早川 次郎
拙作『夏の焦れ恋』 https://ncode.syosetu.com/n9406hu/ に隠した仕込みを見事見破ってくださった方へのお礼として、それぞれの話の別視点バージョンをお送りします。
じれじれ感が高まりましたら幸いです。
どうぞお楽しみください。
「じゃあ俺と中村はスプラッシュサンダースペース乗ってくるから、江川は井上さんが乗れそうなの乗っててくれ」
「おう、わかった」
「ごめんね寧子ちゃん。私どーしてもスプラッシュサンダースペース乗りたくて……」
「ううんいいの。私こそ怖がりでごめんね」
「じゃあ昼近くになったら、またここに集合な」
「オッケー。じゃあ行こうか井上さん。何か乗りたいのある?」
「えっと、コーヒーカップとか……」
「んじゃ江川君! 寧子ちゃんの事よろしくー!」
よし、作戦通り!
頑張れよ井上さん!
江川は鈍いから、ちょっとやそっとじゃ井上さんの好きに気付かないだろうからな。
「うまくいったな。これで昼に一旦合流して、様子見てまた二対二に別れよう!」
「ん、そーね」
中村に声をかけて移動を始める。
俺は男女年齢問わず、気軽に話しかける事ができるからか、恋愛相談に乗る事が多い。
デートのお膳立てなんかもするけど、これまで何度もその手伝いをしてくれたのが中村だった。
最初は彼氏がいない子なら誰でもいいかと思って声をかけた。
でもカップル候補を二人きりにして中村と二人になった時、無難な話をしてたはずがすごく盛り上がった。
「前の阿部と佃さんみたいにうまくいくといいなぁ。あの時も中村のフォローでうまくいったし、今日も頼むよ」
「あれはたまたまよ」
だから毎回中村に協力を頼んでいる。
フォローが上手なのもそうだけど、一緒にいて楽しいのは大きい。
「お、二時間待ちかぁ」
「順当なとこじゃない?」
「そうだな。じゃあ飲み物買ってくる」
「わかった。並んどくね」
「任せた」
中村の好みは、アイスコーヒーのブラック。
大人っぽくて格好良いと思う。
俺は烏龍茶。
今まではコーラだったけど、何だか恥ずかしくなった。
「……」
注文してお金を払い、出来上がるのを待つ。
……いつか中村に彼氏ができたら、こんな事できなくなるんだよな。
その時はどうしようか……。
他の女の子に頼むって、もう想像できないし……。
「お待たせ、アイスコーヒー」
「ん、ありがと。いくらだった?」
「三百円」
「はい」
「サンキュー」
「それにしても遊園地の飲み物って高いよねぇ」
「お祭り価格ってやつだろ?」
「あー、わたあめとかスプーン一杯のザラメで四百円くらい取るもんねー」
「そうそう。ソースせんべいとか、業務用のお菓子屋行ったらすごく安くてびっくりした」
「わかるー」
何でもない話の合間にストローを吸う。
乾いた喉に烏龍茶が沁み渡った。
読了ありがとうございます。
あわーい!
淡いよ! 淡すぎるよ!
春先のジャケットくらいに淡いよー!
さてどちらから距離を詰めるのか、それとも自然消滅か、どれもあり得るからこその焦れ恋、いかがでしょうか?
次話もよろしくお願いいたします。