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「……受けなきゃダメ……だよね?」
「そうだね。俺は小春のことが心配だから、手術は受けるべきだと思うよ。」
とても優しい口調なのに、小春には刃物で刺されたように胸にぐさりと響く。
本当は、“俺が医者になるまで待ってほしい”なんて言ってくれないかなと、そんなアニメやドラマみたいな展開を期待した。それが二人の約束なんだと、勝手に思っていた。
でも今、その約束は脆くも崩れ去ったのだ。
(政宗くんは約束忘れちゃったの?)
聞こうにも、勇気がなくて聞くことができなかった。込み上げてくる涙をぐっと堪え、少しばかりの抵抗をする。
「……じゃあ、政宗くんがご褒美くれるなら、手術受ける。」
「うん?何がほしい?ケーキでも大福でも買ってあげるよ。」
小春は首を横に振った。
「ものはいらない。政宗くんが小春のこといっぱい褒めてくれるなら、手術する。」
「もちろん褒めるよ。」
「いっぱいだよ。」
「わかった。」
「あと、パンケーキもまた食べに来たい。」
「わかった。約束だ。」
政宗は大きく頷いた。
ああ、軽々しく”約束だ”なんて言わないでほしい。また期待してしまうではないか。
悔しいのに、でも少し嬉しく、小春は自分でもよくわからず変な気分だった。




