81/120
81
「何か今日は盛り上がってるな。」
ショーケース前で井戸端会議を繰り広げる常連さんたちを避けながら、小春の同級生である航成が物珍しそうにやってきた。
「航成くん、いらっしゃい。」
航成は専門学校を卒業後、地元の飲食店へ就職した。シフト勤務らしく仕事の合間にたまにおにぎり屋に顔を出している。
「今から仕事?」
「そう、今日は遅番。鮭と唐揚げもらえる?」
「ふふ、いつも通りだね。」
小春と航成が和気あいあいとやり取りをしていると、突然常連さんが割って入ってくる。
「あらやだ、小春ちゃんの彼氏?」
「あ、いや、同級生で……。」
「やだー、お兄さんイケメンねぇ。」
「そうですか?ありがとうございます。駅前のホテルで働いてるんで、ぜひランチでも食べに来てくださいよ。」
思わず苦笑いする小春に対し、航成は常連さんたちに愛想を振りまき、さらに自分の勤めるレストランの宣伝まで抜かりない。
そんな盛り上がり見せている中、おにぎり屋に顔を出そうとしていた政宗は少し躊躇って足を止めた。




