った。


全員に向かって叫ぶ


「すぐにマイクロバスに乗ってください。ゴブリンに突破されました。御子神先輩は全員がバスに乗れるように補助してください。


「まかしとき」


岩田先輩が叫ぶ。

「前衛の3人は殿を務めるぞ。ゲンサイ、ユイ、悪いが付き合ってもらう」


「了解でござる」

「解りました。」

僕らは一斉に見習い装備を身にまとう。


「僕らはどうする?」


「飯田と藤堂先輩はマイクロバスの入り口付近に待機してください。

万が一のけが人と、突破してきたゴブリンに備えてください」


体育館の入り口から覗くと先頭集団のゴブリンたちがこちらに迫ってくるのが見える。


最初のゴブリンの一団と会敵した。


「「「パワースマッシュ」」」

僕らは3人は横一列に並び、先頭集団のゴブリンたちを吹き飛ばす。

数匹のゴブリンが巻き込まれて宙を舞う。

しかし、後続のゴブリンがすぐに現れ、多勢に無勢、どんどん押し込まれていく。


「御子神、全員乗ったか?」

岩田先輩が叫ぶ


「まだや、あともうちょい」


後ろから飯田が魔法で数匹のゴブリンの足を止めてくれたが、突破されるのも時間の問題だった。


「いいで、お姫ちゃんと岩田、中島、早く来い。」

御子神先輩から全員が乗ったと合図が来た。


僕らは振り返らずにマイクロバスに向けてダッシュした。

岩田先輩、中島がバスに飛び乗る。


最後まで残っていた恵が僕を待っていた。


「お姉、早く。」

恵が泣きながらマイクロバスから少し離れた場所で手を振っている、

恵の手を握ってマイクロバスまでダッシュするが、ドアの目の前で恵が転び、一匹先行していたゴブリンに恵のスカートを掴まれる


「恵ー、ユイ」

父さんと母さんが顔色を変えてマイクロバスの入り口から手を伸ばす。


「このっ」

僕はゴブリンに見習いの剣を突き立てた。

グギャッと気持ち悪い断末魔の声を上げて恵のスカートから手を離した。

恵を抱えて、無理矢理マイクロバスのドアに押し込む。

父さんと母さんが慌てて恵を掴み、マイクロバスの中に引き入れた。

同時にとドアが閉まった。

そして、マイクロバスが発車する


「お姫っっっっっ」

御子神先輩がマイクロバスの窓を開けて、僕に手を伸ばした。


その瞬間動いてるバスに向かってダッシュして、御子神先輩の手に飛びつく。

ギリギリで御子神先輩の手を握った。


バスは速度を上げていき、僕は窓から箱乗りになった御子神先輩の腕にしがみついた。

足が宙に浮き、引っ張られる。

一匹のゴブリンに足を掴まれるが蹴りを入れたら吹っ飛んでいった。


「誰かーーーーーーーーーー」

御子神先輩がバスの中に向かって怒鳴ると、


「「応っ」」

中島と岩田先輩が叫んで御子神先輩と僕を窓からマイクロバスの中に引きこんでくれた。


バスは歩道の段差を無視して突っ走り、ガタンと大きく揺れて、つかまっている余裕のなかった僕、御子神先輩、中島、岩田先輩のバランスが大きく崩れる。


後ろからゴブリンの群れが物凄い勢いで走ってきた。

僕らがバランスを崩して対応できない間に速度の乗っていないマイクロバスに追いついて、何匹かはマイクロバスにしがみついて飛び乗ってこようとする。


「任せろ」

「任せるでござる」


岩田先輩が箱乗りになった中島を掴んで落ちないようにして、中島がマイクロバスにしがみついたゴブリンに見習いの剣を叩き込む。


数匹のゴブリンを叩き落とすと、マイクロバスの速度が十分にのって、ゴブリンたちを引き離し始めた。


飯田がマイクロバスの窓から上半身を出して、基本魔法の魔力弾を打って、追ってきている先頭のゴブリンに当たると転んで後続のゴブリンを巻き込んで数10匹が盛大にすっ転んだ。


転んだゴブリンは後続に踏みつぶされる。


しかし、続々と学校からゴブリンが押し寄せてきて、道路が真っ黒になるほどの数が追いすがってくる。



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