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第十八話 五人分のウィ〇ペディアを作るってイカれてませんか!?

 セルカはデイゴンとの修行が始まった。


 各パーティメンバーが一人でDランクのクエストをこなせるようになるよう、デイゴンは厳しく指導すると大声で笑いながら言っていた。冗談抜きで地獄の修行が始まりそうな雰囲気だったのでセルカたちの表情は引きつっていたが、張り切ったデイゴンを見るのは悪い気分ではなかった。


 だが、私たちは魔法の修行に同行することはない。

 魔法の修行に関して、私たちは無能だ。何の役にもたたないし、いてもいなくても修行の結果が変わるわけではない。


 どちらかといえば、私たちも魔法を使えるようになるようにデイゴンから手ほどきを受けたい側である。

 だが、今集中すべきはセルカのパーティの底上げだ。私たちが手から水や風を出せたからといってセルカのパーティランクがDからCに上がることは、まずない。


 では、修行中の間、私たちが暇かと問われれば、そうでもなかった。


「お兄ちゃん、何してるの?」


 今日のバイトを一通り終えると、私はアドバイザー部屋に立ち寄る。

 最近の兄はベッドでゴロゴロするのではなく、この部屋に籠って仕事をすることが多い。一人黙々と作業している兄に声をかける。


「コトミか。今はクエストの仕分けをしている最中だ」


「クエストの仕分け?」


 セルカのパーティメンバーの似顔絵と細かい字がびっしり書き込まれた紙が、机の上に散らかっていた。

 机の隅にはクエストの受理書が束になって積み上げられている。


「ここに各パーティメンバーのプロフィールがあるだろう。そこには詳細に各個人の性格や強み、弱み、やりたいこと、その他諸々が書いてある」


「へえ……」


 私はおもむろに一人のメンバーのプロフィールを手に取る。

 以前自主練の時にぶつぶつ詠唱して不気味だった女の子のプロフィールのようだ。


 ふむふむ、名前はニーナちゃんというのか。


「そのプロフィールに基づいて、俺がクエストの仕分けをしているんだ。メンバーそれぞれやれることも得意分野も違うからな。時間があれば彼女らにここら辺もやらせるべきなのだろうが、流石に時間がない。それに修行に専念してもらったほうが有意義だからな」


「お兄ちゃんの言う通りね。……でもこのプロフィール、どうやって作ったの?」


 プロフィールを見たところ、兄の言う通りかなり細かいところまで詳細に書かれている。

 各個人の性格はもちろん、生い立ち、使える魔法、その魔法の効果や飛距離、身体能力、好きなクエストと嫌いなクエストなどなど、まるでウィ〇ペディアである。しかもそのウィキ〇ディアが五人分あるのだから、驚きだ。


「そりゃ、一人一人インタビューするしかないだろう。デイゴンさんにも作成を手伝ってもらったから、各個人が直接話せない内容も盛り込んである」


「そ、それは……業の深いことを……」


 確かに生い立ちなんて相当センシティブな内容が含まれているに違いない。

 性格に関しても、自分で自分の性格を正確に語れる人がどれぐらいいるものだろうか。


 ふむふむ、ニーナちゃんはもとは酒屋の娘で、恥ずかしがりやな性格なのか……。

 見た目通りって感じだな……。


「このような仕分け作業は主観的になりがちだが、出来るだけ セルカはデイゴンとの修行が始まった。


 各パーティメンバーが一人でDランクのクエストをこなせるようになるよう、デイゴンは厳しく指導すると大声で笑いながら言っていた。冗談抜きで地獄の修行が始まりそうな雰囲気だったのでセルカたちの表情は引きつっていたが、張り切ったデイゴンを見るのは悪い気分ではなかった。


 だが、私たちは魔法の修行に同行することはない。

 魔法の修行に関して、私たちは無能だ。何の役にもたたないし、いてもいなくても修行の結果が変わるわけではない。


 どちらかといえば、私たちも魔法を使えるようになるようにデイゴンから手ほどきを受けたい側である。

 だが、今集中すべきはセルカのパーティの底上げだ。私たちが手から水や風を出せたからといってセルカのパーティランクがDからCに上がることは、まずない。


 では、修行中の間、私たちが暇かと問われれば、そうでもなかった。


「お兄ちゃん、何してるの?」


 今日のバイトを一通り終えると、私はアドバイザー部屋に立ち寄る。

 最近の兄はベッドでゴロゴロするのではなく、この部屋に籠って仕事をすることが多い。一人黙々と作業している兄に声をかける。


「コトミか。今はクエストの仕分けをしている最中だ」


「クエストの仕分け?」


 セルカのパーティメンバーの似顔絵と細かい字がびっしり書き込まれた紙が、机の上に散らかっていた。

 机の隅にはクエストの受理書が束になって積み上げられている。


「ここに各パーティメンバーのプロフィールがあるだろう。そこには詳細に各個人の性格や強み、弱み、やりたいこと、その他諸々が書いてある」


「へえ……」


 私はおもむろに一人のメンバーのプロフィールを手に取る。

 以前自主練の時にぶつぶつ詠唱して不気味だった女の子のプロフィールのようだ。


 ふむふむ、名前はニーナちゃんというのか。


「そのプロフィールに基づいて、俺がクエストの仕分けをしているんだ。メンバーそれぞれやれることも得意分野も違うからな。時間があれば彼女らにここら辺もやらせるべきなのだろうが、流石に時間がない。それに修行に専念してもらったほうが有意義だからな」


「お兄ちゃんの言う通りね。……でもこのプロフィール、どうやって作ったの?」


 プロフィールを見たところ、兄の言う通りかなり細かいところまで詳細に書かれている。

 各個人の性格はもちろん、生い立ち、使える魔法、その魔法の効果や飛距離、身体能力、好きなクエストと嫌いなクエストなどなど、まるでウィ〇ペディアである。しかもそのウィキ〇ディアが五人分あるのだから、驚きだ。


「そりゃ、一人一人インタビューするしかないだろう。デイゴンさんにも作成を手伝ってもらったから、各個人が直接話せない内容も盛り込んである」


「そ、それは……業の深いことを……」


 確かに生い立ちなんて相当センシティブな内容が含まれているに違いない。

 性格に関しても、自分で自分の性格を正確に語れる人がどれぐらいいるものだろうか。


 ふむふむ、ニーナちゃんはもとは酒屋の娘で、恥ずかしがりやな性格なのか……。

 見た目通りって感じね……。


「このような仕分け作業は主観的になりがちだが、出来るだけ客観的に作業したい。まあ、それでも結局は俺が自分で考えて仕分けするから、絶対的に客観性が保たれるかといえば、そうではないがな」


「なんで主観的だとダメなの?」

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