姫君と公僕
関東では僕らのいるS県O市の他幾つかの都市でダンジョンが発生したようだ。
全国でも都市部を中心にダンジョンが発生したようだった。
場所はバラバラで何が法則があるのかないのか分からないらしい。
恐らくだが、全てのダンジョンの場所は明らかになっていると思う。
なぜなら、僕らも近くにあるダンジョンが何となくわかるからだ。
僕は後から気が付いて、ダンジョンでドロップして僕が全部貰った毒消しポーションとHPポーションを一つずつ、ダンジョンの入り口を警護している自衛隊の隊長さんに提出した。
すると、次の日に、スーツを着た女性の方が面会に来た。
僕ら6人は職員室の隣の応接室に呼び出された。
「初めまして、私は内閣ダンジョン調査準備室「乾 遥」と申します。とりあえずあなたたちはパーティーと言うことでよいのかしら?」
そう言って名刺を1枚出された。
「そうやで、うちらパーティー[にゃんにゃん遊撃隊]や」
知らなかった。そんな名前のパーティーだったのか?
3年生で決めたのかな?
そう思って岩田先輩と藤堂先輩を見ると、2人とも首を横に振っている。
えっ、御子神先輩が勝手に決めてる?
「へぇ、じゃあ、ミトラのあなたがパーティーリーダーですか?
「もちろんそんなこと無いで。うちは副リーダーや。パーティーリーダーは泣く子も黙るユイ姫様や。」
じゃーんと言う効果音が出そうな勢いで、僕のほうに両手を向ける。
まさかの丸投げ。この人本当にその場のノリで生きてるな。
岩田先輩と藤堂先輩の顔色が急激に悪くなる。
気の毒に。
「そう、それではユイさん。昨日提出してもらったダンジョンからのドロップアイテムには感謝いたします。あれは現時点ではまだ調査中なのだけれども、とても貴重なものだと報告されています。」
「はあ、それはどうも。」
「でも、禁止されているダンジョンへ勝手に侵入したことは問題になっています。君たちを拘束して監視すべきと言う意見も出ているわ。」
「それは困ります。」
「そうでしょうね。そこで提案ですが、特殊なスキルが使えるという君たちにダンジョンの中を調べてほしいのよ。もちろん、調査に当たっては自衛隊も同行するわ。いえ、自衛隊の調査に君たちが同行すると言った方がいいかな。」
「それは、ちょっとどうでしょう・・・。」
僕はみんなの方を見る。全員が僕にお任せと言うゼスチャーだ。
「そうなの?断ってもいいわよ。今はお姉さんの権限で、君たちの勝手な行動を上に報告するのを止めているけど、君たちが協力してくれないなら、報告しないといけないかも知れないわ。そうしたら、親御さんにも連絡が行って、君たちは停学じゃすまないかも・・・とっても気の毒ね。前途有望な若者の未来が閉ざされるのは。お姉さん悲しいわ。」
声の調子は芝居がかっていたが、ちっとも悲しそうではない表情で冷たくそう言いきられる。
乾さんの恫喝とも取れるセリフを聞いて御子神先輩がどんどん不機嫌になっていく。
「おばちゃんいくつや、大の大人が子供を脅すなんてやり口が汚ないなあ。」
「おば・・・」
乾さんが絶句して、目が吊り上がる。
あ、これ、このままいったら不味い奴だ。
岩田先輩が慌てて御子神先輩の口を押える
「すいません、コイツ、バカなんで気にしないで話を進めてください。」
御子神先輩は口を押えられてモガモガ言っている。
「そう、副リーダーさんはあまり気が乗らないみたいだけど。」
「協力してもいいですが、条件があります。ドロップ品の分配は僕らで決めさせてください。」
「条件が出せる立場だとでも?」
「ドロップ品は僕らにとっても生命線です。僕の決断一つで全員の命やひょっとしたら同行していただく自衛官の命にも関わるかもしれません。安請け合いは出来ませんね。確かに僕らは勝手にダンジョンに入りましたが、その危険性は誰よりもわかっているつもりです。」
「それから、お譲りするドロップ品は適正な価格で買い取って頂けますか?」
「それに関しては私の一存では決められないわね。後から返事をすると言うことでよいかしら。」
「分かりました。」
「戦闘するのは主に自衛官で、君たちに戦闘してもらうつもりはないのだけど。」
「これは僕たちの予想なので絶対そうなるとは限らないですから、そのつもりで聞いてください。」
「何かしら」
「僕らは下の階層に行くと、現代兵器は通じなくなると考えています。自衛隊の武器は確かに強いと思いますが、あまり過信すると痛い目を見ると思いますよ。」
「なぜ、そこまで断言できるのかしら?。」
「ゲームには物理攻撃が一切通用しないモンスターが出現していたからです。後は罠ですかね。ワープする罠なんかはは危険だと思いますよ。設定上、鉄より硬い表皮を持つ巨大な昆虫なども出てきましたね。強力な酸を吐くモンスターもいましたが、そうしたものに対応する装備はありますか?それから、戦車を中に入れても、狭い通路では身動きが取れませんよね?。ゲームではそういった場所もありましたが・・・」
乾さんが息をのむのが分かった。
「分かりました。ゲームの知識と言う部分に関してはあなたたちの意見はかなり貴重なものだと認めます。」
乾さんが手を出してきたので僕は握手をした。
「お互いにとって良い結果が出ることを願っています。」
「では、本日はこれで失礼しますが、また後日改めて返事をします。」
岩田先輩に押さえつけられてモガモガ言っていた御子神先輩が岩田先輩の手にかみついて自由になった。
「待てや、おばちゃん。アンタいくつや。」
「私は26です。まだおばちゃんじゃありません。」
「25過ぎたらクリスマスケーキも大安売りや。賞味期限切れやモガモガ」
岩田先輩と藤堂先輩が慌てて御子神先輩を押さえつける。
「ハハ、コイツ、お姉さんの大人の魅力に当てられてちょっとおかしくなってしまいまして。どうぞお気になさらず・・・」
乾さんは御子神先輩を冷たく一瞥するとそのまま帰っていった。
御子神先輩が眉を吊り上げて食って掛かる。
「なんで止めるんや。あんな賞味期限切れ間近のババアに遠慮することなんてあらへん。」
岩田先輩があきれた顔でたしなめる。
「なんで止めるってお前なあ。交渉役を1年の姫に押し付けた挙句、国にケンカ売ってどうする。まあ、確かに腹が立つ言い方だったが、ちゃんと理詰めで話せば話が通じない相手ではなかっただろう。」
それを聞いて御子神先輩の眉がさらに吊り上がる。
「今日はお姫ちゃんの顔を立てて許したるわ。」
そう言ってプンスカ怒りながら応接室から出ていった。
相性が悪い相手っているよね。




