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1杯のコーヒーと1回のおまじない

作者: いぶ

拙い作品ですが読んで頂けると嬉しいです

とある駅近くにある喫茶店マジコ。

このお店について、ある噂が囁かれている。。

その噂とは「願いが叶うかもしれないし、ひどい事が起きるかもしれない」といったものだ。

そして、そんな喫茶店に今日もお客さんが訪れる。



太陽が沈みつつ、夕方が始まりかけた時間。駅に近いお店の前を歩く学生が増え始め、女子二人組のお客さんが喫茶店へと入っていった。

「いらっしゃいませ。2名さまでしょうか?」黒髪の女性ウェイターが言った。

「そうです」と女子の1人が言うと

「かしこまりました。カウンター席とテーブル席、ご希望はありますか?」とウェイターが尋ねた。

「カウンターでお願いします」と、さっきと同じ女子が答えた。

「かしこまりました。ご案内いたします」と言い、ウェイターは席まで案内を始めた。


お店のマスターとウェイターの2人でやっているお店はお世辞にも広いとは言えないが、各所にこだわりが感じられた。

カウンター席が4席の他に、2人で対面するように座る席が3席ある。店内は心地よい程度の音量でクラシック音楽が流れていて、面白い形の観葉植物もチラホラ置いてある。


2人はカウンター席の入り口から一番遠い席に案内された。

「いらっしゃいませ。ご注文が決まりましたらおっしゃってください」カウンターも奥でカップを拭いていたマスターが2人に声をかけた。

「わかりました!」と返事した女子2人はメニューを見始めた。


程なくして注文が入った。

「ホットのカフェラテ1つと、ホットのドリップコーヒ1つください」。


「かしこまりました。提供まで少しお時間頂きますがよろしいですか?」 落ち着いた声のマスターが尋ねた。

「はい」と答えた女子に対し、

「ありがとうございます」とマスターは笑顔で返事し、ドリンクを作り始めた。


女子はすぐに会話を始めた。

「やっぱり、ユカは願いが叶うかもって噂を信じて、このお店にしたの?」

「うん、、、少しでも付き合える可能性が上がるならと思って」ユカと呼ばれている女子は少し恥ずかしそうに答えた。

「まぁ、タケルは女子人気あるしライバル多そうだもんね」ともう1人が返した。


「ユズは中学の時、タケルくんと同じ中学だったよね?」とユカは少し探るようにユズに聞いた。

「そうだよ。中学三年の時は同じクラスだった」とユズは答えた。

好きな人の中学時代に興味津々なユカは真剣にその話を聞いていた。


「お待たせしました。カフェラテとドリップコーヒーになります」マスターは丁寧に商品を2人の前に置き、

「ごゆっくり」と言葉を残し、コーヒーを作るのに使った道具を洗い始めた。


「ありがとうございます」と、ユカとユズは声を揃えてマスターにお礼を伝え、恋愛話に戻っていった。


「ユズは誰か好きな人いないの?」とユカが言う。

「う〜ん、、」とユズは少し考えてから

「今はいないかん」と答えた。

「本当に??」と茶化すようにユカは言い、カフェオレを一口飲んだ。

それに合わせるようにユズもドリップコーヒーを飲み始めた。


「美味しい!」ユズが感心したように言った。

「だよね!コーヒー詳しいわけじゃないけど、美味しいてことはハッキリわかる」ユカも嬉しそうに答えた。


しかし、次の発言で少し空気が変わる。

「ユズが中学時代、タケルくんと付き合ってたのって本当?」ユカはビクビクしながら聞いた。

「やっぱりそのこと知ってるよね、、。昔の事だし、私から振って関係が終わったから未練とか無いし安心して」ユズはあっさり答えてくれて。

その事に安心したユカはホッとして一口コーヒーを飲んだ。


その後は恋愛の話だけでなく、部活や勉強の話を始めた。

そうしている内に、最初は自分たちしか居なかった店内もお客さんも増え、飲んでいたコーヒーも残りが少なくなっていた。

「そろそろ行く?」ユズの方が言い出した。

「混んできたしそうしようか。あ、最後に飲み物交換しない?」とユカが言い、それを承諾したユズはお互いのコーヒーを交換し、交換した相手のコーヒーを2人は飲み干した。


そしてこの瞬間、運命が変わってしまった。

その事にマスターは気づいていたが、2人の運命に干渉するつもりはなく

「ありがとうございました。またいらしてください」とだけ伝えた。



それから4日後。

すっかり太陽も沈み、夜が始まった頃に2人はまた喫茶店マジコを訪れた。

前回来た時とは違い、カウンター席は埋まっており、テーブル席に案内された。

カウンターではマスターがちょっと忙しそにコーヒーを入れていた。

「ドリップコーヒー2つください」ユズが注文した。

ユカの方は少し目が充血している。


「かしこまりました」と前回と同じ黒髪の女性ウェイターが言い、マスターの方へと注文を伝えに行った。


「ユカ、、、大丈夫??」ユズは優しく聞いた。

「うん」とだけ答えたユカは、ユズを安心させる為に無理に少し笑顔を作った。

そして沈黙が訪れた。

なんて声を掛けていいかわからないユズ。泣かないように必死に気持ちを落ち着かせようとしているユカ。


「お待たせしました。ドリップコーヒーになります。」ウェイターさんによって沈黙は破られた。

「マスターからおまけです」と言い、コーヒー以外にワッフルを2枚置いてからウェイターは去って行った。

「フラれたの見抜かれちゃったのかね?」と、フラれた当事者のユカが言い、コーヒーを飲み始めた。

コーヒーの苦味のおかげで悲しみが少し紛れた気がしたユカはそのまま、ワッフルも食べ始めた。

「このワッフル美味しい!ユズも食べなよ」と言ったユカは笑顔だった。


さっきのぎこちない笑顔とは明らかに違った笑顔を見たユズは安心したのか

「もちろん食べる」と言いワッフルに手を伸ばした。


ワッフルも食べ終わり、コーヒーを一口のでからユカが言った

「神様に頼るんじゃなく、自分が努力しないとね」


「力になれなくてごめんと」とユズは返した。

「そんなことないよ!今もこうして一緒にいてくれるだけで助かってるよ」とユカは言い、お互い同じタイミングでコーヒーを飲んだ。

「次は私がユズの恋愛応援するから、好きな人ができたらすぐに報告してよね」と言ったユカには笑顔が戻っていた。

「もちろん!そしたらまたここで作戦会議だね」とユズも笑顔で言った。


そんな2人を見ていたマスターは表情には出さないものの、2人の関係性の素晴らしさに感動していた。

実際、2人が前回訪れた時にマスターはユカのコーヒーにおまじないをかけていたのだ。


ユカの願いは「告白が成功すること」

ユズの願いは「ユカが幸せになること」


そして、おまじないはコーヒーの最後の一口飲み干した時に発動する。

最後の一口を交換して飲んだのでユズの願いが発動したのだ。


つまりユズの「ユカが幸せになる」という願いはちゃんと叶っていたのだ。

ではなぜユカはタケルくんにフラれたのか、、。

それは、ユズにとっての幸せの定義とは浮気しない人と付き合うことだったのだ。

そしてユカの告白が成功していないと言うことは、タケル君は浮気する事が決まっていたのだ。


ユカは付き合えるだけでよかったのかもしれないが、今っとなっては誰も知るよしもないことである。


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